〖完結〗拝啓、愛する婚約者様。私は陛下の側室になります。

藍川みいな

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カイト様

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 「カイト様の噂とは、どういうものなのですか!?」

 「やっぱり、まだ知らなかったのですね。
 カイト様が、生きているという噂です。」

 カイト様が生きている……!?
 それはずっと信じていましたが、他の方も生きている事を信じているということでしょうか?

 「カイト様を、デシタニアでお見かけしたという商人がいるのです。」

 「それは、本当なのですか!?」

 カイト様が……生きている……
 生きているんだ……

 「商人に直接聞いたので、本当のようです。でも……」

 「でも?」

 「この国に戻りたくても、戻れないと言っていたようです……」

 戻りたくても戻れない!?
 それは、どういうことなのでしょう……
 何か問題があるのでしょうか!?

 「その商人は、カイト様とお話したのですか!?」

 「ええ……
 カイト様は、お命を狙われていると仰っていたそうです……」

 お命を狙っているのは、この国の者だということなのですか!? だから、帰りたくても帰れないと!?
 何だか、頭がクラクラします……

 「リサ様……
 大変、申し上げにくいのですが、陛下はこの事を知っております。その商人に、口止めをしたようなのです。」

 陛下が……?
 そんなはずありません!
 陛下は誰よりも、カイト様を心配してくれて、ずっと探してくださっていたのに、そんな事をするはずありません!!

 「リサ様、もしかしたら、カイト様が帰りたくても帰れないと仰っていた理由は……」

 「それ以上は、言わないでください。
 ……レノン様、申し訳ないのですが、1人にしていただけませんか?」

 「分かりました。」

 レノン様はそれだけ言って、部屋から出て行きました。失礼な事をしたのは分かっていますが、今の私には余裕がありません。
 私……どうしてしまったのでしょう……
 カイト様が生きていると聞いて嬉しいはずなのに……
 レノン様が言おうとしたことを考えると、私の心は傷付いている……?
 私は、陛下を信じたい。私が今まで見てきた陛下は、そんな方ではありません。頭が混乱しています。
 
 頭を整理しましょう。
 商人はカイト様をデシタニアでお見かけした。カイト様は、その商人に帰りたくても帰れないと仰った。その理由は、命を狙われているから。
 そして、陛下はその事を知っていて、商人に口止めをした……

 どうして陛下が口止めを?
 口止めをしたのに、どうしてレノン様は知っているの? 
 レノン様は、命を狙ったのは陛下だと仰りたいようでした。
 このお話は、どこまでが真実なのでしょうか?

 「ルビー、レノン様が仰っていた商人を探して欲しいの。」

 分からないのなら、確かめないと!

 「かしこまりました。信用出来るものに、探させます。」


 ルビーはすぐに商人を見つけて来てくれました。
 商人の名は、アルビス。
 アルビスは、レノン様と同じ事を私に話しました。

 「そうですか……
 ひとつ聞きます。なぜ、陛下に口止めされたのにも関わらず、ペラペラと話したのですか?」

 アルビスがレノン様と全く同じ事を話した事に、違和感を感じていました。口止めされたのにも関わらず、隠す素振りもなく、一言一句変わらない話。口裏を合わせたとしか、思えませんでした。

 「それは、ご側室のリサ様に嘘など申せなかったからです!」

 「百歩譲って、側室の私に嘘を言えなかったというのは理解出来るわ。だけど、どうしてレノン様にお話したの?」

 「レノン様には、口止めされる前にお話したのです!」

 「おかしいですね。レノン様も、あなたと同じで、陛下が口止めしたと仰っていたわ。先に話したのに、どうしてそれが分かったのでしょう?」

 「そ、それは……」

 明らかに動揺しています。
 私が商人を探すことは、想定外だったのでしょう。想定していたなら、とっくにこの国から出て行っていたはず。
口裏を合わせていたところをみると、アルビスはレノン様が紹介するつもりだったのですね。

 「陛下の名を出し偽りを申したのだから、それなりの覚悟は出来ているのでしょうね?」

 「バーキュリー騎士長が、生きていらしたというのは本当の事です!」

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