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11.恋一夜
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リックは部屋で、地図を睨んでいた。
そろそろ、ウッドフィールドへ向かって大詰めだった。
明日は、ケインズフォードに向かう予定だった。
そして、この地図に載ってない山道を進めるのは、そこまでだった。
ケインズフォードからは、街道を通ってウッドフィールドに向かうしかなかった。
ケインズフォードから、ウッドフィールドに入るなら、フォレストバーグを通ることになる。
今のところ、リックの周辺に、暗殺者たちの気配はなかった。
ということは、敵は、リックたちの行方を見失っている。
とすれば、敵は、ケインズフォードの先、フォレストバーグあたりで、最後の賭けに出てくると、踏んだ。
ここを逃せば、フィリップにウッドフィールドへ駆け込まれてしまう。
ウッドフィールドのリヴィングストン伯爵の屋敷へ逃げ込まれたら、敵はもう、手も足も出ない。
リヴィングストン伯爵に、銃を向けるようなことになれば、これは、フォルティスと、グラディウスの外交問題になるからだ。
そこで、昼間、急ぎの使いを手配して伯爵に手紙を出した。
明後日の夕刻には、フォレストバーグ。
明後日の夕刻、フォレストバーグに着いたと同時に、伯爵と落ち合えれば、心強い。
伯爵と落ち合う場所に、フォレストバーグの有名なタヴァンを指定しておいた。
もう誰も、死なせない。
リックには、固い決意があった。
短いノックの音が聞こえて、ハリーが入って来た。
「リック、ちょっといいか」
「ああ、何だ?」
「俺の気のせいかもしれないが、外でレティシアを見かけたような気がするんだ」
「レティシアを?」
「ああ、預けた馬の様子が、ちょっと気になったんで、馬屋に行ったんだが、帰る時、湖畔を急ぐ若い女の横顔が、眼に入ったんだ。レティシアに良く似ていたんだが・・・」
リックは、いやな予感がして、すぐレティシアの部屋に向かった。
「レティシア、レティシア、いるか?」
乱暴に、部屋をノックするが、返事は無かった。
「何事ですか?」
物音を聞きつけて、アンヌが部屋から顔を覗かせた。
「レティシアは、そっちにいるか?」
「レティシアなら、下へ食事を取りに行ったまま、戻って来ていません」
リックは、ハリーと顔を見合わせた。
「レティシア、開けるぞ」
鍵は、かかっていなかった。
部屋の中には、誰もいなかった。
そして、何一つ荷物はなく、鞄もなかった。
テーブルの上の、アンヌの食事の横に、震える文字の手紙が、残されていた。
どうか、探さないでください。
勝手を、お許しください。
お世話になりました。
レティシア
リックは、その手紙を片手で握りつぶすと、飛び出して行った。
「わたくしたちも、探しに行きましょう」
「いや、ここはリックにまかせよう」
リックに続こうとするアンヌを、ハリーが止めた。
「ですが・・・」
「リックは、捕まえるさ、レティシアを。必ず」
ハリーはなぜか、そう確信していた。
レティシアは、走った。
暗闇の中、湖畔の林の中を、駆けた。
何処へ向かっているのか、どこまで走ればいいのかは、分からなかったが、街が見えなくなるまで、足が動かなくなるまで、走り続けるつもりだった。
間違っていた。
ありふれた暮らしの中に、溶け込めると信じた自分が。
ささやかな幸せを見つけて、穏やかに暮らしていきたいと、願った自分が。
途中、木の根に足を取られて、地面に手を付いた。
スカートについた泥を払うのも忘れて、再び走り出した。
息が上がる。
溢れる涙を手の甲で拭いながら、走り続けた。
レティシアのものではない、足音が近づいてくるのがわかった。
レティシアは、足を更に速めた。
あの足音に、捕まってはいけない。
捕まった時、全てが終わる。
レティシアという幻が、終わってしまう。
レティシアの足元がもつれて、再び、地面に転んだ。
「レティシア」
「来ないで!」
レティシアは、涙を含んだ瞳に、怒りに似た感情を込めて、リックを睨んだ。
「探さないでって、言ったのに、どうして・・・?」
「話を」
「話なんて、ありません。話せることなんて、何もありません」
リックは、座り込んだままのレティシアの前に、しゃがむと、その身体を抱き寄せた。
「もういいんだ、ブロンディーヌ」
レティシアは、弾かれたように顔を上げ、
「どうして、なぜ・・・」
驚愕の眼で、リックの顔を見つめる。
「なぜ・・・、どうして、それを・・・、ああ、なぜ・・・」
レティシアの動揺は、広がるばかりだった。
「話をしよう、レティシア」
