魂売りのレオ

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第一話 貴女は悋気に狂いて呪殺を好しとす

貴女は悋気に狂いて呪殺を好しとす 七

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 あれから数日。ぼくらはレオの館の庭に銀の混じったテーブルと椅子を置き、四人でお酒を飲んでいた。レオはウィスキーをロックで、パイシスとヴルペクラは彼ら用の酒に似た魔力”魔酒ましゅ”を飲んでいる。ぼくは下戸げこなのでオレンジジュースだ。
「なかなかさまになってるじゃないか」
 レオはイカそっくりになったヴルペクラを見てほめた。レオがひとをほめるなんてめずらしい。悪魔の眷属けんぞくともなると格が上がるのだろう。こころなしかぼくも以前より彼女に風格を感じる。きっと悪魔の元で修行した成果に違いない。ヴルペクラがよろこぶのはもちろん、パイシスも自慢げに、
「ははは。なんせ昨日は七万日も修行したからな。もう立派な眷属だよ」
 と八本の足をくねらせた。なんだよ七万日って。相変わらず悪魔の時空は歪んでるなぁ。
「あっ、戻っちゃう」
 そう言うとヴルペクラはもやもやとかたちを変え、人間の姿に戻った。なんでも照れたせいで気を抜いたらしい。使い魔と違って、自身の力で変げする者は安定が難しい。元が”かたちのあるもの”だからなおさらだ。
「酒のせいもあるだろう。もう戻ってしまったのだからもっと飲んだらどうだ」
 レオはそう言って銀のボトルを取り、ヴルペクラの銀製グラスに魔酒を注いだ。
「ははは、あんまり飲ませ過ぎるなよ。こいつは酔うといやらしくなっちまうんだ」
「ほう、それはいい。どんどん飲ませよう」
 やめときなって。レオは飲めないと聞くとすぐ飲ませようとするんだから。
「しかし、アーサーはよっぽど魅力的なんだな」
「ほう?」
 パイシスの言葉を聞き、レオの眉がピクリと動いた。
「こいつ、あんまり酔うと、おれにアーサーの姿で犯してくれと頼むんだ」
 ブーッ! ぼくは思わずジュースを吹き出してしまった。
「ななな、なんて?」
「だからさ、こいつ酔うと君に犯されたがるんだ」
「ななな?」
 ぼくは酒も飲んでないのに頭がぐるぐるして、うろたえてしまった。ヴルペクラは顔を真っ赤にしてグラスに口をつけている。ちなみにいまの彼女の姿は半透明の青い霊体だけど、亡霊も生前の生理が働くもので、泣いたり、お腹が鳴ったり、顔色が変わったりする。
 レオはどんな反応をするのかと思ったら、
「アハハハ! それはいい。アーサー、ヴルペクラを犯してやれ」
 と上機嫌で言った。
「ち、ちょっと待ってよ。ぼくはレオだけを……」
「愛しているのだろう?」
「そ、そうだよ……」
 あんまりストレートに言わないでほしいなぁ。ひと前で答えるのは恥ずかしい。
「おまえは英雄色を好むという言葉を知らんのか」
「なにそれ」
「おまえほどの男がわたししか女を知らんのでは恥ずかしいと言ってるんだ。少しは亡霊でも犯して男を上げて来い」
「な、なにを言ってるんだ。そんなの浮気じゃないか。それにどうやって亡霊と、その……するのさ」
「難しいことはない。土をこねて魔法をかければ、いのちのない肉体ができる。ふつう半日もすれば崩れてしまうが、わたしなら数日は持たせられるだろう。そこにヴルペクラが憑依すれば、あとは生きた人間そのものだ。はらむ心配はないから存分に犯せ」
 じ、冗談じゃない! たしかにヴルペクラはかわいいけど、ぼくはレオ一筋で、レオをこころから愛していて、騎士としてほかの女を抱くなんて……
「あ、あの、本当にしていただけるのでしょうか?」
 ヴルペクラ……! ち、ちょっと……
「そんなことができるとは悪魔のおれも知らなかったぜ。やってくれるかい?」
 パイシス!
「ああ。あとはアーサーの返事次第だが……どうする?」
 どうするって言ったって……
「アーサー様……」
 そ、そんな目で見られたら断れないじゃないか……
 ああ、もう!
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