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第十一話 悪徳! 海の家
悪徳! 海の家 二
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海は広い!
海は大きい!
海はたのしい!
ぼくは最初、女ものの水着が恥ずかしくてしょうがなかった。でもいざ海に入ってしまえば大丈夫だった。
なにせ魔法のおかげで他人に見られることはないし、海中はものがはっきり見えない。やがてタイトな感触にも慣れてきて、泳いでいるうちにビキニのことなんかすっかり忘れてしまった。
ところでレオはかなり泳ぎがうまい。魔の森の中を流れる”レオの川”でむかしから水遊びをしていたらしく、ゆるい流れとはいえ水流を逆らって泳いでいたそうだから、けっこうな水練になっていたのだろう。
ぼくも兵士として水練はしたが、身体差のせいかレオには及ばない。海の上でなんどもレオと追いかけっこをしたけど、結局ぼくはいちども勝てなかった。
でも泳ぐだけが海のたのしみじゃない。ときには浅瀬で水をかけあったり、わけもなく潜ってみるのも一興だ。とくにアルテルフはぼくらに水をかけてばかりで、泳ぐことよりちょっかいを出すことに熱中していた。
それに全員が泳いでいるわけじゃない。
レグルスとデネボラは浜辺で砂の城を作っていた。砂が湿気をはらんでいるから簡単には崩れず、ぼくのひざより高く積み上がっている。
「君たちは泳がないの?」
と浅瀬から呼ぶと、
「はぁい。わたし疲れるのいやなんですぅ」
とデネボラが返事をした。
しかしレグルスはなにか思うことでもあるのか、ため息を吐くような苦笑いを見せた。
「どうしたの、レグルス」
「いえ、別に……」
「なにかあったの?」
「そ、そういうわけではないのですが……」
おや、やっぱりなにかあるらしい。いったいどうしたんだろう。
ぼくは浜に上がり、レグルスの傍まで駆け寄った。
「どうしたの? なにかあったのなら言ってよ」
「そ、そんな……わたくしのことなど気にせずたのしんでください」
「やだよ。ぼく、レグルスのことが気になってたのしめないよ。レグルスといっしょに遊びたいよ」
「わ、わたくしめといっしょに!? はうぅ……」
「ねえ、教えて。どうしたの?」
「じ、実は……」
レグルスは顔を真っ赤にし、白状した。
「わたくし、海が怖いのでございます」
「海が怖い? なんで?」
「はい。本当はわたくしもアーサー様と……いえその、みなさまと泳ぎたいのですが、もし遠くまで行ってしまって、沖に流されたらと思うと怖くて近寄れないのです」
はぁー、なるほど。たしかにそれは怖いや。でも浅瀬で遊んでれば大丈夫なんじゃない?
「いえ! そんなことを言ってうっかり流されてしまったら大変です! 聞いた話によると、海には流れというものがあって、その流れに乗ってしまうとはるか遠くまで流され、死んでしまうといいます!」
ううん……見たところみんなふつうに泳いでるけどなぁ。そんな危険があるなら、いまごろとっくに騒ぎが起きてるはずだ。いっしょに来ればいいのに。
「申し訳ありません。それでもやはり、怖いのです」
そっかぁ。じゃあしょうがないや。ぼくはもうひと泳ぎして来ようっと。
と思ったそのとき、
「おい、レグルス。そんなこと心配していたのか」
とレオが顔を出した。
「あ、レオ様……」
「バカだなぁ。たしかに離岸流といって、沖に流される水流が起きる場合もあるが、この浜は海水浴場に指定されているくらいだから発生しにくいし、いざとなれば地区の監視員がいる。ほら、ああやって笛を首に下げて歩き回っているヤツがいるだろ。あれはたいてい救助に使える魔法や特殊技能を持っているんだ。安心して流されればいい」
「そんな、いやです! あんな見ず知らずの男に体を触られるなど、たとえいのちを救っていただくとしても耐えられません!」
「ならアーサーならいいか?」
「へっ?」
「そうだ、そうしろ。アーサー、おまえレグルスの手を握っていてやれ。それならこいつも安心して海に入れるだろう」
なるほど、それなら安心だ。騎士の訓練を受けたぼくなら革鎧を着た大人でも担いで泳ぐことができる。
「うん、いいよ。いっしょに行こう」
そう言ってぼくは手を差し出した。すると、
「そ、そんな! わたくしのような下賤をアーサー様のお手でお守りいただくなどと! ……ひぃ!」
レグルスはなおも真っ赤な顔をし、ぎゅっとわきを締めて手を震わせた。そんなに遠慮しなくてもいいのになぁ。
よーし、ここは強引に!
