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第一章
小さな星屑 第五話
しおりを挟む「悪いが俺はやらねぇよ」
しばらくの沈黙を経て蒼太は答えた。
「なんでや‼︎」
「なんでもだよ。俺、教室に弁当あるから先戻ってるぞ」
戸惑っている真矢を尻目に蒼太は足早に屋上を去った。
「おい、蒼太‼︎」
去っていく背中に向けて叫んだ真矢だったが、蒼太の足は止まらなかった。
「弓瀬には悪いが、多分蒼太はやらないと思うぞ」
隼人は羅夢からもらった弁当を食べながらそう言った。
「どういうことや?」
「あいつ昔、ダンスやってたんだ。ただ…」
隼人は蒼太の過去について話し始めた。
今から7年前。まだ小学生だった頃、蒼太はダンスをやっていた。そのころは今みたいに、色んなことをしていたわけではなく、ダンスだけをやっていた。
しかし、初めてダンス大会に出た時、大勢の人の前で踊ることへの緊張もあって、上手く踊ることが出来ず結果は散々なものだった。次の日、学校へ行くとその話を聞きつけたクラスメイトの笑い者になっていた。
「なぁ知ってるか?八木のやつ、ダンスの大会出たけどステージの上で散々だったらしいぞ」
「マジかよ。あいつっていつも張り切って何かやろうとするけど、上手く言ったことねぇだろ」
「あれだけ張り切ってたくせに失敗して、恥ずかしいとか思わねぇのかよな。ざまぁ見ろよ。ハハハッ」
ハハハッ…ハハハッ…
「あれ以来、蒼太はダンス辞めたんだよ…だから、もう蒼太のことは諦めた方が良いと思うぞ」
「…知っとるよ」
「えっ?」
真矢の意外な言葉に隼人は驚きを隠せなかった。
「蒼太がステージで失敗したことは知っとる。俺それ見とったし」
真矢は3つ目のメロンパンを手に取りながら答えた。
「昔、この辺に住んでたことがあってな。でも、引っ越さなあかんようになってしもうて落ち込んどったんや。そんな時にたまたま蒼太のダンス見たんや」
真矢は小学生までこの地域に住んでいた。しかし、引っ越さなければいけない事情が出来てしまいひどく落ち込んでいた。そんな真矢の状況を見た親は、好きなダンスを見て元気を出してもらおうと近くでやっていたダンスの大会に連れていったのだった。その大会に蒼太も出ていたのだった。
「確かにリズムも取れてなかったし振りも飛んどった。でも、最後まで必死に踊ってんの見て、なんか元気もらえたんや‼︎ダンスって人に元気を与えることが出来るんやって‼︎だから俺はダンスを始めたし、いつかこっちに戻ってきて、絶対に蒼太と一緒にダンスするって決めとったんや」
隼人は驚いた。まさか真矢がそんなことを思って、蒼太のことを誘っていたとは。
「弓瀬、お前すごいなぁ」
「でも、その出来事だけが原因やと思わへんけどなぁ。なんであんな嫌がるんやろ?」
真矢はメロンパンにかじりつきながら首をかしげた。
「…のせいかもな」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なんでもない。よし、分かった‼︎そこまで考えてるのなら、俺からも蒼太のこと説得してやるよ」
「ほんまか‼︎ありがとうな‼︎」
真矢は笑顔で近づいて来て、隼人と熱い握手を交わした。
放課後。蒼太は比奈と一緒に帰り道を歩いていた。真矢は昼休みの後も蒼太につきまとい、一緒にダンスをするように誘い続けた。授業が終わってからも続く勧誘を何とかして振り切って、今に至る。
「はぁ~今日は一段と疲れた」
首を回しながら、蒼太は深くため息をついた。
「弓瀬くん強烈だもんね」
「ほんとだよ…何度断っても、諦めないからさ…マジで疲れた」
「でもさぁ、あそこまで必死に誘われたら、私だったらやるけどなぁ」
比奈は二手に分かれる道の前で立ち止まり言った。
「どんなに言われてもやらねぇよ」
「なんで?」
比奈は蒼太の正面に立って尋ねた。
「なんでもだよ」
「意味わかんない」
比奈は振り返って、右側の道に進んでいった。
「わからなくて結構。じゃあな」
蒼太は反対側の道を進んでいった。
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