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第十五話 そうだ、温泉に行こう
そうだ、温泉に行こう 九
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「まったく……してやられたな」
レオは背もたれの長いチェアに座り、ウィスキーをあおった。あれから数日後の午後、ぼくらは館に戻り、レオとライブラと庭でくつろいでいた。レグルスも傍にいるが、彼女は給仕として従事し、生真面目に突っ立っている。
「いやぁ、あんたらのおかげで仕事が楽に済んだよ」
ライブラはキシシと笑い、言った。
「なにせ町長の傍にはいつも魔術師がいたからねぇ。殺すにはちょっと骨が折れそうだったのさぁ」
なんでもライブラの仕事は町長を殺すことだったらしい。依頼主はなんと町民の半数だ。
新しい町長は地位を盤石にするため、特定の人間に有利になるよう法改正を進めていた。とくに平等という言葉を都合よく使って不満を持つ人間を優遇したり、さらには土地を奪いたい外国人の参入を促すことで、彼らの支持をより厚いものにした。
しかしこれで住民が黙っているはずがない。ひとりの人間の欲望のために生活を奪われ、街をめちゃくちゃにされ、さらにはミス・コンなどという嘘の祭りで女の尊厳を破壊されれば、たとえ殺してでも長を引きずり下さなければならない。
だが町長の守りは硬い。魔術師が常に守りを固めているおかげで暗殺はできそうにないし、法で崩すにも”平等法”は大義名分だけは立派で、どうにも隙がない。選挙で蹴落とそうにも票集めは盤石である。
そこで、呪術師を雇うというイリーガルな方法を選んだ。それも並の術者では感じ取ることのできない、ごく微細な召喚術を使った。(召喚術とは、特定の者だけを呼び寄せる一種の呼び声だ。広い暗闇で明かりを灯し、ここに来てくれと叫ぶ行為に近い)
ライブラはそれに反応し、依頼者である暗殺首謀者と通信した。どうやったかは教えてくれなかったが、呪術では遠方と言語のやりとりができるらしい。
そこで彼女の考えた作戦は、レオをぶつけることだった。初回の偽ミス・コンからちょうど一年——第二回が行われるタイミングでレオを連れて行き、町長を殺すよう誘導することだった。
「まさかここまでうまくいくとは思わなかったねぇ」
もしはじめから温泉に行こうと誘えばレオは怪しむ。だからあえてレグルスだけを望み、レオたちを拒む素振りを見せたという。
「だから宿の予約が七人だったんだね」
と、ぼくは訊いた。
「そうさね。あんたら全員呼ぶつもりだったのさ。ま、二匹来なかったのは残念だけどねぇ」
ふーん、すごいなぁ。ぼくだったらとにかく来てって言っちゃいそうだ。他人の性格を予測して嘘をつくなんて、ちょっとやそっとでできることじゃない。
「で、分け前は?」
とレオが言った。
「わたしを仕事で使ったんだ。その分金を分けるべきだろう」
「はぁ? なに言ってんだいクソブス。あんたはあたしの術にはまったんだよ。分け前がほしければ仕事の前に言うんだね」
「ならわたしもレグルスもタダ働きか。割に合わんな」
レオは不機嫌にふんぞり返った。言い返さないってことは、理はライブラにあるらしい。
「いいじゃないさね。温泉はよかったろ? それに宿代も食事代もタダさ」
「あれは依頼人持ちだろう? まったく、気に食わん」
あーあ、レオがふてくされちゃった。最強無敵の知恵者を自負しているから、いくら相手が一流とはいえ、手のひらの上で転がされたのが許せないんだろう。ぼくは「まあまあ」となだめたが、レオは「フン」とそっぽを向いて気が済まなかった。
そこに、レグルスが言った。
「よろしいじゃありませんか。旅行がたのしめたと思えば」
「だがわたしは猿回しの猿にされたんだぞ。このわたしがだ」
「ご承知のうえでだまされたのでしょう? ライブラ様の仕事を覗き見るために。でなければ賢者たるレオ様がタダ働きなどするはずがございません」
「……」
レオはふぅむと考え直すような顔をした。そしてむっくり上体を起こして、
「こら、みなまで言うな。わたしがわざとだまされたことがライブラにバレるではないか」
とニヤニヤしながら言った。あ、嘘だな。レグルスの言うことがそれっぽいから都合よく合わせたんだ。レオはこういうところ、けっこうわかりやすいからなぁ。
「ま、実際たのしかったぞ。温泉はただの風呂より断然よかったし、バカが死ぬところも見れたしな」
レオは機嫌を直し、言った。
「あの町長、あれでうまくいくと思ったら大間違いだ。平等などと聞こえのいいきれいごとばかり並べたところで、破綻する未来しか見えんというのに」
「そうさねぇ。今回の依頼がなくても、いずれ街が滅んでおしまいだったろうねぇ」
ライブラもレオの意見に同意した。どういうことだろう。ぼく政治にはちょっと疎いんだ。
「いいか、アーサー。そもそもこの世に平等などというものは存在せん」
へ? そうなの?
