【完結】人間にモテないオレはモンスターを嫁に迎えることにしました

湯原伊織

文字の大きさ
27 / 46

第27話 闇夜に紛れる変質者

しおりを挟む
 今宵は満月の夜。暗闇に紛れて疾走する。街道に灯る光。それを避けるように駆ける影を追ってオレは足を進める。

「見失ったか。本当に厄介な相手だな」

 ハンターギルドもオレに最近はたくさん難しい仕事をまわしすぎじゃないか? オレはギルドから渡された資料に目を通し、ため息を吐く。

 ───連続婦女子暴行殺人の凶悪犯。生き残った者の証言では黒いマントを羽織った背の高い男。さらに追加の情報として、彼には鋭い牙がある模様。

 これだけの特徴があるからハンターギルドに依頼がきたのはわかる。でもさ、だからと言って高ランクのオレをその証言だけのために1週間も現場で張り込みさせるのはどうかと思うんだよな。

「悲鳴!?」

 オレは女性の声に反応して後ろを振り向く。こんなタイミングで夜の街に女性の絹を裂くような悲鳴か聞こえてきたということは…

「オレを撒いて早速さっそく、女性を襲うとはやるな!!」

 女性の声がした場所をオレは目指して駆ける。既に日は沈んでいるため街を歩く人もほとんどいない。だからだろう。直ぐに目的の場所に着くことができた。

 オレの視界には背が高い黒い髪をした長髪の男が大声で、

「こんにちはお嬢さん? 今夜の月も美しいですね」

 と言って、微笑みながら黒いマントを広げて仁王立ちする姿が見える。オレはしまい忘れて手にしていた奴の資料を再度、読み直してカバンにしまう。

 ───生き残った者の中に奴は衣服の着ていない姿を見せては愉悦に入っていたと証言されている。
 
 奴は資料に記載されている通りで全裸だった。誰がどう見ても変質者。本来ならばハンターが対処する仕事に思えないわ。だが、ひとまずは女性を助けなければならないな。

「イヤ、近寄らないで!!」

「落ち着いてください。美しいお嬢さん、あなたは光栄にも吸血鬼であるこのデミトン・アルフェルムの餌になるのだからね」

 黒い髪の男が若い女性を後ろから羽交い締めにして襲おうとしているようだ。思ったよりも状況はやばいぞ。

「おい、貴様、なにをやっているんだ!!」

 オレは奴の前に現れるなり、蹴りをお見舞いしてやった。しかし、奴は一瞬で赤い霧のようなものになって消える。くそ、逃したか?  いなくなった奴のことを考えても仕方がない。ひとまず、怯えているこの女性をどうにかしないとな。

「もう、安心ですよ。お嬢さん」

 彼女が怯えないようにオレは紳士の笑みを作りながら手を差し伸べるが、

「ありがとうございます。って、また全裸男が現れたわ!!」

 と言ってその女性はオレの手を握るなり、パニックになったように顔を恐怖で歪める。

「なに? どこにそんな変態が!!」

 怯える女性の前で全裸になるとはトンデモない変態がいたものだ。懲らしめてやる。そう思って、恐れている彼女の視線の先をたどると…

「え!? まさか!!」

 彼女はオレを見て言っていないか? なにかの間違いだよな!? オレは彼女の視線に不安になり、自らの体にあるはずのハンターギルド正装服の感触を確かめようと体を弄る。

「嘘だろ! オレの服がない!!」

「いや、怖い! 変態!」

 オレが叫ぶなり、襲われていた女性は恐怖に顔を引きつらせて暗闇の街に疾走して消えていった。

「フッ、我が血の霧は衣服を溶かす」

「って、おまえのせいかよ! なんで服をワザワザ溶かすんだよ!!」

 逃げたと思っていた奴が現れて、己の所業だと暴露してきた。

「服など無粋なものは不要だ。生まれた時、すべてのモノは裸! これは神が望まれた姿なのだ!!」

 そう言って、マントをめくり自らの細くも筋肉質なボディを外界に晒す。

「そのことは君もわかっているはずだ。そう恥ずかしがるものではない。寧ろ、晒すべきだ。いや、晒さねばならぬ」

 急に現れるなり、デミトンは細マッチョの体にポージングを取りながら、オレにそう力説する。

「さぁ、君も真の己を晒してさらなる高みに行こうじゃないか!! 偉大なる神の所に共に! ハッハハハ」

「オレは男の裸に興味はない!!」

 オレは絶対に譲れない魂からの主張を全裸の男にする。

「フフフ、なるほどね。だが、オレにかかればおまえも女になるぞ!! こんな風にな」

 そう言って、自らの体を変化させる。目の前で男から女へと徐々に変身していく変態。

「うるせぇ!! おまえが女に返信しようともオレは、オレは…」

 前世から含めて童貞です。目が離せません。そんなオレの気持ちなんて知ったことではないのだろう。奴はオレの反応を無視して胸を張ってまた話しかけてきた。

「見て、このボディ。堪らないでしょう?」

 変身が終わった姿を再度、確認すると、真っ白な肌に魅惑的な赤い唇。目は鋭いが長い睫毛にパッチリとした二重。そして、なによりも…

「ああ、確かにすごいモノです。童貞のオレにはそれ以上の表現ができそうにない。それどころか、もう我慢ができないかも…」

 眼福だ。まさにこの世のモノとは思えない。しかも一糸まとわぬ生まれたままの姿だと? まぁ、実際は暗闇でほとんど見えないけどそこは男の妄想力で保管するぜ。

「う、うう、妄想が止まらない。見える。見えるぞ。そう思うと我慢ができない! ああ、そこのかわい子ちゃん!!」

 オレは相手がはじめに男の姿を取っていたことも忘れて、そのたおやかな肉体めがけて飛び込んだ。そう、いつもの空中平泳ジャンプのルパンダイブだ! だが、オレが掴む前に奴は再度、霧となって消えやがった。ガッテム!!

「フフフ、悪戯はダメよ」

 そう言って、両腕で自らたわわに実った果実を弄ぶように動かす姿をオレに見せつけて、

「あなたも女になればたくさん触り放題よ? 私と目眩くる夜の世界を楽しみましょう?」

 と言って、妖艶に微笑む。うーん、どうにかして触れないものだろうか。

「オレはかわいいモンスターと楽しみたいんだ。誰が自ら性転換して喜ぶんだよ! かわいいモンスターのだから楽しんだよ。だから、触らせろ!」

 オレの本能のおもむくままの発言を聞いた奴は、

「残念だわ、サイゾウ。あなたなら私を理解してくれると思ったのに。自らを曝け出す楽しみを行える敬虔な信者になると期待していたのだけど…」

 と悲しげに顔を伏せてそう言うとまた霧となり、男の姿に戻る。

「勝手にいっしょにするな!! バカ野郎!!」

 なんで、男に戻るんだよ。ちくしょう! だれが男の洗礼された肉体を見たいんだよ!! お呼びでないぞ。

「貴様らか! 女性を襲った変態は!」

「ッチ、警察が駆けつけてきたな」

 そう言って、奴は警察を確認するなり、霧となって消えていった。くそ、取り逃がした。しかし、あの女性姿の肉体はたまらなかったなぁ。

 って、今はそんなことを考えている場合ではないだろ。姿を自由自在に変えられる化け物の吸血鬼がいたのだ。警察にこの街に吸血鬼が現れたことを伝えないと。

 吸血鬼なんて人類の敵もいい所だよ。最上級のモンスターだ。あいつは変態だったけどさ。奴らは基本的に吸血行動で仲間をどんどん増やして人類をオモチャにする化け物だからな。本当にすごい危険なモンスターだ。

「警察官の人、オレはあなたたちに伝えたいことがある」

「わかった。言い訳は署で聞くから。少し、署まで来てもらおうか」

 なんで、オレが警察署に行かなければならないんだよ。

「って、オレ、全裸じゃん!! なんで服がないんだ!!」

 ああ、あの吸血鬼の野郎!! オレの衣服を消して、そのまま逃げやがったな!!

「もう、そんな惚けなくていいからな。ストレスが溜まっていたんだよな? わかる。わかるよ。さぁ、署まで行こう」

 警察官の生暖かい目を向けられながら、オレは理不尽さを噛みしめる。くそ、くそ、こんなことで犯罪者になりたくない。今までの清廉潔白な経歴が汚れる。

「こんな所で犯罪歴を作れるかよ!!」

「コラ、待ちなさい!! 逃亡の犯罪も増えるぞ!!」

 ちくしょう、警察をぶん殴ったら、それだけでさらに重罪になる。さらに現行犯以外でも捕まるようになるな。そんな愚かな行為は慎むべきだ。ひとまず、ここは逃げるしかない。

「ちくしょう、逃げ切ってやる。世の中は理不尽だ!!」

 暗闇の中、全裸で疾走するオレの叫び声は夜の街に虚しく響き渡るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

処理中です...