「ほら、行こう!」
ぼくはレグルスの手を取り駆け出した。
「えっ!? はわっ! はわわ!」
レグルスはよほどたのしいのか、悲鳴のような変な声を上げていた。ぼくらはそのままのいきおいで波打ち際を越え、転がるように浅瀬へと飛び込んだ。
「きゃあ!」
「わっぷ!」
ぼくらは水面から顔を出し、顔にかかった海水を拭った。
「あはは! どう? 大丈夫でしょ?」
「は、はい……」
だろうね。そりゃ大丈夫さ。だってまだ足の着くところにいるんだから。ここならよほど大きい波にでも襲われなければまず問題ない。
「海は気持ちいいね!」
「……はい!」
レグルスは本当にうれしそうに笑った。なんだかやけに目が潤んでいるけど、たぶん海水が跳ねたんだろう。この程度の困難で泣くような子じゃないもの。
ぼくらは遊んだ。レオやアルテルフも混じり、子供みたいに遊びまわった。
浜を見るとデネボラはゾスマと並んでタコやらカニやらをいじって遊んでいた。そういえばゾスマを見ないと思ったら崖で釣りをしていたらしい。デネボラはとくにカニが気に入ったらしく、「あーそびーましょ」などと言いながら指でつついたりしていた。
しかし人間っていうのは不思議なものだね。どうしてか、いたずらしたくなるときがある。
レグルスはすっかり安心していた。ぼくが常に片手を持っているし、足の着く場所で泳いでいるから怖くないんだろう。
もしこれで突然深いところに行ったらどんな顔するんだろうなぁ。
ぼくは内心ニヤついた。そして、
「レグルスー、こっちこっちー」
彼女の顔に海水をかけながら沖合に向かって泳いだ。
「あははは! やりましたね! この、このー!」
目をつぶった彼女はまさかいたずらされているなんて気づかず、ぼくに海水をかけ返していた。
が、
「あっ、あれ……?」
足を下に伸ばしても地につかないことに気づいた。
そこでぼくは手を離し、
「ほら、案外平気でしょ。これでレグルスも海で泳げるね」
そう言ってクスリと微笑みかけた。
しかし、
「やっ……やだっ……」
「へ?」
「やだ、怖い! 怖いよお!」
「れ、レグルス?」
「助けて! 助けてアーサー様! いやぁー!」
なんとその場でわあわあ泣き出してしまった。
「ああっ、レグルス!」
ぼくは大急ぎで彼女の元へ泳いだ。
なんてことだ。ぼくは最低だ。そりゃ彼女は強いさ。本来の姿は恐ろしい巨虎で、かつては密林を支配した獣の神だ。ひとの姿でもすさまじい剣豪だし、虎に戻れば街ひとつ平気で滅ぼせる力がある。
だけどそれは陸上での話で、海ではどうやら無力だし、だれにでも苦手なものはある。
そんな彼女を勝手に過信し、海を克服できるだろうと思い込んだせいで、本当にいやな思いをさせてしまった。
「ごめんよ! 泣かないで!」
ぼくは彼女を抱きかかえた。さっきみたいに手を握ってもよかったけど、海中はにごって見えなかったし、なにより支えになりたかった。
「うええん! アーサー様ぁ!」
レグルスはぼくにしがみつき、涙と鼻水をぼろぼろこぼした。ああ、ぼくのせいで……ごめんよ、ごめんよ。
そんなぼくらのそばで、アルテルフが言った。
「あーあ、ひどーい。アーサー様サイテー」
「うっ……」
そ、その通りだ……うう。
「おまえ、やっていいことと悪いことの区別もつかんのか」
とレオがなじった。うう、ちょっといたずらしただけなんだ……そんな悪気はないんだ……
「それにしてもアーサー様、こんなおおやけの場でレグルスに抱きついちゃって、もしかしてこのためにいたずらしたんですかー?」
「えっ!?」
「なるほど、おまえというヤツはとんだ変態だな。そんなに胸を押しつけさせて、いやらしいヤツめ」
ち、違う! ぼくはちょっとからかっただけで、決していやらしいことしようだなんて思ってないんだ! これはレグルスが溺れないよう支えているだけで……
「これは罰が必要だな」
「そーですねー。アーサー様にも相応のいたずらをしてあげませんとねー」
え? ちょっと、罰ってなにするつもり!? まずい! レグルスを抱えてるから身動きが……
「えいっ!」
「ひゃあっ!」
あ、アルテルフが背後から水着に手を入れて……! や、やめて! 先端をそんな、わああ!