「たとえばおまえ、真の姿のレグルスと戦って勝てるか?」
ううん、絶対無理だね。たとえぼくが千人いても無理だろう。
「そうだろう。いまの例は極端だが、この世にまったくおなじ人間などおらんし、生まれた瞬間からどうやっても差が生じる。それをまったくおなじに扱おうなどと不可能だ。やれることは”優遇”だけだ」
優遇?
「あの町長がやったのは優遇だ。それも片方を下げて片方を優遇するという、最悪の優遇だ。バカは、不満を持つ人間を優遇することを”平等”と呼ぶ。そして権力者にとってそれは大きな得票の元となるんだ」
つまり……どういうこと?
「まだわかんないのかい?」
ライブラが言った。
「あんたぐらいのバカをみんなとおなじに合わせるのは無理だろ? だからバカには特別に金を与えて、まともな人間から金を奪う。たとえるなら、こういうことをあの町長はやったんだよ」
それはとんでもない話だ。……って、ぼくはバカじゃないよ!
「まあ、優遇も一切なしでは困るんだがな。手足のない者や、一家の稼ぎ頭が倒れてしまったときなど、優遇すべきものはままある。しかしどうあっても平等などというものは存在せんし、平等という言葉を使うヤツはバカか詐欺師のどちらかだ」
ううん……そんなもんかなぁ。レオの言うことはどうにも冷たい気がする。ぼくはもっと、みんな並んで仲よくおんなじがいいと思うけどなぁ。
「いいのさ、不平等で」
ライブラは後頭部で手を組み、言った。
「みんなおんなしじゃつまんないだろ? だから自分の長所を伸ばして、自分よりすごいと思うものを目指して、精一杯努力する。だから人間ってのはおもしろいのさぁ」
……そっか。よくわかんないけど、つまりそういうことなんだね!
「上を向いて生きることさね。ブスに生まれたからってなにもしなけりゃ、よけいブスになるだけさ。ろくに努力もせず不満ばかり言って、うまくいかないことを生まれや環境のせいにしてると、ああいう町長にだまされて、道具にされちまうんだよ」
なるほどねぇ。つまりそういうことか~。なーるほどねぇ~。
「ま、こころの隙につけこむのは呪いの基本さね。あんたもせいぜい不満や欲望につけこまれないよう気をつけなよ」
うん、そうするよ!
「さて、それじゃあたしはそろそろ帰るとするかねぇ。またそのうち買い物に来るよ」
ライブラはグラスを飲み干し、立ち上がった。そして庭でたむろしていた愛馬の鞍に手をかけた。そのとき、
「待て、アホヅラ」
「なんだい、クソブス」
レオが止め、ライブラが振り返った。
「やはりタダ働きでは割に合わん。報酬をもらおう」
「はぁ~……まさかあんたがそんな聞き分けのないヤツだと思わなかったねぇ」
ライブラはメンドくさそうに頭を掻いた。
「あのねぇ、呪術師はひとを操るのが仕事だよ。あんたは操られたんだよ。協力したんじゃなくて、あたしの道具になったんさね。それでどうして報酬がもらえるってんだい」
「だがそれではわたしのプライドが許さん」
「なにがプライドだい。敗者に語る言葉はないよ。あんた戦いで殺されたあとでも文句言うつもりかい?」
「金はいい。温泉を教えろ」
「は?」
ライブラはポカンとした。
「おまえ、週に二、三度温泉に行くと言っていたな。つまりこの近くにいい温泉があるんだろう。連れてけ。紹介しろ」
レオったらなにを言ってるんだろう。報酬に温泉を教えろなんて、そんなに温泉が気に入ったのかな?
