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第二章:エドガルド、自分、そして──
ため込んだもの~見ないふりをしてきたもの~
しおりを挟むエドガルドに、自分をちゃんと見て欲しいと言った日から少しずつ変わり始めた。
私への依存度が少しずつ低くなり、私を「次期国王に相応しい人格と資質の持ち主」等といった色眼鏡ではなく、私個人を少しずつみるようになっていた。
この国民は「偶に抜けているところがあるが、きちんとしたダンテ殿下」と見ている。
その通り、私は完璧超人ではない。
神様曰く「能力的に結構高い」らしいが、根本が私なので、勤勉に見えて実はスゴイ面倒くさがり屋。
だらしないところも多々あるし、抜けている所も多い。
それと、楽をする為に色々と勉強するというだけ。
面倒くさがりだから、正直人に教えるのが苦手だが、楽をする為に、私が開発した物体とかそういうものの作り方を文書化したりしている。
が、非常に面倒くさい。
なのでフィレンツォに「尻を叩かれて」、ひぃこら言いながら文書化して誰でもできるようにしている。
私が王家の人間じゃなかったら、面倒くさがって絶対文書化とか教えるとかしてない。
面倒くさいからこそしないのだ。
――いいか、面倒くさがりなのに仕事したりしてるのは教えるのが面倒くさいのだ!!――
――教えるってのはすげぇ面倒なんだぞ!!――
――作業の文書化とかそういうのも、やりたくない!!――
頭が良いからとか、魔力が高いからとか、それに甘えようとすると、神様が何か言う前に、フィレンツォが釘をさしてくるので、まぁできない。
以前は、エドガルドの件で多少無理をしていたが、それでも私の根っこはフィレンツォは見抜いてたらしく、現在は楽をしようとする私に釘をさすようになっている。
以前は無理をする私を無理やり休憩させるのだったのだが。
「ふぃ、フィレンツォ、お願いだからそろそろ休ませてくれよ……」
「ダンテ様、エドガルド殿下の状態が落ち着いたのですから、自分の事に集中してください、留学前の事前学習だけでなく、工房からの製作方法の書面、文面化をせっつかれてるのですから」
「こ、此処に悪魔がいる……!!」
「お好きなように。全く楽する為に努力する事は悪いこととは言いませんが、ダンテ様は楽したがりと面倒くさがりが本当に酷い」
「いや、もう手がげんか……」
「知ってますよ、ダンテ様が文面魔術を使いこなせているのを? なーんで使わないんですかね⁇ 隠せているとお思いで?」
「ぐががががが……」
文面魔術――というのは、その俗にいうアレ。
自分の頭の中にある文書や絵等を魔力を使って一瞬で紙などに出力する魔術の事。
元の世界では欲しくてたまらなかったが、この魔術を使えるのが分かると扱き使われるのが分かったので隠していたはずが、フィレンツォにはしっかりバレていた。
――ナンテコッタイ――
「つべこべ言わずにさっさと仕事を終わらせてください。陛下からの頼まれごともあるのですから」
「ヴァー!! 父上いい加減息子扱き使うの止めてくんない?!」
「口はいいから手を動かすか、さっさと魔術使って作成してください」
少しばかり、前世からの知識と改善したらいいんじゃないかというものをたやすく実現しちゃった自分の行動を後悔する。
頼まれた仕事を休憩や事前学習をはさみつつ終えたのはその日の夕方。
「もう仕事したくない」
私は机に突っ伏して呟く。
「ダンテ様が後回しにしたのが悪いのです。楽をする為に苦労はするのはいいですが、楽をする為に無理をしても、いいことはありませんよ」
「ぐがががが……」
ぐうの音もでない。
「そもそも、あれだけの職務を一日でこなせるなら、もっと早くからやってください本当」
「まだ私は王様じゃないのだけどもー……」
