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第二十話 アルテルフ二十四時
アルテルフ二十四時 二
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あたしたち三匹は定位置に着き、朝食を食べながらミーティングを開始した。
あたしとレグルスは入り口側の席で、ゾスマとデネボラは窓側の席。ミーティングは朝晩の二回。夜はデネボラも集まるけど、朝は絶対起きないから三匹だけで行う。
「それじゃ、報告あるひと~」
司会は当然、長のあたし。まずは昨夜までに発見した問題などを報告し合う。たいがいは館のどこが破損したとか、日用品がなくなりそうとか、そんな感じ。
「わたしはなしだ」
コーヒーを片手にレグルスが言った。
「わたしも」
ゾスマもトーストをかじりながら言った。
「そう。じゃあトラブルはなしね」
あたしはうなずくようにコーヒーをすすった。よかった、なにもなくて。なにかあるとローテーションに支障が出て困るのよね。とくに今日みたいに詰まってる日は最悪。ただでさえ使い魔は振り回されるってのに、修理だ改装だってなったらてんてこ舞いだもの。
「そしたら今日の予定、確認~」
あたしたちは北面の壁にかかった黒板に目を向けた。そこには使い魔三匹の予定が二週分書かれている。ボードは上下二列に線で分かれていて、一週間が終わるとそこを消して、翌々週の予定をあたしが調整して書き込むようにしている。
「まずあたしは、洗濯、清掃、午後買い出し」
これは自分で発言する。その方がミーティングっぽいでしょ?
次はレグルス。
「わたしは清掃と、布団交換、それと午後買い出しだ」
そしてゾスマ。
「わたしはお風呂と清掃と水交換だね」
「はい、みんな確認したねー。そしたら今日の流れ話すからー」
あたしはボードの下にある棚からメモを取り出し、席に戻った。これは今日の予定をまとめたもの。昨夜のうちにあたしが流れを想像して作っておいた。
これがあるのとないのじゃ話が違う。広いレオ様の館で家事をするとなると、ある程度順序を組んで仕事しないときっちり終わんない。時間を守るには最短ルートで適切に動く必要がある。
「まずいつも通り、水交換は朝イチね。そのあいだ、あたしとレグルスは洗濯関係を進めて、九時半には終わらせる。そしたらレグルスはお風呂に水溜めまでしてもらって、あたしはゾスマと小リビングから掃除をはじめる。今日は週末だから、いつもの順番で全部屋掃除するんでよろしく」
「そうか、今日は週末か」
レグルスはちょっぴり顔をほころばせた。あした休みだって思い出したのね。最近この子ぬいぐるみ作りに目覚めたみたいで、暇さえあれば針いじってるし、休みがよっぽどうれしいみたい。
「そー。だからきっちりやって、きっちり休も」
「よーし、任せておけ!」
あらあら、張り切って力こぶ叩いたりして。どんなもの作ってるのかしら。こんど覗き見してやろー。
「それじゃ続きね。とりあえずレグルスはお風呂終わったらレオ様たちのシーツ。寝てたら叩き起こしてでもやって。じゃないとあした干すことになるから。そんであたしたちはお昼まで生活エリアを掃除。午後イチはゾスマにお風呂沸かしてもらって、あたしとレグルスは買い出しに出かける。四時には戻って、全員で洗濯物取り込み。あとは掃除で、メインフロアはきっちりと終わらせる。使ってないとこは簡単で、最悪やんなくてもいいから」
あたしはひとしきり説明を終えて、
「頭入った?」
「ああ、自分の分は間違いなく」
「わかんなくなったら見にくるよ」
「おけ。もしくはあたしに訊いて。ま、どーせ予定通りにはいかないけど」
そう言ってあたしたちは笑った。そう、予定通りにはいかない。いくはずないのよね。だってあたしたち使い魔は振り回されるのが仕事だから。
「さー、五十分だ。気合い入れていこー!」
「おー!」
朝のミーティングが終わり、各自部屋に戻って身だしなみを整える。仕事開始は八時から。厳密に決めてるわけじゃないけど、ある程度きっちりしとかないと、なあなあになっちゃうからね。
そんなわけで部屋に戻ってお着替えタイム。姿見の前で裸になって、軽いストレッチをしながら全身の健康をチェックする。
……うん、問題なし! お肌すべすべ、血色良好、今日もあたし、すっごくかわいい! ショーツを履き直してさらっと再確認。う~ん、たいがいの男は釘付けだわ。
「さてとっと」
クローゼットを開き、服を選ぶ。いつもおなじ服だと飽きるし、昼夜の寒暖差を考えると上着を羽織れるスタイルがいいから、今日はこの胸元の開いた半袖シャツに、たまにはズボンを履いて、腰に上着を巻き付けて……うん、いい感じ! 髪を縛ってツインテール。ポーズを決めて、最高にかわいいアルテルフちゃん爆誕!