「はっ、はははははは!」
ライブラは突如ゲラゲラ笑い出した。
「そうかい、あんたそんなに温泉に行きたいのかい!」
「ああ。しかし神の小径は閉じてしまったし、もうあのホテルには行けんだろう」
「そうかいそうかい、しょうがないねぇ!」
ライブラは満面の笑みで馬を引き、わざわざレオの目の前まで戻って、
「こういっちゃなんだけど、あたしゃ随一の温泉マニアさ。天然、人口、自然の露天と、ここいらの湯はぜんぶ知り尽くしてるさね。そうかい、報酬に湯を教えてほしいかい」
「まあ、おまえの言う通り、わたしは操られていたわけだから、いやだと言われればそれまでだが……」
「いいさね! 連れてってあげるよ!」
ライブラはバシンとテーブルを叩き、跳ねるような声で言った。
「ただし今日は仕事の準備があるから無理だよ! 週末以降ならいつでも行けるけど、どうだい!?」
「ふむ……空けておこう」
「そうかい! したらこんどはデネボラとゾスマも連れてくるんだよ! 温泉のよさを徹底的に教えてあげるんだからね!」
それじゃ、週末だよ! と言ってライブラは去っていった。すごいテンションだったなあ。いつも気だるげで殺伐としているライブラが、あんなにも大はしゃぎするんだもんなぁ。
「フフフ……案外かわいいヤツめ」
えっ?
「やられっぱなしでは、わたしの気が済まんからなぁ」
どういうこと?
「ま、実際温泉はいいものだしな。わたしは体面を保てたし、あいつもよろこんだし、万事うまくいったというところだ」
うむむ? なにを言ってるのか全然わかんないや。
まあでも、万事うまくいったって言ってるってことは、万事うまくいったってことだね! よかったよかった。さすがレオだよ。それにしてもまた温泉行けるのたのしみだなぁ。こんどはちゃんと男女で湯が分かれてるといいけど……
レオは背もたれの長いチェアに座り、ウィスキーをあおった。あれから数日後の午後、ぼくらは館に戻り、レオとライブラと庭でくつろいでいた。レグルスも傍にいるが、彼女は給仕として従事し、生真面目に突っ立っている。
「いやぁ、あんたらのおかげで仕事が楽に済んだよ」
ライブラはキシシと笑い、言った。
「なにせ町長の傍にはいつも魔術師がいたからねぇ。殺すにはちょっと骨が折れそうだったのさぁ」
なんでもライブラの仕事は町長を殺すことだったらしい。依頼主はなんと町民の半数だ。
新しい町長は地位を盤石にするため、特定の人間に有利になるよう法改正を進めていた。とくに平等という言葉を都合よく使って不満を持つ人間を優遇したり、さらには土地を奪いたい外国人の参入を促すことで、彼らの支持をより厚いものにした。
しかしこれで住民が黙っているはずがない。ひとりの人間の欲望のために生活を奪われ、街をめちゃくちゃにされ、さらにはミス・コンなどという嘘の祭りで女の尊厳を破壊されれば、たとえ殺してでも長を引きずり下さなければならない。
だが町長の守りは硬い。魔術師が常に守りを固めているおかげで暗殺はできそうにないし、法で崩すにも”平等法”は大義名分だけは立派で、どうにも隙がない。選挙で蹴落とそうにも票集めは盤石である。
そこで、呪術師を雇うというイリーガルな方法を選んだ。それも並の術者では感じ取ることのできない、ごく微細な召喚術を使った。(召喚術とは、特定の者だけを呼び寄せる一種の呼び声だ。広い暗闇で明かりを灯し、ここに来てくれと叫ぶ行為に近い)
ライブラはそれに反応し、依頼者である暗殺首謀者と通信した。どうやったかは教えてくれなかったが、呪術では遠方と言語のやりとりができるらしい。
そこで彼女の考えた作戦は、レオをぶつけることだった。初回の偽ミス・コンからちょうど一年——第二回が行われるタイミングでレオを連れて行き、町長を殺すよう誘導することだった。