「あれー? ずいぶん大きな声出してどーしましたー?」
ど、どうしましたって、わあ! わあ、わあ、わああ!
「男はこんなところ触られてもなんにも感じないはずですよねー。どーして女みたいな声、出ちゃってるんですかー?」
「おや、アーサー。おまえこんなところに亀を飼っていたのか。頭が飛び出してるぞ」
わっ!
「ほう、撫でてやるとピクピクしてうれしそうだな。もっとしてやろう」
だめっ! だめえ!
「おやおや、なんだその顔は。ずいぶん情けない表情だな」
「でもしょうがないですよねー。だって罰なんですから」
「ひとにやるのはよくて、自分はやられたくないなんて、そんな道理はないよなあ」
「おとなしく罰を受けてくださーい。あはははははー!」
「ほら! 鳴け! もっといい声で鳴け! わははははは!」
や、や、や、やめてえーー!
海は大きい!
海はたのしい!
ぼくは最初、女ものの水着が恥ずかしくてしょうがなかった。でもいざ海に入ってしまえば大丈夫だった。
なにせ魔法のおかげで他人に見られることはないし、海中はものがはっきり見えない。やがてタイトな感触にも慣れてきて、泳いでいるうちにビキニのことなんかすっかり忘れてしまった。
ところでレオはかなり泳ぎがうまい。魔の森の中を流れる”レオの川”でむかしから水遊びをしていたらしく、ゆるい流れとはいえ水流を逆らって泳いでいたそうだから、けっこうな水練になっていたのだろう。
ぼくも兵士として水練はしたが、身体差のせいかレオには及ばない。海の上でなんどもレオと追いかけっこをしたけど、結局ぼくはいちども勝てなかった。
でも泳ぐだけが海のたのしみじゃない。ときには浅瀬で水をかけあったり、わけもなく潜ってみるのも一興だ。とくにアルテルフはぼくらに水をかけてばかりで、泳ぐことよりちょっかいを出すことに熱中していた。
それに全員が泳いでいるわけじゃない。
レグルスとデネボラは浜辺で砂の城を作っていた。砂が湿気をはらんでいるから簡単には崩れず、ぼくのひざより高く積み上がっている。
「君たちは泳がないの?」
と浅瀬から呼ぶと、
「はぁい。わたし疲れるのいやなんですぅ」
とデネボラが返事をした。
しかしレグルスはなにか思うことでもあるのか、ため息を吐くような苦笑いを見せた。
「どうしたの、レグルス」
「いえ、別に……」
「なにかあったの?」
「そ、そういうわけではないのですが……」
おや、やっぱりなにかあるらしい。いったいどうしたんだろう。
ぼくは浜に上がり、レグルスの傍まで駆け寄った。
「どうしたの? なにかあったのなら言ってよ」
「そ、そんな……わたくしのことなど気にせずたのしんでください」
「やだよ。ぼく、レグルスのことが気になってたのしめないよ。レグルスといっしょに遊びたいよ」
「わ、わたくしめといっしょに!? はうぅ……」
「ねえ、教えて。どうしたの?」
「じ、実は……」
レグルスは顔を真っ赤にし、白状した。
「わたくし、海が怖いのでございます」
「海が怖い? なんで?」
「はい。本当はわたくしもアーサー様と……いえその、みなさまと泳ぎたいのですが、もし遠くまで行ってしまって、沖に流されたらと思うと怖くて近寄れないのです」
はぁー、なるほど。たしかにそれは怖いや。でも浅瀬で遊んでれば大丈夫なんじゃない?