「ぴょお~!」
あたしはドアを飛び出して気持ちよく仕事へと向かった。コーデが決まるとテンション上がるわー。早くレオ様起きてこないかなー。
「あ、アルテルフ今日はいつもと違うね」
早速廊下でゾスマと出会った。この子は台車に水桶を乗せて、各部屋のものと交換しに行く途中だった。
「どう、似合う?」
「うん、すっごくかわいいよ」
「わーい、ありがとー!」
この子、無愛想に見えてけっこう気が利くのよねー。あとでお小遣いあげようかしら。
それにしてもこの子はおしゃれしないわよねー。いっつもおなじようなシャツに、おなじようなズボン。袖と裾の長さが季節によって変わるのと、あとは上着を羽織るかどうかくらいで、アクセサリーなんか絶対つけない。クモは着飾りやダンスで求愛するって聞くけどメスはしないのかしら。ま、シンプルなのもかわいくていいけど。
「じゃあ水替え行ってくるね。終わったらリビングから掃除してくね」
「はいはいお願いねー」
「じゃあまた」
「またー」
そう言って別れて、あたしは倉庫からかご台車を拾い、みんなの部屋を回った。うちは洗濯物をドアの横に置いておく決まりになっている。扉を開けて、あたしの服とパジャマ、レグルスの服とインナー、ゾスマの服とパジャマ、デネボラの服とエプロンを回収。あとは二階の寝坊助どもだけど……ちゃんとしてるかしら。
あたしは空のかごを持ってあるじの寝室の前に立ち、無意味なノックをして、
「入りますよー。よろしいですねー」
数秒待機。今日も返事なし。
「失礼しまー」
と言ってドアを開ける。スースーカーカー寝息が聞こえ、キングサイズのベッドから栗の花のにおいとメスの淫気が漂ってくる。
「くっさ」
いっつもこう。毎晩毎晩お盛んで、よくもまあ飽きないこった。レオ様の欲も底なしだけど、こいつの種もどーかしてるわ。魂のほとんどをキンタマに使ってるんじゃない? 短小包茎のくせに量だけは立派なんだから。
……なんて鼻つまんでる場合じゃない。仕事だ仕事。あーあー、またこいつら脱ぎ散らかして。あるじなんだから決まりを守ってくださいな。
ベッド周りに散らばった衣類をかごにぶち込んでいく。アーサー様のシンプルな衣服、長い白のニーソックス、ドスケベな黒下着、白のミニスカート……あー、なるほどね。昨夜はナースさんでしたか。たっぷり患者さんをケアしたことでしょう。満足そうに寝てるわ。さぞ献身的な看護を受け——
……って、うわ! やだ、ねっとねと! しまった~、ここに出したか~。暴発かしら。なんにしても朝からやな気分。ばっちいばっちい。さっさと洗濯しちゃお。
あたしは一階に降りて汚物を台車のかごに移し、離れの浴室に急いだ。浴槽には水がたっぷり残っている。これをふたつの広い桶にすくって外に出て、生地が硬いのとやわいのに分けて入れる。
やわい方はもみ洗い。灰を入れて汚れを丁寧にもみもみ。硬い方は踏み石に乗せて踏む! こんにゃろこんにゃろ! 汚いザーメンぶち撒けて、ちょっとは洗う方の身にもなれ! ちり紙があるでしょーがー!