「まさかここまでうまくいくとは思わなかったねぇ」
もしはじめから温泉に行こうと誘えばレオは怪しむ。だからあえてレグルスだけを望み、レオたちを拒む素振りを見せたという。
「だから宿の予約が七人だったんだね」
と、ぼくは訊いた。
「そうさね。あんたら全員呼ぶつもりだったのさ。ま、二匹来なかったのは残念だけどねぇ」
ふーん、すごいなぁ。ぼくだったらとにかく来てって言っちゃいそうだ。他人の性格を予測して嘘をつくなんて、ちょっとやそっとでできることじゃない。
「で、分け前は?」
とレオが言った。
「わたしを仕事で使ったんだ。その分金を分けるべきだろう」
「はぁ? なに言ってんだいクソブス。あんたはあたしの術にはまったんだよ。分け前がほしければ仕事の前に言うんだね」
「ならわたしもレグルスもタダ働きか。割に合わんな」
レオは不機嫌にふんぞり返った。言い返さないってことは、理はライブラにあるらしい。
「いいじゃないさね。温泉はよかったろ? それに宿代も食事代もタダさ」
「あれは依頼人持ちだろう? まったく、気に食わん」
あーあ、レオがふてくされちゃった。最強無敵の知恵者を自負しているから、いくら相手が一流とはいえ、手のひらの上で転がされたのが許せないんだろう。ぼくは「まあまあ」となだめたが、レオは「フン」とそっぽを向いて気が済まなかった。
そこに、レグルスが言った。
「よろしいじゃありませんか。旅行がたのしめたと思えば」
「だがわたしは猿回しの猿にされたんだぞ。このわたしがだ」
「ご承知のうえでだまされたのでしょう? ライブラ様の仕事を覗き見るために。でなければ賢者たるレオ様がタダ働きなどするはずがございません」
「……」
レオはふぅむと考え直すような顔をした。そしてむっくり上体を起こして、
「こら、みなまで言うな。わたしがわざとだまされたことがライブラにバレるではないか」
とニヤニヤしながら言った。あ、嘘だな。レグルスの言うことがそれっぽいから都合よく合わせたんだ。レオはこういうところ、けっこうわかりやすいからなぁ。
「ま、実際たのしかったぞ。温泉はただの風呂より断然よかったし、バカが死ぬところも見れたしな」
レオは機嫌を直し、言った。
「あの町長、あれでうまくいくと思ったら大間違いだ。平等などと聞こえのいいきれいごとばかり並べたところで、破綻する未来しか見えんというのに」
「そうさねぇ。今回の依頼がなくても、いずれ街が滅んでおしまいだったろうねぇ」
ライブラもレオの意見に同意した。どういうことだろう。ぼく政治にはちょっと疎いんだ。
「いいか、アーサー。そもそもこの世に平等などというものは存在せん」
へ? そうなの?
「たとえばおまえ、真の姿のレグルスと戦って勝てるか?」
ううん、絶対無理だね。たとえぼくが千人いても無理だろう。
「そうだろう。いまの例は極端だが、この世にまったくおなじ人間などおらんし、生まれた瞬間からどうやっても差が生じる。それをまったくおなじに扱おうなどと不可能だ。やれることは”優遇”だけだ」
優遇?
「あの町長がやったのは優遇だ。それも片方を下げて片方を優遇するという、最悪の優遇だ。バカは、不満を持つ人間を優遇することを”平等”と呼ぶ。そして権力者にとってそれは大きな得票の元となるんだ」
つまり……どういうこと?
「まだわかんないのかい?」
ライブラが言った。
「あんたぐらいのバカをみんなとおなじに合わせるのは無理だろ? だからバカには特別に金を与えて、まともな人間から金を奪う。たとえるなら、こういうことをあの町長はやったんだよ」
それはとんでもない話だ。……って、ぼくはバカじゃないよ!
