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待ち合わせ、そして家に行く
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人工的に自然を再現しましたって感じの駅。紅葉混じりの木々と、手入れされたコスモスの花壇が赤黄色と交互に規則性を持って並んである。その近くには、いつも4、5人待ち合わせや暇つぶしの人がいる公園がある。TikTokを撮っているのか奇妙な動きをする化粧っ気のある女子高生や、古めかしいフィルムカメラを構えるベレー帽をかぶった丸眼鏡民族、それぞれの目的を持った人たちがぽつんぽつんといる公園だ。真ん中にある大きな木を囲んだベンチに、薄手のブラウンのコートを着た細身の青年が座っている。手には、分厚い単行本、細い指がページをめくる。いかにも「文学青年」って感じの雰囲気が近づきがたい印象を与えている。そんなことおかまいなしに、ふわふわして明るい茶髪をした長身の青年が上機嫌の様子で近づいていく。さっきまで本を読んでいた青年は彼に気づいた。重い前髪とそれなりにぶ厚い眼鏡の奥で目を輝かせている。
「ハルト、早かったね。今面白いところだったのに。」
少し頬を膨らませ不満げなそぶりを見せながらも、上機嫌な声で言った。青年はパタリとしおりも挟まずに本を閉じた。
「あはは。ごめんごめん。少しでも早くチアキに会いたくって急いで来たのに。」
ハルトと呼ばれた青年は子犬のようにまん丸になった目で少し悲しそうにもう一人の青年チアキを見つめる。チアキは、ハルトの顔から、顔ごと目を背けたようだった。ハルトのこの顔に弱いのか耳が若干赤くなっている。
「じゃあ、帰ろ。」
素っ気ないチアキの声。二人は、一緒に帰るらしく同じ歩幅で歩いている。派手とは言わないものの、ふわふわとした長身の青年と、クールで知的な文化人って感じの青年が歩いている姿は周りから見たら不思議な組み合わせであっただろう。ハルトが、チアキに対して一方的に話している様子がいっそう、その不思議さに拍車をかける。
「チアキ、今日もコンビニご飯のつもりでしょ?」
ハルトは、心配している様子でチアキに尋ねた。チアキは、ハルトの心配に気づいていないのか悪びれもなくうなずく。
「ほんとに、食べることに対してはとくに無頓着だよね。」
「そんなつもりはないよ。今日が偶然コンビニのご飯なだけ。」
「嘘だぁ~。そんなんだから、高校の時、」
「その話は、今関係無い!」
周りにいた談笑中の奥様方や犬を散歩させている子供までも、みんなが二人の方を見た。チアキにとって、高校の話は地雷だったのだろう。それまでは穏やかだったチアキの口調が荒ぶっている様子だった。
「食べるものないからコンビニに行く。それだけ。」
チアキはぼそっと言った。興味がなさそうな様子でこの話を終わらせようとしているようだ。早足で、チアキの家がある方へ向かう。二人の会話はここで終わったようだった。チアキは頬を膨らませたまま、ハルトを置いていくかのように早足だった。
人通りが少なくなったところで、沈黙を破ったのはハルトの少し低めの声だった。
「昨日から仕込んでたカレーあるんだよね。」
ハルトは再びあの話をもちかける。ハルトにとってはここからが本題だったのだろう、若干意味深な目線を向けチアキに言った。夕焼けを背負うハルト。ふわっとしていた雰囲気はキリリとしたものに変わったようだった。さっきのが、わんこだとすると今は狩猟犬といった所だ。それから、ハルトは公園待ち合わせて合った時とは違うチアキの脳内を見透かすような鋭い目つきでじっと見つめる。
「・・・何。」
顔を赤らめたチアキは、ハルトからしれっと目線をそらした。しかしハルトは逃げようとするチアキの細い腕をしっかりと捕まえた。ハルトはチアキの腕を掴み、身を寄せ、チアキの耳に己の唇を近づけた。
チアキは、反射的にハルトから離れようとする。それでも、ハルトはチアキの腕をはなさない。それどころか、強く抱きしめているようだった。
「チアキ好きでしょ?」
キャラメルのような甘い声がチアキの左耳をおかす。
「バカっ、外、誰か見てるかも。」