リックは、レティシアを立ち上がらせると、スカートの泥を払ってやった。
そして、その手をひいた。
そろそろ、ウッドフィールドへ向かって大詰めだった。
明日は、ケインズフォードに向かう予定だった。
そして、この地図に載ってない山道を進めるのは、そこまでだった。
ケインズフォードからは、街道を通ってウッドフィールドに向かうしかなかった。
ケインズフォードから、ウッドフィールドに入るなら、フォレストバーグを通ることになる。
今のところ、リックの周辺に、暗殺者たちの気配はなかった。
ということは、敵は、リックたちの行方を見失っている。
とすれば、敵は、ケインズフォードの先、フォレストバーグあたりで、最後の賭けに出てくると、踏んだ。
ここを逃せば、フィリップにウッドフィールドへ駆け込まれてしまう。
ウッドフィールドのリヴィングストン伯爵の屋敷へ逃げ込まれたら、敵はもう、手も足も出ない。
リヴィングストン伯爵に、銃を向けるようなことになれば、これは、フォルティスと、グラディウスの外交問題になるからだ。
そこで、昼間、急ぎの使いを手配して伯爵に手紙を出した。
明後日の夕刻には、フォレストバーグ。
明後日の夕刻、フォレストバーグに着いたと同時に、伯爵と落ち合えれば、心強い。
伯爵と落ち合う場所に、フォレストバーグの有名なタヴァンを指定しておいた。
もう誰も、死なせない。
リックには、固い決意があった。
短いノックの音が聞こえて、ハリーが入って来た。
「リック、ちょっといいか」
「ああ、何だ?」
「俺の気のせいかもしれないが、外でレティシアを見かけたような気がするんだ」
「レティシアを?」
「ああ、預けた馬の様子が、ちょっと気になったんで、馬屋に行ったんだが、帰る時、湖畔を急ぐ若い女の横顔が、眼に入ったんだ。レティシアに良く似ていたんだが・・・」
リックは、いやな予感がして、すぐレティシアの部屋に向かった。
「レティシア、レティシア、いるか?」
乱暴に、部屋をノックするが、返事は無かった。
「何事ですか?」
物音を聞きつけて、アンヌが部屋から顔を覗かせた。
「レティシアは、そっちにいるか?」
「レティシアなら、下へ食事を取りに行ったまま、戻って来ていません」
リックは、ハリーと顔を見合わせた。
「レティシア、開けるぞ」
鍵は、かかっていなかった。
部屋の中には、誰もいなかった。
そして、何一つ荷物はなく、鞄もなかった。
テーブルの上の、アンヌの食事の横に、震える文字の手紙が、残されていた。
どうか、探さないでください。
勝手を、お許しください。
お世話になりました。
レティシア
リックは、その手紙を片手で握りつぶすと、飛び出して行った。
「わたくしたちも、探しに行きましょう」
「いや、ここはリックにまかせよう」
リックに続こうとするアンヌを、ハリーが止めた。
「ですが・・・」
「リックは、捕まえるさ、レティシアを。必ず」
ハリーはなぜか、そう確信していた。
レティシアは、走った。
暗闇の中、湖畔の林の中を、駆けた。
何処へ向かっているのか、どこまで走ればいいのかは、分からなかったが、街が見えなくなるまで、足が動かなくなるまで、走り続けるつもりだった。
間違っていた。
ありふれた暮らしの中に、溶け込めると信じた自分が。
ささやかな幸せを見つけて、穏やかに暮らしていきたいと、願った自分が。
途中、木の根に足を取られて、地面に手を付いた。
スカートについた泥を払うのも忘れて、再び走り出した。
息が上がる。
溢れる涙を手の甲で拭いながら、走り続けた。
レティシアのものではない、足音が近づいてくるのがわかった。
レティシアは、足を更に速めた。
あの足音に、捕まってはいけない。
捕まった時、全てが終わる。
レティシアという幻が、終わってしまう。
レティシアの足元がもつれて、再び、地面に転んだ。
「レティシア」
「来ないで!」
レティシアは、涙を含んだ瞳に、怒りに似た感情を込めて、リックを睨んだ。
「探さないでって、言ったのに、どうして・・・?」
「話を」
「話なんて、ありません。話せることなんて、何もありません」
リックは、座り込んだままのレティシアの前に、しゃがむと、その身体を抱き寄せた。
「もういいんだ、ブロンディーヌ」
レティシアは、弾かれたように顔を上げ、
「どうして、なぜ・・・」
驚愕の眼で、リックの顔を見つめる。
「なぜ・・・、どうして、それを・・・、ああ、なぜ・・・」
レティシアの動揺は、広がるばかりだった。
「話をしよう、レティシア」
リックは、レティシアを立ち上がらせると、スカートの泥を払ってやった。
そして、その手をひいた。
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