143 / 178
第二十話 アルテルフ二十四時
アルテルフ二十四時 一
しおりを挟む
人生は荒波の連続です。ふつうに暮らしているのに突然トラブルに襲われ、場合によっては職を失うこともあります。
うちもけっこう大変だったそうです。家がなくなってしまうような大事件がなんどもあったらしく、いまも借金と戦っています。
しかし父はくじけませんでした。家長としての責任でしょう。でも、わたしは思うのです。もし母がいなければ、いまごろどうなっていたのだろうと。母が支えてくれたから、父は立っていられたんじゃないのかと。
女は偉大です。妻よりも母よりもありがたいものはありません。男が一丁前にでかい顔して歩けるのは、その影に女の苦労があるからです。丈夫はみんな口を揃えて「母ちゃんには頭が上がらない」と言います。
おいしい食事、あたたかいお風呂、きれいな布団で寝られるのは、いったいだれのおかげでしょう。わたしも母に感謝しないといけません。なにせこどおじですから。
第二十話 アルテルフ二十四時
——チチチ、チチチチ。
窓の外から小鳥のさえずりが聞こえる。
時計の針はきっかり七時。いつも通り一分のずれもなく目が開く。
「うん……ん……」
朝か……
あたしは布団を巻き込むように横になり、カーテンから漏れる光に背を向けた。
顔に触れる空気が冷たい。昼間は花が咲き乱れるくらいあたたかいけど、朝晩だけはまだ冷える。夜はいいけど、寝起きのときが一番つらい。
このまま眠りこけてしまいたい。二度寝できたらどんなに楽だろう。
でも半からミーティングがある。毎日の家事がある。ほかの二匹ならまだしも、長のあたしが寝坊なんてできるはずがない。
あー、ぬくい。
セールで買ったふかふかのパジャマ、すごくあったかい。毛布もシーツもふわっふわ。羽毛布団はちょっといいヤツ。ここからスパッと出られるのは、よっぽど意志の強いひとか、こころを抜かれた使い魔くらいだと思う。
ゼータクな暮らししてるわよねぇ。野生のころじゃ考えらんない。料理もおいしいし、いまじゃ生肉なんて食べる気がしない。ま、鷹と人間じゃ味覚が違うからしょうがないんだろうけど。あたしの舌も肥えたもんだわ。
それにしても不思議よね。毎朝かならず七時に起きるんだから。日の出、日の入りじゃなくて、人間の作った数字でよ。しかも「あしたは早いから六時に起きなきゃ」って決めたら本当にそうなる。おもしろいわよねぇ、人間の体って。鳥も文字が読めればそうなるのかしら。
…………もう七時八分。
寝起きは時間が経つのが異常に早い。どうしてだろう。たのしいときや、集中してるときはすぐに時間が経つ。逆につまんないときは遅く感じる。待機時間なんかとくにそう。これも人間になってから思うようになった。
時計を手に入れたから? 時計がなければ気づかなかった? それとも人間の体だから?
あー、あれかな? ひとと付き合うからかな? 自分一匹だと自分のペースで生活するけど、人間は群れるからなー。相手に合わせて行動したり、時間に縛られたり、そうすると時間を感じるのかも。
……うーん、結局“時計”かな? でもあのころも陽の動きは感じてたし…………数字で分も秒も明確にすると、早い遅いをより強く感じるのかな? てゆーかそもそも、なんで状況によって時間の感じ方が違うの?
……え? もう十四分? 早くない?
はぁ~、もうちょっとゆっくりしてたかったのに…………
…………
…………
………………起きなきゃ。
「んんっ、んーー!」
あたしは上に思いっきり腕を伸ばし、
「……はぁっ」
一瞬脱力して、布団をババっとめくり上げた。
「よいしょっ!」
気合いのひと声で起き上がる。ベッドから降りて、カーペット脇のスリッパを履いて、ドアを開ける。
廊下を歩いてトイレに直行。朝一番のおしっこをささっと済ませて、洗面台で二度顔を洗い、目ヤニが取れたのを確認してタオルで拭く。
軽く髪をとかしながら、鏡を見つめて健康チェック。よしっ、健康! 今日もかわいい!
「あー、さむさむ!」
寒いと勝手に声が出る。だれに言ってんだか。眠気も覚めたしさっさと行こう。廊下は寒いよぉ!