「まあ、優遇も一切なしでは困るんだがな。手足のない者や、一家の稼ぎ頭が倒れてしまったときなど、優遇すべきものはままある。しかしどうあっても平等などというものは存在せんし、平等という言葉を使うヤツはバカか詐欺師のどちらかだ」
ううん……そんなもんかなぁ。レオの言うことはどうにも冷たい気がする。ぼくはもっと、みんな並んで仲よくおんなじがいいと思うけどなぁ。
「いいのさ、不平等で」
ライブラは後頭部で手を組み、言った。
「みんなおんなしじゃつまんないだろ? だから自分の長所を伸ばして、自分よりすごいと思うものを目指して、精一杯努力する。だから人間ってのはおもしろいのさぁ」
……そっか。よくわかんないけど、つまりそういうことなんだね!
「上を向いて生きることさね。ブスに生まれたからってなにもしなけりゃ、よけいブスになるだけさ。ろくに努力もせず不満ばかり言って、うまくいかないことを生まれや環境のせいにしてると、ああいう町長にだまされて、道具にされちまうんだよ」
なるほどねぇ。つまりそういうことか~。なーるほどねぇ~。
「ま、こころの隙につけこむのは呪いの基本さね。あんたもせいぜい不満や欲望につけこまれないよう気をつけなよ」
うん、そうするよ!
「さて、それじゃあたしはそろそろ帰るとするかねぇ。またそのうち買い物に来るよ」
ライブラはグラスを飲み干し、立ち上がった。そして庭でたむろしていた愛馬の鞍に手をかけた。そのとき、
「待て、アホヅラ」
「なんだい、クソブス」
レオが止め、ライブラが振り返った。
「やはりタダ働きでは割に合わん。報酬をもらおう」
「はぁ~……まさかあんたがそんな聞き分けのないヤツだと思わなかったねぇ」
ライブラはメンドくさそうに頭を掻いた。
「あのねぇ、呪術師はひとを操るのが仕事だよ。あんたは操られたんだよ。協力したんじゃなくて、あたしの道具になったんさね。それでどうして報酬がもらえるってんだい」
「だがそれではわたしのプライドが許さん」
「なにがプライドだい。敗者に語る言葉はないよ。あんた戦いで殺されたあとでも文句言うつもりかい?」
「金はいい。温泉を教えろ」
「は?」
ライブラはポカンとした。
「おまえ、週に二、三度温泉に行くと言っていたな。つまりこの近くにいい温泉があるんだろう。連れてけ。紹介しろ」
レオったらなにを言ってるんだろう。報酬に温泉を教えろなんて、そんなに温泉が気に入ったのかな?
「はっ、はははははは!」
ライブラは突如ゲラゲラ笑い出した。
「そうかい、あんたそんなに温泉に行きたいのかい!」
「ああ。しかし神の小径は閉じてしまったし、もうあのホテルには行けんだろう」
「そうかいそうかい、しょうがないねぇ!」
ライブラは満面の笑みで馬を引き、わざわざレオの目の前まで戻って、
「こういっちゃなんだけど、あたしゃ随一の温泉マニアさ。天然、人口、自然の露天と、ここいらの湯はぜんぶ知り尽くしてるさね。そうかい、報酬に湯を教えてほしいかい」
「まあ、おまえの言う通り、わたしは操られていたわけだから、いやだと言われればそれまでだが……」
「いいさね! 連れてってあげるよ!」
ライブラはバシンとテーブルを叩き、跳ねるような声で言った。
「ただし今日は仕事の準備があるから無理だよ! 週末以降ならいつでも行けるけど、どうだい!?」
「ふむ……空けておこう」
「そうかい! したらこんどはデネボラとゾスマも連れてくるんだよ! 温泉のよさを徹底的に教えてあげるんだからね!」
それじゃ、週末だよ! と言ってライブラは去っていった。すごいテンションだったなあ。いつも気だるげで殺伐としているライブラが、あんなにも大はしゃぎするんだもんなぁ。
「フフフ……案外かわいいヤツめ」
えっ?
「やられっぱなしでは、わたしの気が済まんからなぁ」
どういうこと?
「ま、実際温泉はいいものだしな。わたしは体面を保てたし、あいつもよろこんだし、万事うまくいったというところだ」
うむむ? なにを言ってるのか全然わかんないや。
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