「いえ! そんなことを言ってうっかり流されてしまったら大変です! 聞いた話によると、海には流れというものがあって、その流れに乗ってしまうとはるか遠くまで流され、死んでしまうといいます!」
ううん……見たところみんなふつうに泳いでるけどなぁ。そんな危険があるなら、いまごろとっくに騒ぎが起きてるはずだ。いっしょに来ればいいのに。
「申し訳ありません。それでもやはり、怖いのです」
そっかぁ。じゃあしょうがないや。ぼくはもうひと泳ぎして来ようっと。
と思ったそのとき、
「おい、レグルス。そんなこと心配していたのか」
とレオが顔を出した。
「あ、レオ様……」
「バカだなぁ。たしかに離岸流といって、沖に流される水流が起きる場合もあるが、この浜は海水浴場に指定されているくらいだから発生しにくいし、いざとなれば地区の監視員がいる。ほら、ああやって笛を首に下げて歩き回っているヤツがいるだろ。あれはたいてい救助に使える魔法や特殊技能を持っているんだ。安心して流されればいい」
「そんな、いやです! あんな見ず知らずの男に体を触られるなど、たとえいのちを救っていただくとしても耐えられません!」
「ならアーサーならいいか?」
「へっ?」
「そうだ、そうしろ。アーサー、おまえレグルスの手を握っていてやれ。それならこいつも安心して海に入れるだろう」
なるほど、それなら安心だ。騎士の訓練を受けたぼくなら革鎧を着た大人でも担いで泳ぐことができる。
「うん、いいよ。いっしょに行こう」
そう言ってぼくは手を差し出した。すると、
「そ、そんな! わたくしのような下賤をアーサー様のお手でお守りいただくなどと! ……ひぃ!」
レグルスはなおも真っ赤な顔をし、ぎゅっとわきを締めて手を震わせた。そんなに遠慮しなくてもいいのになぁ。
よーし、ここは強引に!
「ほら、行こう!」
ぼくはレグルスの手を取り駆け出した。
「えっ!? はわっ! はわわ!」
レグルスはよほどたのしいのか、悲鳴のような変な声を上げていた。ぼくらはそのままのいきおいで波打ち際を越え、転がるように浅瀬へと飛び込んだ。
「きゃあ!」
「わっぷ!」
ぼくらは水面から顔を出し、顔にかかった海水を拭った。
「あはは! どう? 大丈夫でしょ?」
「は、はい……」
だろうね。そりゃ大丈夫さ。だってまだ足の着くところにいるんだから。ここならよほど大きい波にでも襲われなければまず問題ない。
「海は気持ちいいね!」
「……はい!」
レグルスは本当にうれしそうに笑った。なんだかやけに目が潤んでいるけど、たぶん海水が跳ねたんだろう。この程度の困難で泣くような子じゃないもの。
ぼくらは遊んだ。レオやアルテルフも混じり、子供みたいに遊びまわった。
浜を見るとデネボラはゾスマと並んでタコやらカニやらをいじって遊んでいた。そういえばゾスマを見ないと思ったら崖で釣りをしていたらしい。デネボラはとくにカニが気に入ったらしく、「あーそびーましょ」などと言いながら指でつついたりしていた。
しかし人間っていうのは不思議なものだね。どうしてか、いたずらしたくなるときがある。
レグルスはすっかり安心していた。ぼくが常に片手を持っているし、足の着く場所で泳いでいるから怖くないんだろう。
もしこれで突然深いところに行ったらどんな顔するんだろうなぁ。
ぼくは内心ニヤついた。そして、
「レグルスー、こっちこっちー」
彼女の顔に海水をかけながら沖合に向かって泳いだ。
「あははは! やりましたね! この、このー!」