「お、やってるな」
「あ、レグルス」
荷車に布団を集めてレグルスがやってきた。三匹分のシーツ、掛け布団、枕カバーが乗っている。デネボラは馬の姿で厩で寝るから滅多に布団を洗わない。
「ズボン姿のアルテルフは久しぶりだな。腰巻きがすごく似合ってるよ」
「ありがとっ」
「ところで水は残ってるか?」
「洗うの?」
「あ……わ、わたしのだけな」
レグルスはちょっぴりぎこちなく、
「み、みんなのはいいんだが、わたしのはちょっとにおって……抱き枕とシーツを洗おうと思って……あはは」
あー、そーゆーことね。いっぱい汚しちゃったんだ。この子、ほかのひとの前だと破廉恥だなんだって騒ぐけど、けっこう好き者だからねー。あたし知ってるんだから。あんたが抱き枕を相手に夜な夜などんなことしてるのか。そりゃ~週にいっぺんくらいは洗わないとよねー。
「な、なんだ……そんなニヤニヤして」
「ううんー、別にー」
ニタ~~っ。
「わたしはただ、布団を洗おうと……はわわわ」
うわー、しどろもどろしてかわいー。いまさら恥ずかしがらなくったっていいのにー。あたしにはぜんぶお見通しなんだからさー。
「と、とにかく水もらっていいか!?」
「ほいほい、桶一杯分残しといてくれればいいよー」
「すっ、すまないっ」
レグルスはぴゅーっと逃げるように浴室へと入っていった。難儀な子ねぇ。好きなのに苦手だなんて。
きっとレオ様が混じったせいよね。使い魔はあるじの魂が混ざるから、どうしたって精神に影響を受ける。
たぶん元は潔癖なのに、レオ様の好色を受け継いで両方が同居しちゃってる。これで攻めっ気まで移ってたらどうなってたのかしら。なんせあんなマゾそうそういないもの。サドでマゾとか、どんなプレイするんだっつーの。鏡を見ながら自分をムチ打ち? あははは! バッカじゃない!?
「わ、笑わないでくれ! アルテルフならわかってくれるだろう!?」
あー、違う違う。シーツのこと笑ったんじゃないの。ちょっと考え事しただけ。
……でもおもしろいから笑ったげよ!
「あんた気をつけなさいよー! 夜な夜な名前呼んでるの漏れてるからねー!」
「はわわわわわ!」
あははははは! 慌ててる慌ててる! ほんっとかわいいんだから。これじゃーちょっかい出すのもしょうがないわよねえー。あはははー!
あたしとレグルスは入り口側の席で、ゾスマとデネボラは窓側の席。ミーティングは朝晩の二回。夜はデネボラも集まるけど、朝は絶対起きないから三匹だけで行う。
「それじゃ、報告あるひと~」
司会は当然、長のあたし。まずは昨夜までに発見した問題などを報告し合う。たいがいは館のどこが破損したとか、日用品がなくなりそうとか、そんな感じ。
「わたしはなしだ」
コーヒーを片手にレグルスが言った。
「わたしも」
ゾスマもトーストをかじりながら言った。
「そう。じゃあトラブルはなしね」
あたしはうなずくようにコーヒーをすすった。よかった、なにもなくて。なにかあるとローテーションに支障が出て困るのよね。とくに今日みたいに詰まってる日は最悪。ただでさえ使い魔は振り回されるってのに、修理だ改装だってなったらてんてこ舞いだもの。
「そしたら今日の予定、確認~」
あたしたちは北面の壁にかかった黒板に目を向けた。そこには使い魔三匹の予定が二週分書かれている。ボードは上下二列に線で分かれていて、一週間が終わるとそこを消して、翌々週の予定をあたしが調整して書き込むようにしている。
「まずあたしは、洗濯、清掃、午後買い出し」
これは自分で発言する。その方がミーティングっぽいでしょ?
