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第二十二話 妖鳥は夜にまたたく
妖鳥は夜にまたたく 五
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ぼくらは夕食を食べに向かいの料理屋に入った。
「思ったより悪くないな」
料理屋は外観こそ悪いものの、中は広くてきれいだった。といっても街の食堂と比べたらちょっと狭い。テーブル席が大小合わせて八つほどあり、カウンター席から厨房が筒抜けになっている。村民もよく利用するのか、四人掛けのテーブルがふたつほど埋まっていた。
「とりあえず座るか」
ぼくらは近くの席に座り、料理を選ぼうとした。しかし、
「おや、メニューがないな」
メニューがない。これじゃ料理が選べない。そこに、ノクチュアが言った。
「ここは毎回料理が違うんです。その日その日で獲れるものが違うので」
彼女は五日前までこの村にいたから勝手がわかっている。
「どうすればいいんだ?」
「親父さんが厨房にいるので、今日はなにが出せるか訊くんです」
「なるほど」
レオはスックと立ち上がり、
「おい、親父!」
厨房に声をかけた。見ると、四十そこらの男臭いおじさんが、似合わないエプロン姿でフライパンを振っていた。
「あいよ! ちっと待っててな!」
親父さんはガコガコと料理を進め、数分かかって皿に移すと、
「母ちゃん、持ってってくれ!」
「はいよー!」
気の強そうなおかみさんがそれを客に運んでいった。そして親父さんがレオに振り返り、
「らっしゃい! 今日は猪肉の炒め物、鍋物、山菜ときのこだよ!」
威勢よく言ってフライパンを置いた。それを聞いてレオが「おすすめで頼む」と返答した。
しかし親父さんは了承の返事をせず、レオの顔をじっと見つめ、
「えーっと、ううん?」
「どうした?」
「顔が…………あ、そうか!」
親父さんが突然飛び上がり、下品に笑って、
「おう、特使さんかい! よく来たぜ~! とびきりうめえもん作ってやっから待ってろよな!」
「はぁ?」
「おう、母ちゃん! 酒だ酒! 特使さんが来たぜえ~!」
なにやら親父さんは特使だなんだと騒いでいた。
「ささ、席でお待ちを!」
そう言われレオは席に戻った。どこか不満げな顔で頭を掻いている。どうしたんだろう。
「……とんだ田舎だな」
なにが?
「いや、先ほど我々が宿の店主に、国家直属の魔術師団だと言ったろう。それがもう広まっているらしい」
ええ? チェックインからまだ三十分も経ってないよ?
「こいつらよほど暇なんだな。まあ、それはそれで都合がよいが」
都合がいい? なにがどういいんだろう。
「はいよ、お酒ね!」
そうこうしていると、おかみさんが冷えたビールと、冷製のつまみを持ってきてくれた。
「あんたらお国の特使様なんだって? ここのお代はなしにしとくから、ゆっくりしてっておくれよ!」
わあ、こりゃ都合がいい!
「そのかわりっちゃなんだけどさあ、もっと若い男が村に来るよう目をかけておくれよ! 最近流行ってるんだろ? 聖地巡礼だっけ?」
はぁ?
「おい、母ちゃん! バカなこと言ってんじゃねえ! 特使様に失礼だろ!」
「うっさいね! あんたは黙って料理しな! ……そんなわけだからさぁ、そういうの、頼んだよ」
なんかよくわかんないけど、こりゃにぎやかになりそうだぞ……
「あはは。わたくしこういうお店好きです」
レグルスは気に入ったようだ。元野生としては、荒っぽい方が居心地いいのかもしれない。
「わたしも、おかげで少しは気がまぎれます」
ノクチュアはビールをひとくち飲んで言った。背後からの視線は続いていり、圧力は相当なものだ。周りの人間は霊感がなくて気づかないのかもしれない。お酒と喧騒があってよかった。
「おい、レグルス。飲むなら気をつけろよ」
「はい、少しだけに」
「レグルスさんはお酒弱いんですか?」
「まあ、いろいろあってな」
そうこうして軽く飲んでいると、
「おう、待たせたな!」
お店のご夫婦が鍋や煮物、焼いた肉などを持ってきた。
「なにしに来たのか知らねえけどよ、うちの料理は都会にも負けねえからさ! 足んなくなったら言ってくれ!」
「ご用があったらすぐに言ってちょうだいね! お酒もいろいろあるから!」
うわあ、すごくいいにおい!
