16 / 120
第一章:異世界転生完了、危険フラグをへし折れ!
防ぐ~兄の本心そして選ばれざる理由、予想斜め上の目標~
しおりを挟む深夜、音もなく扉が開くのが分かった。
足音がないが、感じ取れた。
けれども、私は寝たふりをする。
体が寝ている間に、神様に色々な状態を演じる事をしごかれたので多分気づかないだろう。
意味あるのかと聞いたらめちゃ怒られたけど、ちゃんとこちらの体にもしみついているようだし。
部屋に入ってきた「侵入者」は静かにベッドに近づいてくる。
体を覆っていた毛布がはぎ取られるのを感じた。
私の上に「侵入者」が跨るのが僅かな軋みで感じ取れた。
手が寝間着の裾を掴んであげたのと同時に私は目を開けて侵入者の――兄の、エドガルドの手を掴んだ。
「――兄上、何をしているのですか?」
兄は、驚愕の表情をしていた。
そうだろう、あの薬が効いていたら、強姦寸前まで目が覚めないはずだからだ。
この「強姦イベント」を、私は美鶴でゲームをしていた時防げたことがない。
なので、基本他のキャラのエンドはハッピーエンドは一度もなく、ついでに兄は自死する結末ばかり見ている。
それは御免だ。
――どうしたら良いものか、此処から先どうすれば――
『まぁ、初見みたいなものだからな。ちなみにゲームの時、強姦を防いだ場合いくつか選択肢がある』
――なんか聞きたくないんですけど……――
『最初に出てくる選択肢は「強姦する」だな』
――ギャー!!――
神様から聞きたくない情報を聞いて心の底で奇声を上げる。
上げたくもなるわ、そんなんハッピーエンド行き絶対ならん選択肢やろ!!
『その通り、そこらへんは分かってるな』
――当たり前でしょー!?!?――
『ちなみに次は「脅す」だ』
――ウボァー!??!――
再び奇声を上げる心の底で。
――それでハッピーエンドいけるかぼけぇ!!――
『その通りだ、何だ分かってるではないか』
――最低限考えれば分かるでしょうがー!!――
『ふむ、ではダンテ、お前に問おう。エドガルドからの手紙から奴の感情等をお前は読み取っただろう』
――読み取ったけど……――
『最後の読み取れなかった感情は、何だったと思う?』
――は?!――
読み取れなかった、うまく感じ取れなかった兄の感情は何か、といきなり問われても困る!
私は兄に何があったかもしらないし、兄がどうしてこんな行動にでようとしたのかさえまだ理解しきれてないのだ。
無茶ぶりすぎやしませんか?!?!
『……割と鈍いな、お前』
――混乱してるんですよ、分かってください!!――
『ああ、そうか、確かに』
神様と会話や論争してる間は時間が止まっててくれて本当助かった。
そうじゃないときつすぎる。
だが、いつまでもこのままという訳にいかないのは理解している。
兄は、私憎んで、死んでほしくて、なのに苦しくてたまらなくて、許してほしくて、助けて欲しくてそれで――
――それで……――
私は思案する。
留学時、殆どの婚約者がいない王族や貴族は婚約者となる相手、伴侶となる相手を見つけて戻ってくることが多い。
けれども、兄はそれをしなかった。
あまり言いたくはないが、後継者にならずとも王族ならば王族と繋がりを欲しがる者達が近づいてくるだろうから、兄は選ぼうと思えば選べたはずだ。
けれども、兄はそうしなかった。
誰も兄の心を射止める人はいなかった?
支えられる人が見つからなかった。
いや、もし、兄の心を既に誰かが射止めていたなら――
もしかして、兄の……最後の掠れた感情、憎悪や苦しみの声に隠された小さな言葉、あれは……もしかして――
あ い し て い る
――待って、つまり兄は――
『正解にたどり着いたようだな「ダンテ」』
神様の言葉、私は理解できた。
そして兄が祝福されなかった理由を知った。
祝福については知っていることは多くない、けれども、知っている事がある。
祝福を持つ者であっても、近親――兄弟、姉妹とは子を生すことはできないという事。
――兄は、私を愛している。だから祝福をされなかった。何故なら、兄は私以外を「愛」せないから――
『そう、それが答えだ。兄はお前を愛している。誰よりも、何よりも、その事実と――』
『お前があまりにも美しく見えるからこそ、愛しく思えるからこそ、他の連中が醜く見え、そして、欲で近づく連中の悪意によって歪み、拗れ、お前がそのような連中に汚されるならいっそ――』
――自分の手で、汚してしまえ……――
『そういう事だ』
他の誰かを愛せていたなら、きっと、兄は祝福されていただろう。
でも、女神は次に生まれる私しか愛せないことを知っていた。
だから、祝福できなかった。
血が途絶えてしまうから。
では私は?
私が兄を愛さないと?
私はその考えを否定する。
なら、何故「ゲーム」で「エドガルド」が攻略対象に含まれる。
その理由は何だ?
『さて、ではその疑問に答えてしまおう。エドガルド個人の所謂ハッピーエンドはゲーム内には存在しない』
――ヴェ!?――
神様の言葉に奇声ばかりあげてしまうが、これは仕方ない。
『まぁ、お前の目的。全員を幸せにするだったか? 悪い言い方だと五股、ゲーム的に言えばハーレムルートか。エドガルドが幸せになるのはそれしかないぞ?』
――ファー?!?!――
『エドガルドが色んな理由で死ぬバッドだけだからな、そ奴の個人エンド』
神様からぶっちゃけられた。
ハッピーエンドがハーレムってちょっと待てやとツッコミたい。
そもそもハーレムルート私の記憶が確かならまともに行けた人誰もおらんはずじゃなかったか⁇
『その通り、大抵個別でビターかノーマルかメリバ系になってるな、ハーレム目指すと』
――……あのー再度認識したんですが、私の進む道って……――
『ああ、険しいぞ、それなりに』
――絶対それなりじゃないですよねー?!?!――
いや、元々全員幸せにするならハーレム系かそれに近い何かしかないと思っていたが、此処で突きつけられる事実に、私は混乱するしかない。
『混乱しているのも構わないが、お前はエドガルドを、兄をどうする?』
――あ、ああそうだ……うん……――
『此処が一つの分岐点だ、間違えればお前は兄を幸せにすることができなくなる』
重い内容。
『さぁ、お前は兄に何と言葉をかける「ダンテ」よ』
『愛故に祝福を得られず、愛故に憎み、嫉妬し、苦しみ、愚行に走った己の兄をお前はどうする?』
ゲームの様な選択肢などない。
私が、私の言葉で、兄を救わなければならないのだ――
1
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる