ハッピーエンド=ハーレムエンド?!~TS転生でへたれ攻めだけど幸せにしてみせる!~

琴葉悠

文字の大きさ
9 / 120
第一章:異世界転生完了、危険フラグをへし折れ!

神様の助言~語らぬ兄~

しおりを挟む



「ギャー!!」
 私は頭を抱える。
 留学期間中に拗らせるという事は何かあったという事が分かる。
 その間、私は勿論父母は直接関与できない。
「えっと御付きは?! フィレンツォみたく世話役というか執事というかいないの?!」
『いるが――まぁ悪化に関しては……な』
「ヴァー!!」
 神様の言葉が気になるが、私はそれより拗らせるのを防ぐ方法はないものか必死に考える。
 だが、思いつかない。

 留学するまでの残り二年の間にどうにかできる自信すらない。

――どうしたらいいの?!――

 必死に思い出す。
 あの強姦を防ぐ方法を。

「思い出せないぃいいいい!!」

――詰んだ――

 私は諦めかけた。
『……仕方ない、じゃあ言うぞ』
「⁇」
 泣きそうな私に、神様はため息をついてから言った。

『ゲーム的に言えば魔力・術知識・体術等の総合ステータスが一定値を超えていれば強姦は防げる。お前はとっくの昔にその数値を超えている、だから強姦事態は防ぐことは可能だ』

「……マジ?」
『嘘をついてどうする、ただし』
 神様はぬっと私に近づいた。
 相変わらずフードの下は真っ暗で何も見えない。

『強姦を防ぐだけでは、お前の願いは成就せんぞ』

 釘を刺すような、脅すような声。
「え、ええぇ?! ちょっと待ってくださいよ?! 一体どうすれば……」
『まぁ、そろそろいい頃合いか』
「な、何がですか?」
『明日以降エドガルドに容赦なくアプローチをかけろ。奴の視線に気づいたらフィレンツォが言い出す前に自分から振り向いて追いかけて捕まえろ。但し、絶対奴の心理をのぞこうとするな。そして留学期間中は奴に手紙を送り続けろ』
「そ、そしたら??」
『……鈍いな、だが仕方ない。今まで頑張ってきた事もあるし、力にうぬぼれるような事もない勤勉なお前には言うか』
 さらに、ぬっとフードを、顔らしき部分を神様は近づけた。
『何をしようと留学して拗れたエドガルドは確実にお前を強姦しようとするが、エドガルドに関わることが奴を救うことにつながる』
「えっと、救う?」
 神様の言葉の意味がよく分からなかった。
『分からんようならその時にお前に助言してやる。とにかく、正攻法で奴と向き合おうとしろ』
「わ、分かりました……」

――うぐー……かなり無理難題を突き付けてくれるなぁ……――

 私はそう思いながらも、同時にやるしかないと自分を奮い立たせた。

「──でも、神様、そんな選択肢とかゲームで出たこと一度も無いですよ」
 ふと私はゲームの事を思い出して、神様に尋ねる。
「それはそうだ、とある条件を満たさないと出てこないんだからな。お前は条件を満たしているから無問題だ」
「まじかー……」
 思わず遠い目をしてしまった。




 外での勉強中。
 視線を私は感じるとそれまでの動作を中断して一気にそちらへと走って近づく。
「兄さま!!」
「?!」
 まぁ、一気に走ってくるなど想像もしていなかったであろう視線を向けていた相手――兄エドガルドは驚愕の表情を一瞬私に向けた。

 アイスシルバーの整った肩ほどの髪に、母と同じような色白の肌に、青い目。
 まだ16歳なのに父に似ている端正で、大人びた顔をしている。

――ああ、父に似ているのももしかしたら――

 私はそう思った。
「私に触るな!!」
 エドガルドは顔を怒りの色に染めて、私の手を叩いた。

 ちょっと痛い。

「兄さま、どうして私と話してくださらないのですか?」
「お前と話すことなど何もない!」
「では何故私の様子を見に来るのですか? どうしてですか?」
「――」
 兄は何かを言おうとしたが、だが言えないようだった。




 どんな言葉を言いたかったのか、想像できるようで、想像しにくかった。

 嫉妬や憎悪感情で自分の様子を見に来るとは思わない。
 敵情視察とは異なる。

 後六年後、彼は私を強姦しようとする。
 憎い存在を、嫉妬対象を、陥れるだけではない気がする。

 兄は、エドガルドは、弟である私に、どんな感情を抱いているのだろうか。

――ねえ、エドガルド――
――……いえ兄さん、貴方は私をどう思っているの?――
――弟であるダンテを、どう思っているのですか?――




「ダンテ様!」
 フィレンツォの声に、兄は急いでその場を走り去っていった。
「兄さま!」

『待て、今は追いかけるな』
――もう、言った事と矛盾してません?!――
『今は、だ』

 脳内に語り掛けてくる神様に心の中で文句を言う。
「ダンテ様……」
 フィレンツォが私の傍により、手を握り、私の様子を確認している。

『その男に問いかけてみろ、何故兄はあのような行動をするか』
――むー……わかりました!――

 相変わらず、何を考えてるのか全く分からない神様。
 ただ、責任感はあるのは分かっているので出鱈目なことは指示したりしないだろう。
 なので私は問いかけることにした。

「……フィレンツォ、どうして兄さまは……私の事を……」
 問いかけようと思ったが、うまく聞けなかった。
 単純に、何と問いかければいいかわからなかった。

――どうしよう?――

「……エドガルド様は、ダンテ様が生まれた時から時折ダンテ様の様子を見に来ておりました」
「……」
「陛下が問いかけても、理由を決して答えては下さらなかったそうです。ただ、私はこう思うのです」
「フィレンツォは、どう、思ったのですか?」
「――エドガルド様は、ダンテ様の事を……羨ましいと妬ましいと思っていると同時に愛したいのではないかと」
「あいし、たい……」
「いえ、きっと愛していらっしゃるのでしょう。ダンテ様が怪我をしそうになった時などは悲痛な表情で手を伸ばそうとしておられました」
 流石に其処迄は私は見ていないから、初めて知った。
 フィレンツォが兄を名を呼ぶまで、決して見ないようにしていたから。
「……私が兄さまと同じだったら……もしくは兄さまが祝福されて私が兄さまのようだったら……兄さまと私は普通の兄弟のように、なれていたのでしょうか……」
 ぽつりと呟くと、フィレンツォは何か言おうとしたが、口を閉ざした。

 多分そうなのかもしれない。

『今はそう思っていればいい、後に、お前は答えを理解する。何故お前が、ダンテが祝福を受け、兄であるエドガルドはそうでなかったのかを』

『フィレンツォの言葉の本当の意味を』

 意味深な神様の言葉。
 けれど私は心に留めておくことにした。
 おそらくそれが――


 兄を、エドガルドを救う為の一つであると、そう思って。




 愛憎――
 愛することと、憎むこと。
 愛憎相半ばする、という言葉がある。
 愛している、けれども憎い。
 憎い、でも愛している。

 それは、どれほど苦しい感情なのだろうか――





しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

処理中です...