「おいしそうですね! 早速いただきましょう!」
とレグルスがみんなの器に鍋をよそっていると、
「おい、親父。少し訊いてもいいか?」
厨房へ帰ろうとするふたりをレオが呼び止めた。
「おう、なんでい!」
「この辺りは魔物が少ないと聞く。それはなぜだ」
へ? さっき宿屋の店主が言ってたじゃないか。夜鳥様がいるからだって。
「そりゃあおめえ、夜鳥様がいるからよ!」
ほら~。忘れちゃったの?
「夜鳥様……それはなんだ?」
「この村の守り神よ! まあ、村っちゅうか、山の神様かなあ」
「くわしく聞かせてくれ。それはどんなものだ」
「おや、もしかしてなにかお調べごとに来たのかい?」
「なんでもいい。話せ」
「へいへい!」
親父さんは揉み手をし、威勢よく話してくれた。
そのむかし、この山にはバケモノがいた。
時代にしておよそ五百年前。そのころまだ村はなく、希少な薬草が獲れるということで遠方からの業者がたびたび山を訪れていた。
だがろくな成果が出ない。山に入るとなにかに見られている気配がし、たいがいの者は怖くなって逃げ出してしまう。
なにが見ているかはわからない。そいつと遭遇した者はいない。ただ、おそろしく強烈な視線が常につきまとい、いてもたってもいられなくなる。
それでも薬草はほしかった。貴重な薬の元が何種類も自生しており、山は宝の宝庫であった。
そこで、ある魔術師が策を講じた。
魔術師はフクロウを模した木像と、それを祀る祠を作らせた。
作業は山の中腹で、視線に見つめられながら行った。
当然だれもが恐れた。世間では、あの視線に見続けられると死ぬなどと噂されていた。
だが魔術師は、この視線にひとを傷つける意思がないことを知っていた。バケモノの正体はかたちを失った妖精であり、山に溶け、見るだけの存在となったものだった。
これはただ見ているだけだと作業員を説得し、なんとかして仕事をさせた。そうして祠を作り、中に木像を収め、異国の呪文を唱えた。
「夜鳥様、夜鳥様、こちらにお入りください。これはあなた様のために用意した器です」
これは現代語に訳したものだ。魔術師の発する呪文は、言語を持たない者に意思を伝える、現代では失われた秘法だった。
魔術師は妖精が耳を貸したことを察し、呪文を続けた。
「夜鳥様、夜鳥様、我々はあなた様に畏敬の念をいだいております。どうか拝ませてください。この器にお入りください」
「夜鳥様、夜鳥様、我々はこの山に暮らしを求めています。この山に暮らしをください。住み家を許してください」
「夜鳥様、夜鳥様、我々は山のお恵みを願っています。かならずお返しをいたしますので、どうか山のお恵みをちょうだいさせてください」
そうしていると、返事があった。
——なぜ夜鳥様と呼ぶのですか。
魔術師は伝えた。
「あなた様がそうあるべきだからです。この像をご覧ください。この像の大きな目をご覧ください。夜を生きる者の姿です。見る力の大きな者は、夜に生きなければならないのです」
とんでもないでたらめだ。世にそんな道理など存在しない。姿は偶然の産物だ。
だが、そいつは信じた。
山を支配していた気配が木像に収まった。
魔術師も、そこにいた凡人たちも、視線が像から飛んでくると感じた。
魔術師は伝えた。
「夜鳥様、夜鳥様、あなたは我々の神です。我々をお守りください。山から邪をお祓いください。我々は山からいただいたお恵みのお返しをすると約束します」
そうして妖精は守り神となった。その後すぐに村が作られ、その利益を元に近くの街ができた。
「いまじゃ薬草もほかの自生地が見つかって、おれが生まれたころにはとっくにさびれちまった。ま、十分食えるからいいけどよ」
なるほど、元は妖精だったのか。それをうまいこと丸め込んで守り神になってもらったんだね。
「なるほど。それじゃ、夜、山に入ると見られるのか」
とレオが訊くと、
「さすが特使様! 頭がいいねえ! その通りで、日中薬草を獲りに行くときは問題ねえ。でも夜はすげえ視線で、守り神とわかっててもちっと怖えんだ。調べ物なら昼間の方がいいぜ」
「ちなみに……お返しとはどんなものだ?」
「毎月酒を飲ませてるよ。けっこういいヤツだぜ」
「それだけか」
「あと……なんつったっけなぁ。最初にでっけえ宝石をお供えしたんだよ」
あ、それって例の宝玉だ!