次はレグルス。
「わたしは清掃と、布団交換、それと午後買い出しだ」
そしてゾスマ。
「わたしはお風呂と清掃と水交換だね」
「はい、みんな確認したねー。そしたら今日の流れ話すからー」
あたしはボードの下にある棚からメモを取り出し、席に戻った。これは今日の予定をまとめたもの。昨夜のうちにあたしが流れを想像して作っておいた。
これがあるのとないのじゃ話が違う。広いレオ様の館で家事をするとなると、ある程度順序を組んで仕事しないときっちり終わんない。時間を守るには最短ルートで適切に動く必要がある。
「まずいつも通り、水交換は朝イチね。そのあいだ、あたしとレグルスは洗濯関係を進めて、九時半には終わらせる。そしたらレグルスはお風呂に水溜めまでしてもらって、あたしはゾスマと小リビングから掃除をはじめる。今日は週末だから、いつもの順番で全部屋掃除するんでよろしく」
「そうか、今日は週末か」
レグルスはちょっぴり顔をほころばせた。あした休みだって思い出したのね。最近この子ぬいぐるみ作りに目覚めたみたいで、暇さえあれば針いじってるし、休みがよっぽどうれしいみたい。
「そー。だからきっちりやって、きっちり休も」
「よーし、任せておけ!」
あらあら、張り切って力こぶ叩いたりして。どんなもの作ってるのかしら。こんど覗き見してやろー。
「それじゃ続きね。とりあえずレグルスはお風呂終わったらレオ様たちのシーツ。寝てたら叩き起こしてでもやって。じゃないとあした干すことになるから。そんであたしたちはお昼まで生活エリアを掃除。午後イチはゾスマにお風呂沸かしてもらって、あたしとレグルスは買い出しに出かける。四時には戻って、全員で洗濯物取り込み。あとは掃除で、メインフロアはきっちりと終わらせる。使ってないとこは簡単で、最悪やんなくてもいいから」
あたしはひとしきり説明を終えて、
「頭入った?」
「ああ、自分の分は間違いなく」
「わかんなくなったら見にくるよ」
「おけ。もしくはあたしに訊いて。ま、どーせ予定通りにはいかないけど」
そう言ってあたしたちは笑った。そう、予定通りにはいかない。いくはずないのよね。だってあたしたち使い魔は振り回されるのが仕事だから。
「さー、五十分だ。気合い入れていこー!」
「おー!」
朝のミーティングが終わり、各自部屋に戻って身だしなみを整える。仕事開始は八時から。厳密に決めてるわけじゃないけど、ある程度きっちりしとかないと、なあなあになっちゃうからね。
そんなわけで部屋に戻ってお着替えタイム。姿見の前で裸になって、軽いストレッチをしながら全身の健康をチェックする。
……うん、問題なし! お肌すべすべ、血色良好、今日もあたし、すっごくかわいい! ショーツを履き直してさらっと再確認。う~ん、たいがいの男は釘付けだわ。
「さてとっと」
クローゼットを開き、服を選ぶ。いつもおなじ服だと飽きるし、昼夜の寒暖差を考えると上着を羽織れるスタイルがいいから、今日はこの胸元の開いた半袖シャツに、たまにはズボンを履いて、腰に上着を巻き付けて……うん、いい感じ! 髪を縛ってツインテール。ポーズを決めて、最高にかわいいアルテルフちゃん爆誕!
「ぴょお~!」
あたしはドアを飛び出して気持ちよく仕事へと向かった。コーデが決まるとテンション上がるわー。早くレオ様起きてこないかなー。
「あ、アルテルフ今日はいつもと違うね」
早速廊下でゾスマと出会った。この子は台車に水桶を乗せて、各部屋のものと交換しに行く途中だった。
「どう、似合う?」
「うん、すっごくかわいいよ」
「わーい、ありがとー!」
この子、無愛想に見えてけっこう気が利くのよねー。あとでお小遣いあげようかしら。
それにしてもこの子はおしゃれしないわよねー。いっつもおなじようなシャツに、おなじようなズボン。袖と裾の長さが季節によって変わるのと、あとは上着を羽織るかどうかくらいで、アクセサリーなんか絶対つけない。クモは着飾りやダンスで求愛するって聞くけどメスはしないのかしら。ま、シンプルなのもかわいくていいけど。
「じゃあ水替え行ってくるね。終わったらリビングから掃除してくね」
「はいはいお願いねー」
「じゃあまた」
「またー」
