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第一章
小さな星屑 第六話
しおりを挟む蒼太は自分が住んでいるマンションに帰ってからも、ずっと真矢に誘われたことについて考えていた。なぜ俺なのか。よりによって何でダンスなのか。気がつくと時計の針は0時を越えていた。
「はぁ~マジで何なんだよ、弓瀬のやつ…」
ベッドに寝転がりながらため息をついた。すると、不意に外から声が聞こえた。
「おーい蒼太、起きてるか~」
蒼太が窓の外を見ると隼人が立っていた。
「隼人か。どうしたんだこんな時間に」
「ちょっと話せるか」
二人は近くの公園へとやって来た。
「何だよ」
大体の予想はつく蒼太だったが、わざとらしく隼人に言った。
「分かってるくせに」
「…ダンスならやらねぇぞ」
一向に意見を曲げない蒼太に、隼人は昼間に屋上で聞いた話を話し始めた。
「弓瀬、あの日の大会でお前のダンス見ていたらしいぞ。お前のダンスで元気もらったってさ」
「何だよそれ…俺の酷いダンス見て笑ったの間違いだろ」
「何でそう素直に受け取らないかなぁ。そうじゃないと、あんなに真剣にお前のこと誘わないだろ。それに蒼太。お前、本当はダンス好きだろ。自分に嘘つくなよ」
「っ‼︎俺は隼人の…」
「とにかく、やりたいなら変に気を揉まずにやってみればいいんじゃね?今日はそれ伝えに来ただけだから」
そういうと隼人は公園を後にした。
確かに隼人の言う通りダンスは好きだ。だが、失敗して人に笑われるのが怖くなって、それ以来どんなことに挑戦してもダメになりそうなら、すぐに辞めてしまっていた。それに蒼太にはダンスをやりたくない、もう一つの理由があった。
「どうすりゃ良いんだよ…」
蒼太は呆然と公園に立ち尽くしていた。
次の日。蒼太と隼人はいつもより早く学校に来ていた。朝早くに隼人が蒼太の家まで来て、見せたいものがあると連れて来られたのだ。
「おい隼人。こんな朝早くからどこ行くんだよ」
「付いて来れば分かる」
学校に到着した二人が向かった先は屋上だった。
「見てみろよ」
「あれは…弓瀬?」
蒼太が窓から覗き込むと、音楽をかけながらダンスの練習をしている真矢の姿があった。
「これから毎日、朝と夕方に、ここで練習するんだってさ」
隼人が屋上のドアを開けると、深夜も二人に気がついてダンスを止めた。
「おぉ‼︎蒼太と隼人やないか‼︎」
近づいてみると、授業の前にも関わらず全身汗でずぶ濡れになっていた。
「お前、授業の前に汗かき過ぎだろ」
「いや~休憩なしでずっと練習してたからなぁ。でも、まだまだや。毎日練習せんと夢叶わんからな」
「夢?」
突然の言葉に思わず蒼太は聞き返した。
「そうや。俺の夢はなぁ、ダンスで日本一になって日本中の人を元気にすることなんや」
「日本中って…ぷっ‼︎」
真矢の予想外の答えに蒼太は思わず吹き出してしまった。そしてその瞬間、颯太の心の中にあったモヤモヤが一気に晴れた。
真矢は日本中を元気にするという、恐ろしく大きな夢に向かって毎日を生きている。それに比べて自分は、たった数人に笑われた経験だけで好きなことから目を背けていた。失敗しながらも一生懸命にやることへの、どこか格好悪いという恥ずかしさ。そんな小っぽけなものに悩んでいた自分の情けなさが、だんだんと笑えてきた。
「そんな笑うなや」
「いや、すまん。だってよぉ日本中だぜ。あー腹痛ぇ。でも、流石にお前一人じゃそんなデカい夢を背負うのキツいだろ。しょうがねぇから俺もその夢手伝ってやるよ」
転校早々に一緒にダンスをしようと誘って来たと思えば、次はダンスで日本中を元気にするという大きすぎる夢。全く、弓瀬には驚かされるばっかりだ。だが、こいつとなら何か出来るかもしれない。そう思えるものが弓瀬にはあるし、一緒に居れば俺も変われるかもしれない。
「ほんまか蒼太‼︎」
「あぁ。そうと決まれば、早速俺にも振り教えてくれ‼︎」
蒼太はカバンを置いて真矢の元へ向かった。振りを教わりながら賑やかにダンスをしてる蒼太たちを見て少し微笑んだ後、隼人は静かに屋上を後にした。
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