「なんでもおれらのご先祖さまが金出し合って買ったらしくてよお。魔術師さんが言うには、夜鳥様はすげえ気に入ってたって話だぜ。一生の宝にするとかなんとか言ってたってよ」
はぁ~、宝玉ってそういうものだったのか。そんなの盗まれたら追いかけるに決まってるよね。なんせ五百年前から気に入ってる宝物だもんね。
「よくわかった。ありがとう」
レオはそう言って会話を閉じ、ぼくらは料理に舌鼓を打った。猪肉は思いのほかクセがなく、仕事を忘れてたのしくなっちゃうほどおいしかった。
そんな中、ノクチュアだけが静かだった。
「わたしは……なんてことを」
彼女は重い後悔を背負っていた。
「そんなに大切なものを、わたしは……」
もちろん大切だろうが大切じゃなかろうが、盗みはいけないことだ。とはいえ、ただ高価な品を盗むのと、思い入れのある宝を盗むのでは話しが違う。
「どうだ、戻ってきてよかっただろう」
レオが言った。ノクチュアは目に涙を溜め、コクンとうなずいた。
「さて、道が開けたな」
レオはふふと微笑み、ビールをくっとあおって言った。
「国家を名乗ったのは正解だった。おかげでいい情報が手に入ったな」
それじゃあ……!
「ああ、答えが出たぞ。これで万事解決だ」
「思ったより悪くないな」
料理屋は外観こそ悪いものの、中は広くてきれいだった。といっても街の食堂と比べたらちょっと狭い。テーブル席が大小合わせて八つほどあり、カウンター席から厨房が筒抜けになっている。村民もよく利用するのか、四人掛けのテーブルがふたつほど埋まっていた。
「とりあえず座るか」
ぼくらは近くの席に座り、料理を選ぼうとした。しかし、
「おや、メニューがないな」
メニューがない。これじゃ料理が選べない。そこに、ノクチュアが言った。
「ここは毎回料理が違うんです。その日その日で獲れるものが違うので」
彼女は五日前までこの村にいたから勝手がわかっている。
「どうすればいいんだ?」
「親父さんが厨房にいるので、今日はなにが出せるか訊くんです」
「なるほど」
レオはスックと立ち上がり、
「おい、親父!」
厨房に声をかけた。見ると、四十そこらの男臭いおじさんが、似合わないエプロン姿でフライパンを振っていた。
「あいよ! ちっと待っててな!」
親父さんはガコガコと料理を進め、数分かかって皿に移すと、
「母ちゃん、持ってってくれ!」
「はいよー!」
気の強そうなおかみさんがそれを客に運んでいった。そして親父さんがレオに振り返り、
「らっしゃい! 今日は猪肉の炒め物、鍋物、山菜ときのこだよ!」
威勢よく言ってフライパンを置いた。それを聞いてレオが「おすすめで頼む」と返答した。
しかし親父さんは了承の返事をせず、レオの顔をじっと見つめ、
「えーっと、ううん?」
「どうした?」
「顔が…………あ、そうか!」
親父さんが突然飛び上がり、下品に笑って、
「おう、特使さんかい! よく来たぜ~! とびきりうめえもん作ってやっから待ってろよな!」
「はぁ?」
「おう、母ちゃん! 酒だ酒! 特使さんが来たぜえ~!」
なにやら親父さんは特使だなんだと騒いでいた。
「ささ、席でお待ちを!」
そう言われレオは席に戻った。どこか不満げな顔で頭を掻いている。どうしたんだろう。
「……とんだ田舎だな」
なにが?