そう言って別れて、あたしは倉庫からかご台車を拾い、みんなの部屋を回った。うちは洗濯物をドアの横に置いておく決まりになっている。扉を開けて、あたしの服とパジャマ、レグルスの服とインナー、ゾスマの服とパジャマ、デネボラの服とエプロンを回収。あとは二階の寝坊助どもだけど……ちゃんとしてるかしら。
あたしは空のかごを持ってあるじの寝室の前に立ち、無意味なノックをして、
「入りますよー。よろしいですねー」
数秒待機。今日も返事なし。
「失礼しまー」
と言ってドアを開ける。スースーカーカー寝息が聞こえ、キングサイズのベッドから栗の花のにおいとメスの淫気が漂ってくる。
「くっさ」
いっつもこう。毎晩毎晩お盛んで、よくもまあ飽きないこった。レオ様の欲も底なしだけど、こいつの種もどーかしてるわ。魂のほとんどをキンタマに使ってるんじゃない? 短小包茎のくせに量だけは立派なんだから。
……なんて鼻つまんでる場合じゃない。仕事だ仕事。あーあー、またこいつら脱ぎ散らかして。あるじなんだから決まりを守ってくださいな。
ベッド周りに散らばった衣類をかごにぶち込んでいく。アーサー様のシンプルな衣服、長い白のニーソックス、ドスケベな黒下着、白のミニスカート……あー、なるほどね。昨夜はナースさんでしたか。たっぷり患者さんをケアしたことでしょう。満足そうに寝てるわ。さぞ献身的な看護を受け——
……って、うわ! やだ、ねっとねと! しまった~、ここに出したか~。暴発かしら。なんにしても朝からやな気分。ばっちいばっちい。さっさと洗濯しちゃお。
あたしは一階に降りて汚物を台車のかごに移し、離れの浴室に急いだ。浴槽には水がたっぷり残っている。これをふたつの広い桶にすくって外に出て、生地が硬いのとやわいのに分けて入れる。
やわい方はもみ洗い。灰を入れて汚れを丁寧にもみもみ。硬い方は踏み石に乗せて踏む! こんにゃろこんにゃろ! 汚いザーメンぶち撒けて、ちょっとは洗う方の身にもなれ! ちり紙があるでしょーがー!
「お、やってるな」
「あ、レグルス」
荷車に布団を集めてレグルスがやってきた。三匹分のシーツ、掛け布団、枕カバーが乗っている。デネボラは馬の姿で厩で寝るから滅多に布団を洗わない。
「ズボン姿のアルテルフは久しぶりだな。腰巻きがすごく似合ってるよ」
「ありがとっ」
「ところで水は残ってるか?」
「洗うの?」
「あ……わ、わたしのだけな」
レグルスはちょっぴりぎこちなく、
「み、みんなのはいいんだが、わたしのはちょっとにおって……抱き枕とシーツを洗おうと思って……あはは」
あー、そーゆーことね。いっぱい汚しちゃったんだ。この子、ほかのひとの前だと破廉恥だなんだって騒ぐけど、けっこう好き者だからねー。あたし知ってるんだから。あんたが抱き枕を相手に夜な夜などんなことしてるのか。そりゃ~週にいっぺんくらいは洗わないとよねー。
「な、なんだ……そんなニヤニヤして」
「ううんー、別にー」
ニタ~~っ。
「わたしはただ、布団を洗おうと……はわわわ」
うわー、しどろもどろしてかわいー。いまさら恥ずかしがらなくったっていいのにー。あたしにはぜんぶお見通しなんだからさー。
「と、とにかく水もらっていいか!?」
「ほいほい、桶一杯分残しといてくれればいいよー」
「すっ、すまないっ」
レグルスはぴゅーっと逃げるように浴室へと入っていった。難儀な子ねぇ。好きなのに苦手だなんて。
きっとレオ様が混じったせいよね。使い魔はあるじの魂が混ざるから、どうしたって精神に影響を受ける。
たぶん元は潔癖なのに、レオ様の好色を受け継いで両方が同居しちゃってる。これで攻めっ気まで移ってたらどうなってたのかしら。なんせあんなマゾそうそういないもの。サドでマゾとか、どんなプレイするんだっつーの。鏡を見ながら自分をムチ打ち? あははは! バッカじゃない!?
「わ、笑わないでくれ! アルテルフならわかってくれるだろう!?」
あー、違う違う。シーツのこと笑ったんじゃないの。ちょっと考え事しただけ。
……でもおもしろいから笑ったげよ!
「あんた気をつけなさいよー! 夜な夜な名前呼んでるの漏れてるからねー!」
「はわわわわわ!」
あははははは! 慌ててる慌ててる! ほんっとかわいいんだから。これじゃーちょっかい出すのもしょうがないわよねえー。あはははー!
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