目をつぶった彼女はまさかいたずらされているなんて気づかず、ぼくに海水をかけ返していた。
が、
「あっ、あれ……?」
足を下に伸ばしても地につかないことに気づいた。
そこでぼくは手を離し、
「ほら、案外平気でしょ。これでレグルスも海で泳げるね」
そう言ってクスリと微笑みかけた。
しかし、
「やっ……やだっ……」
「へ?」
「やだ、怖い! 怖いよお!」
「れ、レグルス?」
「助けて! 助けてアーサー様! いやぁー!」
なんとその場でわあわあ泣き出してしまった。
「ああっ、レグルス!」
ぼくは大急ぎで彼女の元へ泳いだ。
なんてことだ。ぼくは最低だ。そりゃ彼女は強いさ。本来の姿は恐ろしい巨虎で、かつては密林を支配した獣の神だ。ひとの姿でもすさまじい剣豪だし、虎に戻れば街ひとつ平気で滅ぼせる力がある。
だけどそれは陸上での話で、海ではどうやら無力だし、だれにでも苦手なものはある。
そんな彼女を勝手に過信し、海を克服できるだろうと思い込んだせいで、本当にいやな思いをさせてしまった。
「ごめんよ! 泣かないで!」
ぼくは彼女を抱きかかえた。さっきみたいに手を握ってもよかったけど、海中はにごって見えなかったし、なにより支えになりたかった。
「うええん! アーサー様ぁ!」
レグルスはぼくにしがみつき、涙と鼻水をぼろぼろこぼした。ああ、ぼくのせいで……ごめんよ、ごめんよ。
そんなぼくらのそばで、アルテルフが言った。
「あーあ、ひどーい。アーサー様サイテー」
「うっ……」
そ、その通りだ……うう。
「おまえ、やっていいことと悪いことの区別もつかんのか」
とレオがなじった。うう、ちょっといたずらしただけなんだ……そんな悪気はないんだ……
「それにしてもアーサー様、こんなおおやけの場でレグルスに抱きついちゃって、もしかしてこのためにいたずらしたんですかー?」
「えっ!?」
「なるほど、おまえというヤツはとんだ変態だな。そんなに胸を押しつけさせて、いやらしいヤツめ」
ち、違う! ぼくはちょっとからかっただけで、決していやらしいことしようだなんて思ってないんだ! これはレグルスが溺れないよう支えているだけで……
「これは罰が必要だな」
「そーですねー。アーサー様にも相応のいたずらをしてあげませんとねー」
え? ちょっと、罰ってなにするつもり!? まずい! レグルスを抱えてるから身動きが……
「えいっ!」
「ひゃあっ!」
あ、アルテルフが背後から水着に手を入れて……! や、やめて! 先端をそんな、わああ!
「あれー? ずいぶん大きな声出してどーしましたー?」
ど、どうしましたって、わあ! わあ、わあ、わああ!
「男はこんなところ触られてもなんにも感じないはずですよねー。どーして女みたいな声、出ちゃってるんですかー?」
「おや、アーサー。おまえこんなところに亀を飼っていたのか。頭が飛び出してるぞ」
わっ!
「ほう、撫でてやるとピクピクしてうれしそうだな。もっとしてやろう」
だめっ! だめえ!
「おやおや、なんだその顔は。ずいぶん情けない表情だな」
「でもしょうがないですよねー。だって罰なんですから」
「ひとにやるのはよくて、自分はやられたくないなんて、そんな道理はないよなあ」
「おとなしく罰を受けてくださーい。あはははははー!」
「ほら! 鳴け! もっといい声で鳴け! わははははは!」
や、や、や、やめてえーー!
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