「いや、先ほど我々が宿の店主に、国家直属の魔術師団だと言ったろう。それがもう広まっているらしい」
ええ? チェックインからまだ三十分も経ってないよ?
「こいつらよほど暇なんだな。まあ、それはそれで都合がよいが」
都合がいい? なにがどういいんだろう。
「はいよ、お酒ね!」
そうこうしていると、おかみさんが冷えたビールと、冷製のつまみを持ってきてくれた。
「あんたらお国の特使様なんだって? ここのお代はなしにしとくから、ゆっくりしてっておくれよ!」
わあ、こりゃ都合がいい!
「そのかわりっちゃなんだけどさあ、もっと若い男が村に来るよう目をかけておくれよ! 最近流行ってるんだろ? 聖地巡礼だっけ?」
はぁ?
「おい、母ちゃん! バカなこと言ってんじゃねえ! 特使様に失礼だろ!」
「うっさいね! あんたは黙って料理しな! ……そんなわけだからさぁ、そういうの、頼んだよ」
なんかよくわかんないけど、こりゃにぎやかになりそうだぞ……
「あはは。わたくしこういうお店好きです」
レグルスは気に入ったようだ。元野生としては、荒っぽい方が居心地いいのかもしれない。
「わたしも、おかげで少しは気がまぎれます」
ノクチュアはビールをひとくち飲んで言った。背後からの視線は続いていり、圧力は相当なものだ。周りの人間は霊感がなくて気づかないのかもしれない。お酒と喧騒があってよかった。
「おい、レグルス。飲むなら気をつけろよ」
「はい、少しだけに」
「レグルスさんはお酒弱いんですか?」
「まあ、いろいろあってな」
そうこうして軽く飲んでいると、
「おう、待たせたな!」
お店のご夫婦が鍋や煮物、焼いた肉などを持ってきた。
「なにしに来たのか知らねえけどよ、うちの料理は都会にも負けねえからさ! 足んなくなったら言ってくれ!」
「ご用があったらすぐに言ってちょうだいね! お酒もいろいろあるから!」
うわあ、すごくいいにおい!
「おいしそうですね! 早速いただきましょう!」
とレグルスがみんなの器に鍋をよそっていると、
「おい、親父。少し訊いてもいいか?」
厨房へ帰ろうとするふたりをレオが呼び止めた。
「おう、なんでい!」
「この辺りは魔物が少ないと聞く。それはなぜだ」
へ? さっき宿屋の店主が言ってたじゃないか。夜鳥様がいるからだって。
「そりゃあおめえ、夜鳥様がいるからよ!」
ほら~。忘れちゃったの?
