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26、ミスコンに参加!?
しおりを挟む午後の授業は、全く集中出来なかった。
「三週間後、学園祭が行われる。クラスごとに出し物をしなくてはならないから、明日までに各自何か考えて来るように」
授業が終わると、先生がそう言って教室から出て行った。やっぱり、学園祭は行われるようだ。本来なら、学園祭は楽しいイベントなのに、憂鬱でしかない。
ゲームの中でのミシェルのクラスの出し物は、喫茶店だった。それは、どうでもいい。問題は、ミスコンだ。ミスコンに参加したミシェルは、ヒロインに負ける。そこまでは、どの攻略対象を選んでも同じだ。ここから、パトリック様がどう関わって来るのか分からない。
そうよ! ミスコンに負けるのが分かっているなら、ミスコンに出なければいい!
それで全部解決するとは思えないけど、少なくとも私は目立たない。
少し光が見え始めたところに、取り巻き三人組がやって来た。
「学園祭では、毎年ミスコンが開催されるようです」
「ミスコンなら、ミシェル様が出なければと思い、推薦しておきました! 運営の方が、ミシェル様なら優勝候補だと仰っていました!」
「さすが、ミシェル様です!」
何してくれちゃってるの!? 唯一の光が、一瞬で暗闇に包まれた。
「ミスコンに興味がないの。断っておいて」
絶対に出てたまるもんか!
「申し訳ありません、ミシェル様……一度登録すると、キャンセルは出来ないそうです……」
ここまで、ほとんどゲーム通りにならなかったのに、ここに来てゲームのシナリオに戻されるなんて思わなかった。だからといって、諦めたりしない。私は、死にたくないの!!
運営に、辞退したいと頼みに行った私は、撃沈して教室に戻って来た。ミスコンは、各国から来るお客様(お偉い人達)が楽しみにしているイベントの一つで、私が参加することはすでに噂になっているから、辞退したら国の威信に関わると言われた。学園祭の話も、ミスコンの話も、今日聞いたばかりなのに、私の知らないところで勝手に進められていたようだ。結局、ミスコンには出なければならなくなった。
教室に入ると、ウィルソン様が迎えに来ていた。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません」
急いで帰る準備をする。
「ゆっくりでかまわないよ。君に待たされている時間も、幸せだからね」
歯が浮くようなセリフも、彼が言うと嫌な感じはしない。アーサー様なら、殴りたくなるくらい嫌悪感を抱くのに不思議だ。
「そんなセリフ、どこで覚えたんですか?」
前世での彼は、目があっただけで顔を背けるほど照れ屋だった。この世界に転生してからは、婚約者の私くらいしか彼と親しくはしていない。
「全て、素直な気持ちを伝えているだけだよ」
透き通るくらい綺麗な瞳で、真っ直ぐ見つめながらそんなことを言われたら、ときめいてしまう。
「も、もう、行きますよ!」
真っ赤になった顔を見られないように、足早に教室から出て行く。前世の記憶がなかった時は、素直に受け入れられていたのに、今は恥ずかしい。記憶が戻ってからの私は、可愛くなかったと思う。それなのに、彼は変わらずに愛してくれている。この幸せを、失いたくない。
こうなったら、ミスコンに挑戦してやろうじゃない! 結果が決まっているからと、逃げ出したら負けだ!
ウィルソン様のおかげで、私は覚悟を決めた。
馬車に乗り込み、彼にミスコンの話をする。パトリック様のことは、伏せることにした。話したら、きっと彼はミスコンの運営に辞退させるように抗議すると思ったからだ。この国の王太子である彼に、国の威信に関わると言われたことをさせるわけにはいかない。自分のことくらい、自分でなんとかしてみせる。
「ミスコン……か。辞退しよう!」
「……え?」
パトリック様の話をしなくても、辞退するように言われた。
「ミシェルはこんなに美しいのだから、そんなものに出たら変な虫がブンブン飛び回ることになる! それに、他の男の視線に触れさせたくない!」
「ぷッ! あはははははっ!!」
あまりにも真剣な顔をして言うから、可笑しくて思い切り笑ってしまった。
彼は、私に票を入れてくれる。それだけで、私は頑張れる。思っていたよりもずっと、私は彼に惹かれていたようだ。
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