「ダンテ様が伴侶となる方を見つけて落ち着いたら、陛下は早々に退位して隠居生活をするとおっしゃられてましたが」
「父上それはやめてくれ!!」
「ダンテ様は期待されてるのですよ、さっさと伴侶を見つけろなどとは申しませんが、私が言いたいことはただ一つ。面倒だからって仕事をためないでください」
フィレンツォのジト目に、私は視線を逸らす。
「緊急性の高い内容なら即座に対応するのに、そうでない場合はずるずると引き延ばすのは本当にお止め下さいませ」
「そんなこと言われてもなぁ……」
――こればかりは美鶴の時からの悪癖だから今更治せと言われてもキツイって――
――なんて言えるわけがない――
何故勉強ができないといけないのか、幼い頃理解した。
そうじゃないと騙されるからだ。
無知に、弱みに付け込まれるから、だから勉強は頑張れる。
好きな事は、自分の心を救ってくれる、だから夢中になれた。
でも、その中でも「これ本当に必要?」と思う事柄はたくさんあった。
それはどうしてもやる気が起きなくて先延ばしする悪癖ができた。
どうしても、やりたくないのだ。
楽に生きたいからこそ、必要を感じない事は、やりたくない。
今まで頑張ったのは、全部彼らを「幸せ」にするために必要なことだから。
だから、それと無関係で、私の力とかそういうのに甘えるような内容だとどうもやる気が出ない。
他の人が考えてやって欲しいと思ってしまう。
入浴を終えて自室に戻る。
まだ、エドガルドは部屋には戻っていなかった。
――仕事は全部片づけたし、急なのが来ない限りは留学に向けて勉強しつつ、あとそれと……――
色々と考えると眠たくなってきた。
苦手なことをすると普段以上に頭を使う所為でよく眠くなるのは変わらず、ベッドにたどり着く前に、私は眠気に抗えきれず、私は床に倒れて瞼を閉じた。
頭が撫でられている感触に意識が僅かに覚醒し、そして子守歌が聞こえてきた。
かつての私の時のものではない。
今の私のものだ。
私(ダンテ)の母や乳母達が歌ってくれた子守歌。
――あれ、この声……――
歌っている人物の声に、私はそっと目を開けた。
「♪ ~♪」
エドガルドが歌っていた。
いや、それよりも、この状態は……まさかの……
膝枕??
――ワーオマジかよ――
内心驚きつつも、寝ぼけた目でエドガルドを見る。
「――ダンテ」
エドガルドは歌うのをやめて、私の頬を指の腹で押す様な仕草をしながら言った。
「部屋に戻ったら、お前が倒れているのを見て驚いた。寝ているだけだったから良かったが……」
「はは……すみません、驚かせて」
私は苦笑いで答える。
「お前の執事も驚いていたぞ、疲れてベッドに突っ伏すのは何度か見かけたが、ベッドにたどり着く前に倒れているのは初めて見たと」
「ははは……」
苦笑するしかない。
肩の荷が一つ降りた事で、気が抜けたのだろう。
エドガルドの精神的な様子は安定していのがその理由だ。
神様から「エドガルドは、もう安心だろう」とお墨付きを頂いたのもある。
その結果、かつての私の悪癖、精神的に疲れたらベッドにたどり着く前に倒れて寝てしまうというのが出てしまった。
これは大人になってからかつての私にできた悪い習慣だ。
精神的に疲れ切ると、酷い時は家に帰宅し、ドアに鍵をかけて靴を脱いだ直後に倒れて寝てしまう事があった。
この精神的に疲れてというのは、勿論悪い意味でだ。
人間関係、仕事、そう言った物事がキャパオーバーすると起きる事だ。
今回のはまだ良い方だと思いたい。
うん。
「……ダンテ」
「どうしたんです、エドガルド……?」
「――何故、お前は『嫌だ』と拒否しないんだ。お前は頼まれた事を断る事を殆どしないという、何故だ?」
「――」
エドガルドの問いかけは、私がずっと避けていた事に関する問いかけだった。
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