「おはよ~~~~」
あたしは扉を開け、ミーティングルームに顔を出した。
ここはあたしたち使い魔の集合場所。広さはベッド三つ分くらいで、部屋の真ん中に背の高いテーブルと、回転する椅子が四つある。東に大きな窓があって朝から明るい。
「おはよう、アルテルフ」
テーブル上に並んだ三つのカップにコーヒーを注ぐレグルスが、朝日をほほに、ちらりと言った。カーテンは全開で、南面に設置されたストーブがパチパチと火花の音をこもらせている。
どっちもこの子の仕事。別に命じたわけじゃないけど、この子はいつも早起きして部屋の準備を整えてくれる。朝のコーヒーはもちろん、すでに朝食も用意してあった。
「おはよー」
バタートーストをもしゃもしゃかじりながらゾスマが言った。この子はとっくに席に着いて、相変わらずのへらへら笑顔でぼけっとしてる。
もうちょっと気が利かないものかしら。先輩のレグルスがいろいろやってるってのに、いっつも遅く来てのんびりしてるのよね。まあ、仕事はしっかりやるからいいけどさ。
「あったか~」
あたしはいそいそとストーブの前でしゃがみ、バターの香りを感じながら火に当たった。
「アルテルフは二枚でいいか?」
「うん。それとゆでたまごある?」
「たまごは……ふたつあるな。じゃあゾスマとアルテルフで食べてくれ」
「うーい」
朝のあたしはテンションが低い。というかレグルスが寝起きのくせに元気すぎるのよね。体温が高いから? この子、寝るとき裸だしね。冬でも肌着しか着ないし。
今朝だってすごい薄着。下は色気のない地味~なショーツで、上は白いキャミソール一枚きり。ブラしてないからぷっくり乳首が浮いちゃって、めちゃくちゃセクシーでエロティック。破廉恥が苦手なクセしてよくこんな格好でいられるわ。変なとこ鈍いのよね、この子。ここには女しかいないからいいけどさ。
「それにしてもゾスマ今日は早いじゃない。どしたの?」
あたしはぼーっと火を見ながらゾスマに訊いた。この子があたしより早く来るなんて年に数えるほどしかない。
「レグルスのバタートーストが食べたかったから」
「それで早起きしたの」
「うん。昨夜からずっとたのしみだったんだ」
はぁ~、呆れた。もうちょいマトモな理由でしっかりしてくんないかな。ゾスマとデネボラは食べることばっかなんだから。
「あはは、光栄だな。わたしなんかの料理でよろこんでくれるなんて。そんなに食べたければいくらだって作るぞ」
「じゃあ、あと二枚」
「よしきた」
よーく食べること。ま、あたしたち使い魔は食べなきゃいけないんだけどさ。
「アルテルフ、ごめん」
「あ、はいはい」
あたしはひょいと体を横に曲げ、のらりと避けた。レグルスがトーストを網に乗せ、ストーブに入れる。トーストの表面にはごろっとバターのかけらが四つ乗り、これが熱で溶けてパンに染み込む。
わぁ、いいにおい。あたしも食べよ。
「いただきまーす」
あたしは席に着き、まだあたたかいトーストを手に取った。全体はカリカリで、端の方はやや焦げたところもある。だけど白い面はバターのあとがどっぷりで、濃いところはじゅわっじゅわ、薄いところは絶妙にパリパリしてる。
その、頭の悪そうなバター溜まり目がけて最初のひと口。
——ぱりっ、じゅわあっ。
うわっ、これこれ。濃厚なバターの塩気。一瞬で口の中がバカになる。さらに舌を転がして、黄色い部分を直接舐めると、まともな味覚が吹っ飛んでバカ一直線。だけどこれが最ッ高においしい。
——ずずっ、ずー。
あ~~~~、苦いコーヒーがいい~~~~。
「レグルスのトーストおいしいね」
「毎度ながらたまんないわ」
「ただバター乗せて焼いただけだぞ。デネボラに比べたらなんてこないだろう」
たしかにデネボラと比べたらレベルは低い。あの子の料理は手間暇かかってるだけあって、複雑で深みがあって、一流レストランと肩を張るほどの味わいがある。
だけどトーストはこれくらいがいい。雑で不器用で大味なレグルスの調理が、一流を超える無粋な味を引き出している。
「あはは、ほめられてるってことでいいのかな?」
「もーちろんっ」
あたしは話しながらサクサクパリパリ一枚目をたいらげた。二枚目に入る前に、ゆでたまごを割りにかかる。そうしていると、