「見てないよきっと人通り少ないでしょ。たとえ見ててもみんな避けていくから大丈夫。」
こんな状況にも関わらず冷静な回答をしたハルトの声は、チアキを安心させようと、うんと優しかった。耳元にかかる息に違和感を抱いたのかチアキは、思わず身をよじる。ハルトの腕から逃げようとするも力が入らないのか、それほど強く掴んでいないハルトの腕からも逃げることはできなかった。しかし、ハルトはあっさりとチアキを開放した。そして、大きな骨張った手でチアキの頭をわしゃわしゃと撫でる。ワックスは付けていないものの、整えられた黒髪が無造作にいじられる。チアキが気づいていなかっただけで、既に家の近くまで来ていたようだった。
「家で、待ってるからね。チアキが好きな甘口だよ。」
ハルトは、ふわっとした笑顔に戻っていた。ハルトはぶんぶんと手を振ったあと、るんるんとした様子でチアキの家とは反対方向にある自分の家の方へスキップ気味に歩いて行った。
「行かねーよ。バカ」
チアキは頬を赤らめて、左耳を拭った。
「ハルト、早かったね。今面白いところだったのに。」
少し頬を膨らませ不満げなそぶりを見せながらも、上機嫌な声で言った。青年はパタリとしおりも挟まずに本を閉じた。
「あはは。ごめんごめん。少しでも早くチアキに会いたくって急いで来たのに。」
ハルトと呼ばれた青年は子犬のようにまん丸になった目で少し悲しそうにもう一人の青年チアキを見つめる。チアキは、ハルトの顔から、顔ごと目を背けたようだった。ハルトのこの顔に弱いのか耳が若干赤くなっている。
「じゃあ、帰ろ。」
素っ気ないチアキの声。二人は、一緒に帰るらしく同じ歩幅で歩いている。派手とは言わないものの、ふわふわとした長身の青年と、クールで知的な文化人って感じの青年が歩いている姿は周りから見たら不思議な組み合わせであっただろう。ハルトが、チアキに対して一方的に話している様子がいっそう、その不思議さに拍車をかける。
「チアキ、今日もコンビニご飯のつもりでしょ?」
ハルトは、心配している様子でチアキに尋ねた。チアキは、ハルトの心配に気づいていないのか悪びれもなくうなずく。
「ほんとに、食べることに対してはとくに無頓着だよね。」
「そんなつもりはないよ。今日が偶然コンビニのご飯なだけ。」
「嘘だぁ~。そんなんだから、高校の時、」
「その話は、今関係無い!」
周りにいた談笑中の奥様方や犬を散歩させている子供までも、みんなが二人の方を見た。チアキにとって、高校の話は地雷だったのだろう。それまでは穏やかだったチアキの口調が荒ぶっている様子だった。
「食べるものないからコンビニに行く。それだけ。」
チアキはぼそっと言った。興味がなさそうな様子でこの話を終わらせようとしているようだ。早足で、チアキの家がある方へ向かう。二人の会話はここで終わったようだった。チアキは頬を膨らませたまま、ハルトを置いていくかのように早足だった。
人通りが少なくなったところで、沈黙を破ったのはハルトの少し低めの声だった。
「昨日から仕込んでたカレーあるんだよね。」
ハルトは再びあの話をもちかける。ハルトにとってはここからが本題だったのだろう、若干意味深な目線を向けチアキに言った。夕焼けを背負うハルト。ふわっとしていた雰囲気はキリリとしたものに変わったようだった。さっきのが、わんこだとすると今は狩猟犬といった所だ。それから、ハルトは公園待ち合わせて合った時とは違うチアキの脳内を見透かすような鋭い目つきでじっと見つめる。
「・・・何。」
顔を赤らめたチアキは、ハルトからしれっと目線をそらした。しかしハルトは逃げようとするチアキの細い腕をしっかりと捕まえた。ハルトはチアキの腕を掴み、身を寄せ、チアキの耳に己の唇を近づけた。
チアキは、反射的にハルトから離れようとする。それでも、ハルトはチアキの腕をはなさない。それどころか、強く抱きしめているようだった。
「チアキ好きでしょ?」
キャラメルのような甘い声がチアキの左耳をおかす。
「バカっ、外、誰か見てるかも。」
「見てないよきっと人通り少ないでしょ。たとえ見ててもみんな避けていくから大丈夫。」
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