8 / 15
レノンの思惑
しおりを挟む「陛下、少しお休みになった方が……」
リサが倒れてから、1週間が過ぎた。ロベルトは毎日リサに付き添い、看病をしている。
そしてレノンは、毎日ロベルトに会いに来ていた。
「……お前がどうしてここにいるんだ?」
「私も、リサ様が心配なのです!
あの香水……私も、他のご側室の方も、王妃様からいただいていました。もしかしたら、王妃様は私達全員を……」
「なぜ、お前にまで香水を?」
「お忘れですか? 私は、3人目の側室になるはずだったのです。」
ロベルトには、そんな事どうでもよかった。誰が側室になろうが知った事ではない。リサ以外には、何の興味もなかった。
「陛下、カイト様の件はどうなりましたか?」
側室になるはずだった事を伝えても、何の反応も示さないロベルトに苛立ちを隠せないレノンは、別の話をする事にした。
「兵士達が、行方を追っている。商人がカイトを見かけたのが3ヶ月前だからな……まだそこにいてくれたらいいが。」
アルビスがカイトを見かけたのは3ヶ月前。3ヶ月かけてこの国に来たのだから仕方がない。
話を聞いてすぐに兵士を向かわせたが、どんなに急いでもデシタニアまでは2ヶ月はかかる。
カイトが5ヶ月もの間、デシタニアにいるとは考えにくかった。
レノンがカイトの事を自分で話すとアルビスに言ったのは、ロベルトに近付く為だった。
「探さなくても、いいのではありませんか?」
「何を言っているんだ!?」
「陛下は不器用過ぎます。リサ様がお好きなのですよね?
それなのに、リサ様の想い人であるカイト様をお探しするなんて、お辛くはないのですか?」
ロベルトはその問いに答えなかった。
辛くないはずがない。だが、リサに幸せでいて欲しいという気持ちの方が勝っていた。
カイトが生きている事をリサに話さなかったのは、カイトがこの国に帰ろうとはしていなかったからだった。リサの元へ帰ろうとはしなかったカイトを見つけ出し、理由を聞いたあとに生きている事を伝えるつもりだった。リサを傷付けたくなかったのだ。
「リサと2人きりにしてくれ。」
何を言っても、リサの事しか頭にないロベルトに、レノンは怒りを覚え、拳をギュッと握りしめた。
「……はい。何かありましたら、いつでもお呼びください。陛下の為なら私……」
「早く出て行け。」
レノンが何を言おうと、ロベルトの頭にはリサしかいない。
部屋から追い出されたレノンは、思いきりくちびるを噛み締めた。くちびるの端から、真っ赤な血が滴り落ちる。
「……せっかく邪魔な王妃もいなくなったのに、意識もないくせに陛下を独占するあの女、許せないわ!」
全ては、レノンが仕組んだ事だった。
あの日、香水を開けた時に香水を毒の入った瓶と入れかえていた。王妃は側室にも自分にも、あの香水を渡したのだから、リサにも渡すだろうと考えた。自分が王妃から貰った香水に毒を入れ、リサの香水と入れかえたのだった。
予定外だったのは、香水が沢山あった事だが、瓶を開けた事により、開いてる香水を使わせる事に成功した。
リサに捨てろと助言したが、リサは捨てずに使うだろうと予想していたのだ。
レノンの思惑通り、王妃が犯人として捕まり、地下牢へと投獄された。レノンは見張りの兵を買収し、王妃に会いに地下牢へと行った。
そして、必ず助け出すからと信用させて、差し入れを渡した。その差し入れには毒が入っており、王妃は亡くなった。
124
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。
山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。
姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。
そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる