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第一章:異世界転生完了、危険フラグをへし折れ!
防ぐ~兄の本心そして選ばれざる理由、予想斜め上の目標~
深夜、音もなく扉が開くのが分かった。
足音がないが、感じ取れた。
けれども、私は寝たふりをする。
体が寝ている間に、神様に色々な状態を演じる事をしごかれたので多分気づかないだろう。
意味あるのかと聞いたらめちゃ怒られたけど、ちゃんとこちらの体にもしみついているようだし。
部屋に入ってきた「侵入者」は静かにベッドに近づいてくる。
体を覆っていた毛布がはぎ取られるのを感じた。
私の上に「侵入者」が跨るのが僅かな軋みで感じ取れた。
手が寝間着の裾を掴んであげたのと同時に私は目を開けて侵入者の――兄の、エドガルドの手を掴んだ。
「――兄上、何をしているのですか?」
兄は、驚愕の表情をしていた。
そうだろう、あの薬が効いていたら、強姦寸前まで目が覚めないはずだからだ。
この「強姦イベント」を、私は美鶴でゲームをしていた時防げたことがない。
なので、基本他のキャラのエンドはハッピーエンドは一度もなく、ついでに兄は自死する結末ばかり見ている。
それは御免だ。
――どうしたら良いものか、此処から先どうすれば――
『まぁ、初見みたいなものだからな。ちなみにゲームの時、強姦を防いだ場合いくつか選択肢がある』
――なんか聞きたくないんですけど……――
『最初に出てくる選択肢は「強姦する」だな』
――ギャー!!――
神様から聞きたくない情報を聞いて心の底で奇声を上げる。
上げたくもなるわ、そんなんハッピーエンド行き絶対ならん選択肢やろ!!
『その通り、そこらへんは分かってるな』
――当たり前でしょー!?!?――
『ちなみに次は「脅す」だ』
――ウボァー!??!――
再び奇声を上げる心の底で。
――それでハッピーエンドいけるかぼけぇ!!――
『その通りだ、何だ分かってるではないか』
――最低限考えれば分かるでしょうがー!!――
『ふむ、ではダンテ、お前に問おう。エドガルドからの手紙から奴の感情等をお前は読み取っただろう』
――読み取ったけど……――
『最後の読み取れなかった感情は、何だったと思う?』
――は?!――
読み取れなかった、うまく感じ取れなかった兄の感情は何か、といきなり問われても困る!
私は兄に何があったかもしらないし、兄がどうしてこんな行動にでようとしたのかさえまだ理解しきれてないのだ。
無茶ぶりすぎやしませんか?!?!
『……割と鈍いな、お前』
――混乱してるんですよ、分かってください!!――
『ああ、そうか、確かに』
神様と会話や論争してる間は時間が止まっててくれて本当助かった。
そうじゃないときつすぎる。
だが、いつまでもこのままという訳にいかないのは理解している。
兄は、私憎んで、死んでほしくて、なのに苦しくてたまらなくて、許してほしくて、助けて欲しくてそれで――
――それで……――
私は思案する。
留学時、殆どの婚約者がいない王族や貴族は婚約者となる相手、伴侶となる相手を見つけて戻ってくることが多い。
けれども、兄はそれをしなかった。
あまり言いたくはないが、後継者にならずとも王族ならば王族と繋がりを欲しがる者達が近づいてくるだろうから、兄は選ぼうと思えば選べたはずだ。
けれども、兄はそうしなかった。
誰も兄の心を射止める人はいなかった?
支えられる人が見つからなかった。
いや、もし、兄の心を既に誰かが射止めていたなら――
もしかして、兄の……最後の掠れた感情、憎悪や苦しみの声に隠された小さな言葉、あれは……もしかして――
あ い し て い る
――待って、つまり兄は――
『正解にたどり着いたようだな「ダンテ」』
神様の言葉、私は理解できた。
そして兄が祝福されなかった理由を知った。
祝福については知っていることは多くない、けれども、知っている事がある。
祝福を持つ者であっても、近親――兄弟、姉妹とは子を生すことはできないという事。
――兄は、私を愛している。だから祝福をされなかった。何故なら、兄は私以外を「愛」せないから――
『そう、それが答えだ。兄はお前を愛している。誰よりも、何よりも、その事実と――』
『お前があまりにも美しく見えるからこそ、愛しく思えるからこそ、他の連中が醜く見え、そして、欲で近づく連中の悪意によって歪み、拗れ、お前がそのような連中に汚されるならいっそ――』
――自分の手で、汚してしまえ……――
『そういう事だ』
他の誰かを愛せていたなら、きっと、兄は祝福されていただろう。
でも、女神は次に生まれる私しか愛せないことを知っていた。
だから、祝福できなかった。
血が途絶えてしまうから。
では私は?
私が兄を愛さないと?
私はその考えを否定する。
なら、何故「ゲーム」で「エドガルド」が攻略対象に含まれる。
その理由は何だ?
『さて、ではその疑問に答えてしまおう。エドガルド個人の所謂ハッピーエンドはゲーム内には存在しない』
――ヴェ!?――
神様の言葉に奇声ばかりあげてしまうが、これは仕方ない。
『まぁ、お前の目的。全員を幸せにするだったか? 悪い言い方だと五股、ゲーム的に言えばハーレムルートか。エドガルドが幸せになるのはそれしかないぞ?』
――ファー?!?!――
『エドガルドが色んな理由で死ぬバッドだけだからな、そ奴の個人エンド』
神様からぶっちゃけられた。
ハッピーエンドがハーレムってちょっと待てやとツッコミたい。
そもそもハーレムルート私の記憶が確かならまともに行けた人誰もおらんはずじゃなかったか⁇
『その通り、大抵個別でビターかノーマルかメリバ系になってるな、ハーレム目指すと』
――……あのー再度認識したんですが、私の進む道って……――
『ああ、険しいぞ、それなりに』
――絶対それなりじゃないですよねー?!?!――
いや、元々全員幸せにするならハーレム系かそれに近い何かしかないと思っていたが、此処で突きつけられる事実に、私は混乱するしかない。
『混乱しているのも構わないが、お前はエドガルドを、兄をどうする?』
――あ、ああそうだ……うん……――
『此処が一つの分岐点だ、間違えればお前は兄を幸せにすることができなくなる』
重い内容。
『さぁ、お前は兄に何と言葉をかける「ダンテ」よ』
『愛故に祝福を得られず、愛故に憎み、嫉妬し、苦しみ、愚行に走った己の兄をお前はどうする?』
ゲームの様な選択肢などない。
私が、私の言葉で、兄を救わなければならないのだ――
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