「あ、半だよ」
ゾスマが時計を指差し言った。ミーティングの時間だ。
ほんっと、朝は時間の流れが早いわよねぇ。どうしてこうゆっくりできないのかしら。ま、いつものことだけどさ。
「それじゃーミーティングはじめまーす。レグルスも準備できたら席着いてー」
うちもけっこう大変だったそうです。家がなくなってしまうような大事件がなんどもあったらしく、いまも借金と戦っています。
しかし父はくじけませんでした。家長としての責任でしょう。でも、わたしは思うのです。もし母がいなければ、いまごろどうなっていたのだろうと。母が支えてくれたから、父は立っていられたんじゃないのかと。
女は偉大です。妻よりも母よりもありがたいものはありません。男が一丁前にでかい顔して歩けるのは、その影に女の苦労があるからです。丈夫はみんな口を揃えて「母ちゃんには頭が上がらない」と言います。
おいしい食事、あたたかいお風呂、きれいな布団で寝られるのは、いったいだれのおかげでしょう。わたしも母に感謝しないといけません。なにせこどおじですから。
第二十話 アルテルフ二十四時
——チチチ、チチチチ。
窓の外から小鳥のさえずりが聞こえる。
時計の針はきっかり七時。いつも通り一分のずれもなく目が開く。
「うん……ん……」
朝か……
あたしは布団を巻き込むように横になり、カーテンから漏れる光に背を向けた。
顔に触れる空気が冷たい。昼間は花が咲き乱れるくらいあたたかいけど、朝晩だけはまだ冷える。夜はいいけど、寝起きのときが一番つらい。
このまま眠りこけてしまいたい。二度寝できたらどんなに楽だろう。
でも半からミーティングがある。毎日の家事がある。ほかの二匹ならまだしも、長のあたしが寝坊なんてできるはずがない。
あー、ぬくい。
セールで買ったふかふかのパジャマ、すごくあったかい。毛布もシーツもふわっふわ。羽毛布団はちょっといいヤツ。ここからスパッと出られるのは、よっぽど意志の強いひとか、こころを抜かれた使い魔くらいだと思う。
ゼータクな暮らししてるわよねぇ。野生のころじゃ考えらんない。料理もおいしいし、いまじゃ生肉なんて食べる気がしない。ま、鷹と人間じゃ味覚が違うからしょうがないんだろうけど。あたしの舌も肥えたもんだわ。
それにしても不思議よね。毎朝かならず七時に起きるんだから。日の出、日の入りじゃなくて、人間の作った数字でよ。しかも「あしたは早いから六時に起きなきゃ」って決めたら本当にそうなる。おもしろいわよねぇ、人間の体って。鳥も文字が読めればそうなるのかしら。
…………もう七時八分。
寝起きは時間が経つのが異常に早い。どうしてだろう。たのしいときや、集中してるときはすぐに時間が経つ。逆につまんないときは遅く感じる。待機時間なんかとくにそう。これも人間になってから思うようになった。
時計を手に入れたから? 時計がなければ気づかなかった? それとも人間の体だから?
あー、あれかな? ひとと付き合うからかな? 自分一匹だと自分のペースで生活するけど、人間は群れるからなー。相手に合わせて行動したり、時間に縛られたり、そうすると時間を感じるのかも。
……うーん、結局“時計”かな? でもあのころも陽の動きは感じてたし…………数字で分も秒も明確にすると、早い遅いをより強く感じるのかな? てゆーかそもそも、なんで状況によって時間の感じ方が違うの?
……え? もう十四分? 早くない?
はぁ~、もうちょっとゆっくりしてたかったのに…………
…………
…………
………………起きなきゃ。
「んんっ、んーー!」
あたしは上に思いっきり腕を伸ばし、
「……はぁっ」
一瞬脱力して、布団をババっとめくり上げた。
「よいしょっ!」
気合いのひと声で起き上がる。ベッドから降りて、カーペット脇のスリッパを履いて、ドアを開ける。
廊下を歩いてトイレに直行。朝一番のおしっこをささっと済ませて、洗面台で二度顔を洗い、目ヤニが取れたのを確認してタオルで拭く。
軽く髪をとかしながら、鏡を見つめて健康チェック。よしっ、健康! 今日もかわいい!
「あー、さむさむ!」
寒いと勝手に声が出る。だれに言ってんだか。眠気も覚めたしさっさと行こう。廊下は寒いよぉ!
