ハッピーエンド=ハーレムエンド?!~TS転生でへたれ攻めだけど幸せにしてみせる!~

琴葉悠

文字の大きさ
10 / 120
第一章:異世界転生完了、危険フラグをへし折れ!

私と兄~しばらく会えなくなる前に~

しおりを挟む



 私は、エドガルドと直に接触して以来、幾度も幾度も、彼を捕まえ、話しかけ続けた。
 エドガルドの態度はいつも同じ、でも、私は諦めない。
 でも、関わる毎にフィレンツォの言葉が事実だと理解できた。

 エドガルドは確かに私を憎み嫉妬している、でも――
 私の事を愛している。

 憎いなら暴力をふるうなり、酷い言葉で私を突き放すことだってできるのに、エドガルドは、兄は、それをしないのだ。
 私の事を突き飛ばすそうと思えばできるはず。
 それもしない。

 祝福を受けた、次の国王になる弟である私。
 祝福を受けることのなかった、現在の国王の長子ある兄。




 祝福とはなんなのだろう。
 女神は何故、兄に祝福の証を与えなかったのか。

 おそらく、之にも何か意味があるはずだ。
 今はまだ分からない、だが確実に私が歩もうとしている道の先に、私がまだ知らない情報があるはずだ。
 だから今は、少しずつ進もう、兄と接しよう。




 子ども時代の年月の経過の体感速度は早いというが、そうだった。
 二年等あっという間。
 兄が留学する事を私は知る。
 きっと兄は、私に何も言わず居なくなるだろう。
 両親には挨拶をするだろうが、私には何も言わず。

 ならば――


 出発日の早朝、私は一人兄の部屋へと向かう。
 ノックをする。
「誰だ」
 兄は既に起きていた。
 私は何も言わず、扉を開けた。

 名乗ったら入れてもらえないだろうから。

「兄様」
「!?」
 驚愕の表情を浮かべている。
 私だとは思わなかったようだ。
「何の用だ……」
 突き放すような声なのに、違う何かを孕んでもいる。
「……お父様から、私は見送りに出ない様にと言われましたので」
「ならば何故来た」
「見送りに出ないよう言われましたが、挨拶をするなとまでは言われませんでしたから」
 舌打ちする音が聞こえた。
「四年も兄様と会えないのに、挨拶もできないのは寂しいのです」
 私の言葉に、兄の目に表情に、明らかな動揺の色が見えた。
「兄様が私をどう思っていようと、私にとって兄様は大切な存在なのです」

 残酷な言葉なのだろう、これはきっと。

「兄様、私は兄様の帰りをお待ちします。手紙も出します。どうか、お体に気を付けて、善き四年間を」
 これは本心だ。

 エドガルドを歪ませる四年間は確定している、神様が言いきっているのだ。
 それでも、私は祈るのだ。

 私は兄の部屋を後にしようとした。

 兄は私と会おうとしていないと城で働く殆どの人が認識している。
 だから、私から会いに態々早朝部屋にまで行ったとなると後々面倒になる。

 部屋の扉に手をかけた時、腕を掴まれた。
 振り返れば、兄が複雑な表情で私を見て、私の腕を掴んでいた。
「……兄様?」
「……」
 何かを言おうと口を開いたが、兄は口を閉ざした。
「――何でもない」
 兄はそう言って手を離した。
「……では、失礼いたします」
 私は頭を下げて部屋を後にした。




『ふむ』
――何が言いたいのですか?――
『まぁ、今は語るまい』
――この神様は本当に……!!――

 私の頭の中に語り掛ける神様は相変わらず。
 転生ものだったり成り代わりとかで神様がこう出張るのは多いのか少ないのかはもう思い出せないが、この神様わりとしょっちゅう話かけてくる癖に、手助け的な事は少ない。

 神様曰く「お前が割と真面目に考えて向き合ってるからな」と褒めてるんだろうだけど、なんか個人的に複雑な気持ちになる評価を頂いた。

 しかし、本音を言うと私は楽をしたい。
 そもそも人間は基本楽をする為に発展してきた生き物なんだから本質的には怠惰というか楽に生きたがるのが一般的だと私は思っている。
 だけどまぁ、この神様はまだまだ私に「楽」をさせてくれる気はないようだ。

 今はまだ苦労しろ、そんな感じだ。

 まぁ、確かに此処で楽ばっか求めてると、兄が帰ってきた時と、自分が留学した時に痛い目を見そうなので、仕方ないと割り切る事にはしている。

――アレだ、転生、成り代わり、チート、追放系であった少しの間辛くて後は楽に――

 と、考えて止めた。

――私の場合、その後が絶望行きか幸福行きか決まるんじゃないか――
――幸福への道も、絶望への道も今は一緒、どちらになるかはまだ決まっていない――
――でも、これは私が選んだのだ――

 納得させる。
 第一後悔などしていない。

 だから、今はこの苦難の茨道を歩いていこう。
 いつ終わるか、分からない。
 けれども――

 私の欲しい幸せへと至るために、歩んでいこう。




「……」
 私は一人、自室で本を読む。
 父と母や、城の人で働く殆どの人は皆、兄の見送りに出ている。
「――ダンテ様」
「フィレンツォ」
 私の御付きである、フィレンツォが部屋に入ってきた。
 軽食をカートにのせながら。
「ダンテ様、少し宜しいでしょうか?」
「フィレンツォどうしたんですか?」
「……本日、エドガルド殿下とお会いしたのではないですか?」

 ぎくり

「何故、フィレンツォはそう思ったのですか?」
 あまりよくないのは知っているが質問に質問で返すことにした。
「陛下は、ダンテ様にエドガルド殿下の見送りへの参加をしないように言っておりました。ダンテ様は父である陛下の願いを無碍にはしないでしょう。ですが――」
 フィレンツォは眼鏡をかけてないのだが、目の当たりがぎらりと光っているように見えた。
「『会いに行くな』とは言われていないと自分なりに解釈して、早朝にエドガルド殿下の部屋を訪問なされたのでは、と思ったのです」
 フィレンツォの視線が地味に、痛い。
 その視線に、私は負けた。
「……その通りです、私は早朝。兄様の部屋を訪ねました。見張りに見つからないように」
 その言葉に、フィレンツォはふぅと、息を吐いた。
「私のしたことは、良くない事だったでしょうか」
「いえ、ダンテ様。貴方のしたことを非難したい訳ではありません」
「では、何故?」
「此処からは、ご内密にお願いします」
 フィレンツォが私に近づき囁いた。

「エドガルド殿下が呟かれたのです『四年もダンテに会えないなどあんまりだ』と――」

 予想しない言葉に、私は耳を疑った。





しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

処理中です...