Joker

海子

文字の大きさ
37 / 83
11.恋一夜

しおりを挟む
 リックは、ビヴァリー湖の、打ち寄せる水音が入る窓を、閉めた。
そして、ベッドに座らせたレティシアの首筋に、唇を当てながら、レティシアの服のボタンを外していった。 
コルセットの紐を手早くほどき、下着を剥ぐ。 
レティシアは、リックにされるがまま、これから起きる出来事に、不安と緊張で、指先が冷たくなっていくのを感じていた。 
リックの前に、素肌をさらけ出したレティシアは、醜い烙印が、リックの眼に入らないように、左肩を下にしてベッドに横になり、膝をぴたりと合わせ、身体を丸めて、リックに背を向けた。
薄暗い灯の下に、白いきめ細やかな肌が、照らし出されていた。
レティシアは、ぎゅっと眼を閉じたまま、手を固く握った。 
乱暴にされたり、しないだろうか。
私は、泣きだしたり、しないだろうか。
あの痛みに、耐えられるだろうか。
そういった思いが、渦巻いた。
けれども、レティシアが一番怖かったのは、リックを軽蔑してしまうのではないか、ということだった。
リックは、ジャケットとシャツを脱いで、背を向けたままの、レティシアの右肩に触れた。 
びくっ、とレティシアの肩が、おびえたように震えた。 
リックはその右肩に、そっと、唇を当てながら、 これは、少女の身体だ、と思った。
リックは、レティシアの固く握られた手を、大きな手のひらで包んで、 男たちの性欲の犠牲になった、まだ、女として愛されたことのない身体だと感じた。
欲情と愛情を取り違えたままのレティシアを、女として満たしてやりたいと思った。
リックに背を向けたまま、固く眼を閉じるレティシアの、頬からうなじ、首から背中、腰へと、ゆっくりと何度も唇を当てて、そっと触れていった。
レティシアの固く握られた指から、少しずつ力が抜けて、その指の間に、リックは自分の指を差し入れた。 
レティシアの右肩を引いて、仰向けにすると、レティシアは、驚いたように眼を開いて、胸の前で、乳房を隠すように、腕を合わせた。 
「レティシア」 
動揺の色が浮かぶヘーゼルの瞳を、リックはまっすぐ見つめる。
「お前が、好きだ」 
レティシアは、小さく息を呑んだ。 
「愛している」 
リックは、そう告げると、レティシアの左肩を引き寄せた。
レティシアは、左肩の烙印を隠そうと、身を引いたが、リックはそのまま、百合の烙印の上に、唇を押しあてる。
レティシアの閉じた瞳から、涙が滲みだした。
リックは、唇を重ね、レティシアの口の中へ、深く忍び込んでくる。
そして、レティシアの乳房に触れ、愛撫を始めた。 
唇から首へと、唇を這わせ、敏感になったレティシアの乳房の先を、含んだ。 
レティシアの唇から、たまらずに吐息が漏れた。 
そういった感覚は、初めてだった。
肌に触れるリックの指から、唇から、痺れるような甘やかな刺激が押し寄せて、 レティシアを掻きたてる。 
レティシアの指が彷徨えば、すぐにリックの指に捕えられて、結ばれた。 
レティシアは、その時、気付いた。 
これは、これまでレティシアが受けて来た行為とは、全く別なものであることに。
慈しまれているのだと、初めて、わかった。 
膝の緩んだレティシアの脚を開き、その間に全てを脱ぎ捨てたリックが入って来た時、レティシアは、既に高みに向かって、昇り始めていた。 
秘所に、リックが触れていくと、レティシアは喘いで、身体を逸らせた。
十分に濡れてはいたが、レティシアは痛みを覚えるかもしれない。
触れてみて、リックはそう思った。
口で直接触れて濡らせば、もう少しレティシアが楽になるかもしれないと思ったが、そうはしなかった。
慣れていないレティシアには、却って辛いかもしれないと思ったからだった。
リックは、レティシアの中にゆっくりと入った。 
けれども、やはり、レティシアは痛みで、小さな叫び声を上げて、顔を背けた。 
リックの腕を掴む指にも、きつい力が籠もる。 
突き上げてくる衝動とは違う、別の本能が、レティシアを傷つけてはいけないと、リックに告げた。
自分も余裕がなくなりつつあったが、リックは、一度レティシアから離れようとした。
けれども、
「いや・・・、止めては、いや」 
レティシアは、泣くような声で、囁いた。
これまでは、痛みと共に、いつも心が粉々に砕け散った。
けれども、リックに与えられるこの痛みは、受け入れたかった。
痛みと共に、リックを受け入れれば、たとえ、今までの苦く辛い記憶を拭い去ることが出来なくとも、癒されていくような気がした。
リックはレティシアを、宥めつつ、愛撫を繰り返しつつ、奥まで入った。
鋭い痛みが、走る。
けれども、ゆっくり動き始めたリックと共に、痛みの向こうから、次第に甘美な疼きが押し寄せて、序々に、レティシアを高みへ導いて行く。 
声を上げずには、いられなかった。
喘ぎを漏らさずには、いられなかった。
さらに奥へと突きたてられて、レティシアの中にリックが射った時、レティシアは声を上げて、達していた。 
レティシアの中でリックが、脈打っていた。 
その時を迎えて、しばらく、レティシアは眼を開けることができなかった。 
初めての感覚に支配され、頭も心も、すぐには動き出さなかった。 
そっと目を開けると、まだ覆いかぶさったままのリックの背中が、大きく呼吸していた。 
レティシアと瞳が合うと、荒い呼吸のまま、レティシアの身体を強く抱きしめた。
レティシアは、そっとその背中に腕を回した。
 無愛想な、優しい人。 
・・・愛しい人。
レティシアの瞳から、涙が溢れた。 
  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

処理中です...