「夜鳥様……それはなんだ?」
「この村の守り神よ! まあ、村っちゅうか、山の神様かなあ」
「くわしく聞かせてくれ。それはどんなものだ」
「おや、もしかしてなにかお調べごとに来たのかい?」
「なんでもいい。話せ」
「へいへい!」
親父さんは揉み手をし、威勢よく話してくれた。
そのむかし、この山にはバケモノがいた。
時代にしておよそ五百年前。そのころまだ村はなく、希少な薬草が獲れるということで遠方からの業者がたびたび山を訪れていた。
だがろくな成果が出ない。山に入るとなにかに見られている気配がし、たいがいの者は怖くなって逃げ出してしまう。
なにが見ているかはわからない。そいつと遭遇した者はいない。ただ、おそろしく強烈な視線が常につきまとい、いてもたってもいられなくなる。
それでも薬草はほしかった。貴重な薬の元が何種類も自生しており、山は宝の宝庫であった。
そこで、ある魔術師が策を講じた。
魔術師はフクロウを模した木像と、それを祀る祠を作らせた。
作業は山の中腹で、視線に見つめられながら行った。
当然だれもが恐れた。世間では、あの視線に見続けられると死ぬなどと噂されていた。
だが魔術師は、この視線にひとを傷つける意思がないことを知っていた。バケモノの正体はかたちを失った妖精であり、山に溶け、見るだけの存在となったものだった。
これはただ見ているだけだと作業員を説得し、なんとかして仕事をさせた。そうして祠を作り、中に木像を収め、異国の呪文を唱えた。
「夜鳥様、夜鳥様、こちらにお入りください。これはあなた様のために用意した器です」
これは現代語に訳したものだ。魔術師の発する呪文は、言語を持たない者に意思を伝える、現代では失われた秘法だった。
魔術師は妖精が耳を貸したことを察し、呪文を続けた。
「夜鳥様、夜鳥様、我々はあなた様に畏敬の念をいだいております。どうか拝ませてください。この器にお入りください」
「夜鳥様、夜鳥様、我々はこの山に暮らしを求めています。この山に暮らしをください。住み家を許してください」
「夜鳥様、夜鳥様、我々は山のお恵みを願っています。かならずお返しをいたしますので、どうか山のお恵みをちょうだいさせてください」
そうしていると、返事があった。
——なぜ夜鳥様と呼ぶのですか。
魔術師は伝えた。
「あなた様がそうあるべきだからです。この像をご覧ください。この像の大きな目をご覧ください。夜を生きる者の姿です。見る力の大きな者は、夜に生きなければならないのです」
とんでもないでたらめだ。世にそんな道理など存在しない。姿は偶然の産物だ。
だが、そいつは信じた。
山を支配していた気配が木像に収まった。
魔術師も、そこにいた凡人たちも、視線が像から飛んでくると感じた。
魔術師は伝えた。
「夜鳥様、夜鳥様、あなたは我々の神です。我々をお守りください。山から邪をお祓いください。我々は山からいただいたお恵みのお返しをすると約束します」
そうして妖精は守り神となった。その後すぐに村が作られ、その利益を元に近くの街ができた。
「いまじゃ薬草もほかの自生地が見つかって、おれが生まれたころにはとっくにさびれちまった。ま、十分食えるからいいけどよ」
なるほど、元は妖精だったのか。それをうまいこと丸め込んで守り神になってもらったんだね。
「なるほど。それじゃ、夜、山に入ると見られるのか」
とレオが訊くと、
「さすが特使様! 頭がいいねえ! その通りで、日中薬草を獲りに行くときは問題ねえ。でも夜はすげえ視線で、守り神とわかっててもちっと怖えんだ。調べ物なら昼間の方がいいぜ」
「ちなみに……お返しとはどんなものだ?」
「毎月酒を飲ませてるよ。けっこういいヤツだぜ」
「それだけか」
「あと……なんつったっけなぁ。最初にでっけえ宝石をお供えしたんだよ」
あ、それって例の宝玉だ!
「なんでもおれらのご先祖さまが金出し合って買ったらしくてよお。魔術師さんが言うには、夜鳥様はすげえ気に入ってたって話だぜ。一生の宝にするとかなんとか言ってたってよ」
はぁ~、宝玉ってそういうものだったのか。そんなの盗まれたら追いかけるに決まってるよね。なんせ五百年前から気に入ってる宝物だもんね。
「よくわかった。ありがとう」
レオはそう言って会話を閉じ、ぼくらは料理に舌鼓を打った。猪肉は思いのほかクセがなく、仕事を忘れてたのしくなっちゃうほどおいしかった。
そんな中、ノクチュアだけが静かだった。
「わたしは……なんてことを」
彼女は重い後悔を背負っていた。
「そんなに大切なものを、わたしは……」
もちろん大切だろうが大切じゃなかろうが、盗みはいけないことだ。とはいえ、ただ高価な品を盗むのと、思い入れのある宝を盗むのでは話しが違う。
「どうだ、戻ってきてよかっただろう」
レオが言った。ノクチュアは目に涙を溜め、コクンとうなずいた。
「さて、道が開けたな」
レオはふふと微笑み、ビールをくっとあおって言った。
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それじゃあ……!
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