「おはよ~~~~」
あたしは扉を開け、ミーティングルームに顔を出した。
ここはあたしたち使い魔の集合場所。広さはベッド三つ分くらいで、部屋の真ん中に背の高いテーブルと、回転する椅子が四つある。東に大きな窓があって朝から明るい。
「おはよう、アルテルフ」
テーブル上に並んだ三つのカップにコーヒーを注ぐレグルスが、朝日をほほに、ちらりと言った。カーテンは全開で、南面に設置されたストーブがパチパチと火花の音をこもらせている。
どっちもこの子の仕事。別に命じたわけじゃないけど、この子はいつも早起きして部屋の準備を整えてくれる。朝のコーヒーはもちろん、すでに朝食も用意してあった。
「おはよー」
バタートーストをもしゃもしゃかじりながらゾスマが言った。この子はとっくに席に着いて、相変わらずのへらへら笑顔でぼけっとしてる。
もうちょっと気が利かないものかしら。先輩のレグルスがいろいろやってるってのに、いっつも遅く来てのんびりしてるのよね。まあ、仕事はしっかりやるからいいけどさ。
「あったか~」
あたしはいそいそとストーブの前でしゃがみ、バターの香りを感じながら火に当たった。
「アルテルフは二枚でいいか?」
「うん。それとゆでたまごある?」
「たまごは……ふたつあるな。じゃあゾスマとアルテルフで食べてくれ」
「うーい」
朝のあたしはテンションが低い。というかレグルスが寝起きのくせに元気すぎるのよね。体温が高いから? この子、寝るとき裸だしね。冬でも肌着しか着ないし。
今朝だってすごい薄着。下は色気のない地味~なショーツで、上は白いキャミソール一枚きり。ブラしてないからぷっくり乳首が浮いちゃって、めちゃくちゃセクシーでエロティック。破廉恥が苦手なクセしてよくこんな格好でいられるわ。変なとこ鈍いのよね、この子。ここには女しかいないからいいけどさ。
「それにしてもゾスマ今日は早いじゃない。どしたの?」
あたしはぼーっと火を見ながらゾスマに訊いた。この子があたしより早く来るなんて年に数えるほどしかない。
「レグルスのバタートーストが食べたかったから」
「それで早起きしたの」
「うん。昨夜からずっとたのしみだったんだ」
はぁ~、呆れた。もうちょいマトモな理由でしっかりしてくんないかな。ゾスマとデネボラは食べることばっかなんだから。
「あはは、光栄だな。わたしなんかの料理でよろこんでくれるなんて。そんなに食べたければいくらだって作るぞ」
「じゃあ、あと二枚」
「よしきた」
よーく食べること。ま、あたしたち使い魔は食べなきゃいけないんだけどさ。
「アルテルフ、ごめん」
「あ、はいはい」
あたしはひょいと体を横に曲げ、のらりと避けた。レグルスがトーストを網に乗せ、ストーブに入れる。トーストの表面にはごろっとバターのかけらが四つ乗り、これが熱で溶けてパンに染み込む。
わぁ、いいにおい。あたしも食べよ。
「いただきまーす」
あたしは席に着き、まだあたたかいトーストを手に取った。全体はカリカリで、端の方はやや焦げたところもある。だけど白い面はバターのあとがどっぷりで、濃いところはじゅわっじゅわ、薄いところは絶妙にパリパリしてる。
その、頭の悪そうなバター溜まり目がけて最初のひと口。
——ぱりっ、じゅわあっ。
うわっ、これこれ。濃厚なバターの塩気。一瞬で口の中がバカになる。さらに舌を転がして、黄色い部分を直接舐めると、まともな味覚が吹っ飛んでバカ一直線。だけどこれが最ッ高においしい。
——ずずっ、ずー。
あ~~~~、苦いコーヒーがいい~~~~。
「レグルスのトーストおいしいね」
「毎度ながらたまんないわ」
「ただバター乗せて焼いただけだぞ。デネボラに比べたらなんてこないだろう」
たしかにデネボラと比べたらレベルは低い。あの子の料理は手間暇かかってるだけあって、複雑で深みがあって、一流レストランと肩を張るほどの味わいがある。
だけどトーストはこれくらいがいい。雑で不器用で大味なレグルスの調理が、一流を超える無粋な味を引き出している。
「あはは、ほめられてるってことでいいのかな?」
「もーちろんっ」
あたしは話しながらサクサクパリパリ一枚目をたいらげた。二枚目に入る前に、ゆでたまごを割りにかかる。そうしていると、
「あ、半だよ」
ゾスマが時計を指差し言った。ミーティングの時間だ。
ほんっと、朝は時間の流れが早いわよねぇ。どうしてこうゆっくりできないのかしら。ま、いつものことだけどさ。
「それじゃーミーティングはじめまーす。レグルスも準備できたら席着いてー」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
冴えない建築家いずれ巨匠へと至る
木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」
かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。
安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。
現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。
異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。
背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)
MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。
しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。
母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。
その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。
純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。
交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
青春
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる