【完結】人間にモテないオレはモンスターを嫁に迎えることにしました

湯原伊織

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第41話 賞金首のサイゾウ

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 エルフたちを無事に彼女たちの里に届けて、ハンターギルドに任務完了の報告をした後、久しぶりの我が家でくつろいでいた。そんなひとときに事件は起きた。

「サイゾウ様、大変です」

 オレがアラクネとデミトンらと一緒にソファでくつろいでいた所に元聖女のシルメリアが慌てたように、そう言って玄関からリビングへと入ってきた。

「凶暴な魔物を匿っているという情報から、サイゾウ様に賞金がかけられているようです」

「嘘だろ!? オレって、王国にハンターギルド経由でかなり貢献しているだろ」

 シルメリアからもたらされた驚愕の情報にオレは思わず真偽を疑う。

「おい、おい、魔物を庇うなんて人の風上にもおけない奴がいるんだな」

「そうですわね。サイゾウ様にも本当に困ったものです」

「魔物のおまえたちがそれを言うの!?」

 そんなオレを冷やかすようにデミトンとシルメリアが笑いながら答えるから、

「なんだ。嘘か。びっくりさせるなよ。やけに慌ててシルメリアが入ってきたから本当のことかと思ったわ」

 と苦笑いしながら、オレはそう言った。さっきのことは冗談で言っているのかと安堵して、そう発言したのだが、

「サイゾウ様、申し上げにくいのですが、本当のことです」

 とシルメリアがこちらを見て、はっきりとそう言葉を返してきた。

「本当?」

「酷いです。こんなにサイゾウ様のことを思っている私を疑うなんて…」

 オレが疑念を抱いて問いかけたことに対して、彼女は悲しげにそう言葉を吐いた後に沈黙をする。

「なんでいきなり、そんなことになっているんだ?」

 訳がわからないとオレが大袈裟に喚くと、

「ここに大罪人のサイゾウがいるはずだ。見つけ次第に殺害しろ!」

 と言っている者を先頭に窓の外から数百くらいの兵士が歩み寄ってくるのが見える。おかしいだろ。どんな下手人げしゅにんでも、この数が家にいきなりくることはないだろ!?

「オレって本当に大罪人なの?」

「存在が大罪人だよな」

「ですわね」

「そうね。罪づくりなのは本当ね」

 オレの問いかけを聞いて三者三様に素敵な意見をくれたが、全員が肯定の返事。

「オレは確かに碌な人生を送ってないと思うけど、流石に大罪人になるような悪ことはしてないよ。してないよね。誰か肯定してください!!」

 そう言って、3人を見ると全員がオレから視線をそらす。

「おかしい。こんなに真面目にコツコツと生きてきたのにこの扱いは酷いわ」

 そんなくだらないやり取りをしていたら、

「サイゾウを見つけ次第に殺せ!」

 という言葉と共に鍵のかかった扉が壊されたのだろう。あたりに破壊される音が響いたと思ったら、リビングまで兵士どもが雪崩なだれ込んできた。

「隊長、サイゾウを発見しました」

 早期発見、早期報告。まさに兵士の鏡みたいな奴だな。そいつのあげた報告の声が聞こえたのだろう。隊長と思われる兵士がオレの前まで歩み出てきた。

「やはり、報告は誠であったな。大量の魔物を自宅で飼い、国の安定を脅かしていると」

 アラクネとデミトンを見るなり、オレを睨みつけてきた。

「こいつらが脅かしているのはオレの家計で、国じゃないんだけどね」

 オレが戯けてそう言うと、

「うるさい。うるさい。この悪魔め。人々を魔物に変えやがって…」

 と激怒して激しく罵ってきた。何を言っているんだ。人を魔物に変える? 普通の人間であるオレがそんなことできる訳ないだろうに…

「うぁ、隊長の顔が!? 顔が!!」

 急に部下とおもわしき男が悲鳴を漏らす。
 
「オレの体が!? 」

 オレを責め立てていた男の体から異常な腐敗臭がしたと思ったら、体が徐々に泥のようになっていく。

「嘘だ!?」

 兵士たちは自らの体の変化に、ある者は驚愕の表情をまたある者は悲鳴をあげて、辺りは大混乱に陥っていった。

「これは一体、どういうことだ?」

 オレが訝しげに辺りを見回していると、急に元聖女のシルメリアが床に倒れ伏す。

「大丈夫か? シルメリア!?」

 心配してシルメリアを助け起こそうとした。その時、唸り声をあげて彼女が突如として、オレを襲ってきた。オレはバックステップをすることで彼女の体当たりを辛うじて回避することに成功した。

「いったい、シルメリアはどうしたんだ?」

 オレが彼女に再び近づこうとすると、

「サイゾウ、今のシルメリアに近づくな。あれは既に知能なきゾンビだ」

 そう言いながらデミトンがオレとシルメリアの間に割って入ってきた。そして、彼は言葉を続けて、

「我の支配よりも強い力が働いているようだ。誰だ? 魔王クラスの力を持っている奴が裏にいるかもしれない」

 と誰かがシルメリアや元兵士たちを操っていることを示唆してきた。

「つまり、シルメリアは誰かの力の所為であんな状態になっているのか?」

「我はその意見を肯定しよう。その通りだ」

 デミトンによって、オレの質問は容易く肯定された。

「そうなると彼女も対処しなくてはいけないのか」

「シルメリアを攻撃だなんて、そんなことできないわ」

「アラクネ」

 アラクネの意見にオレも同意だ。彼女とは色々とあったが、今では家族のように一緒に住んでいるのだ。仲の良かった彼女を容易く、葬ることなどは今のオレにはできない。頭ではわかっている。彼女を葬り去るのは決して間違いではないと言うことが…

 でもそれはオレの心がついていけない。

「多勢に無勢だ。我やアラクネは逃げ切ることができる。だが、サイゾウ。おまえは逃げるのが大変だろう」

 足でまといと言いたいのかと罵ってやりたいが、事実そうだろう。流石にオレでもわかる。こんな大量の魔物の中で生存できる可能性は人間であるオレには、ほぼないだろう。

「活路を作るからそこから逃げてね」

 アラクネが心配そうにこちらを伺いならがそう言って微笑む。

「すまない。もし無事だったら、燃えた廃墟跡に新しく作った小屋で会おう」

 彼らの意見は正しい。ならば、ここから逃げた後に再び集まる算段をつけた方が良いだろう。この後にどこに行くとしても…

「我が燃えた場所ではないか。嫌がらせか? しかし、わかった。」

「わかったわ。サイゾウ、必ず逃げてね」

 やけに今回のアラクネはオレが逃げることに年を押すな。流石のオレもこの大量のゾンビに囲まれた状況でそんな無謀なことをする勇気はない。

「さぁ、サイゾウ。早くここから逃げて!」

 アラクネがリビングの窓を叩き割り、オレに逃げるように促す。迫り来るゾンビの大群にデミトンが猛攻を仕掛ける。

「おまえらも無事でいろよ」

 そう言って、オレは我が家の1階にあるリビングの割れた窓から脱出をする。家から脱出したオレを追って、ゾンビが大量に出てきている。この状況だと、できるだけ早く家の塀を乗り越えて、逃げなくてはならないな。

そんな風に考え事をしていたオレの耳に不穏な会話が聞こえてきた。

「あなた逃げられる算段あるの?」

「この数を相手にしてまともに逃げられる案などある訳なかろう」

 嘘だろ? デミトンもアラクネも人外の強さを持っていて、この状況に対応できるからオレを逃したんじゃないのか!?

「私もよ。この数は尋常じゃないわね。それに彼を逃すためにできるだけ暴れないと」

「それでは貴様は根性の別れになるかもしれないな。どんなに最悪であっても、我は死にはしないと思うがな」

 デミトンの言葉が聞こえてきて、しばらくアラクネからの返事がない。おい、アラクネ、もちろん生き残る手段は持っているんだろ。そうなんだろ?

「そうかもね。それでも最愛の人を逃すために頑張らないと」

 さらにそれだけで、満足よと言って彼女の言葉は途切れた。そこからはゾンビの叫び声と建物が破壊された音などの喧騒しか聞こえてこない。

「アイツらめ。こんな状況でオレだけが逃げられると思っているのか!!」

 来た道は既にゾンビが跋扈ばっこしており、戻ることはできそうにない。オレは自宅の玄関まで走ることにした。

「サイゾウ、なんで戻ってきたんだ?」

 まさに満身創痍。その言葉がぴったりなほどに体のあちらこちらが欠損している。そんな状況にも関わらずに彼はオレを力強く睨みつけて、そう問いかけてきた。

「デミトン、アラクネはどうした?」

 そう問いかけると彼は視線を玄関の扉の前に移す。彼の視線を追って、玄関の扉を見ると、

「まだ、生きていたとは…」

 と言っている金髪の司教ヴェイルがいた。彼と会うのはシルメリアの事件以来だ。しかし、ここに教会の司教が、なぜいるんだ。

 いや、それよりも、気絶しているのか無反応なアラクネが奴によって担がれている。おかしい、普通の人間があんなに軽々と大柄なアラクネを持ち上げられるはずがないのに…

「アラクネを放せ。彼女をどこに連れて行くんだ!!」

 彼女をここで取り返さないと、どこに連れていかれるかわからなくなる。

「ここで死ぬ。おまえに教える義理はない」」

 オレの問いかけに対してにべも無い返事がかえってきた。

「この騒ぎは全て貴様の仕業か!?」

「そうだとしたら、どうするんだ?」

 そう言って、微笑む。その佇まいは、教会の司教にふさわしく万人を安心にさせるものであった。だが、今の状況のオレには苛立ちしかわかない。

「クソが絶対に許さないぞ!」

「ハハハ、このゾンビ共を相手に生き残ることができたら全て教えてやるよ。まぁ、どうせ、生き残ることができないだろうがな!」

 そう言って去っていくヴェイル。オレは怒りに任せて、奴を追おうとするとそれを防ぐようにゾンビ共が大量に襲いかかってきた。

「ああ、邪魔だ! ゾンビ共、どけ!」

 オレがそう言って、ソンビ共を倒していると気がついたときには、奴の姿は完全になくなっていた。

「ふざけるな! 必ずアラクネを返せ! 絶対に彼女を助けに貴様のところまで行ってやる!!」

 人生の中ではじめてオレのことを最愛の人と呼んでくれた。そんな彼女のために例えこの体がどれだけ、無様に傷つこうともアラクネを取り返す。そして、言うんだ。愛していると…

 オレは心にそう強く決意し、デミトンを拾って、ゾンビの群れから逃れるために走るのであった。
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