ハッピーエンド=ハーレムエンド?!~TS転生でへたれ攻めだけど幸せにしてみせる!~

琴葉悠

文字の大きさ
52 / 120
第三章:学園生活開始!

現状把握と過去の事例~自分も愛されたいという叫び~

しおりを挟む



 話に若干置いてけぼり状態で、困惑しているクレメンテに私は声をかける。
「――クレメンテ殿下」
「は、はい。な、何でしょうか……?」
「宜しければ、学院内で私と共に行動をしていただけないでしょうか? そちらの方がより、クレメンテ殿下をお守りしやすいのです」
「で、でも……ダンテ殿下は『客人』の件もありますし……それにご迷惑になって……」
「クレメンテ殿下、私がいつ、貴方に『迷惑だ』等と言いましたか? 言っておりませんとも。それにもし迷惑ならば私は言いますし、私が思ってるならフィレンツォが私より先に言っています」
 私はきっぱりと答えた。
「その通りです、ダンテ殿下は嫌な事は聞かなかったことにするか、無視します。しつこいようなら断ります、ですがダンテ殿下はそう言っておられません、自ら決めたのですそれを『行う』と。ですからクレメンテ殿下、貴方様がそれでダンテ殿下に負担をかけているなど思う必要はございません」
「フィレンツォ、さりげなく私の事下げてないですか?」
「いいえ、とんでもない」
 この野郎、さりげなく「スルーしないで即座に断れ」って言ってやがるな?
 ええい、そうなるまで少し位待てよ!!

――こっちも頑張ってるの!!――

 と、心の中で文句を言いながらも、それを表面に出すことはしない。
「でも、私は……」
 クレメンテの表情は酷く陰鬱になっている。

 それはそうだ、彼は「親から愛されたい」という願いを持っている。
 だが、その想いを踏みにじられる事をずっと続けられ、そして今では身勝手な逆恨みの対象にされてしまっている。
 そして命まで狙われているのだ。
 親に愛されなかった彼は「どうして?」と「私は生まれるべきではなかった?」そう言った感情がぐるぐると渦巻いているのだろう。
 そう言ったものは、簡単に割り切れるものじゃない。

 例え、兄や姉に守られようとも、それはどうにもできないものだ。

 それと――王族の子が養子に出される事はほぼ無い。
 養子と言う物はあるが、この世界では国王は己の子を養子に出したりすることはできないのだ。
 婿に、嫁に出すことは可能だが、幼子を養子として出すことはできない。


 これも、とある前科がある。
 王家がやらかした。
 やらかしたのはエステータ王家。




 当時の国王は、とある事情から男を毛嫌いする王だった。
 王は生まれた子が男だと、即座に養子、もしくは孤児院に押し付けた。
 そして娘のみを甘やかし育てたが――一向に女神エステータの祝福をされた娘は生まれなかった。

 漸く証を持って生まれた子は男の子だった。

 国王はその子も毛嫌いし、とある貴族の養子に出してしまった。
 そして14年後、前世でいう革命が起きた。
 起こしたのは、その養子に出された子だった。
 民は皆その子に従い、貴族たちも従った。

 そして城へとたどり着き、彼は国王にこう言った。

『お前は性別だけで他の者達を判断した、みよお前の娘たちのしでかしたことを。国は荒れ、女というだけで能力がないのに権力を貪る輩がはびこっている!! お前が男を嫌う理由も「女を下に見てる愚か者」だというが、お前達とて同じではないか!!』

『お前の証はただ、色が残るのみ。印は既に消え失せ、王たる資格は無い。故に玉座から退くがよい!! 私が今より国王だ、お前に男だからという理由で排斥され、お前に異論を唱えて排斥された者達で国を立て直す!!』

 その子の言う通り、王にあるはずの女神の祝福の印の痕は、消えていた。
 子の言う通り、王は王である権利を失ったのだ。

 そして元国王の伴侶と、娘たちに言った。

『よくも、緑豊かだったこの国を此処迄荒廃させてくれたな。お前達の罪はお前達の命で償うがいい!! 私はこのような事を二度と起こさぬように、誓おう、女神エステータの名に、主神アンノに誓おう!!』


 王は退位させられたただけでなく、伴侶と娘達、己に媚を売っていた者達と共に、荒れ地をその命が尽きるまで、癒す為の苦行を罰を与えられたという。
 自身の魔力が尽きるまで、血を流すことによって、大地を癒す罰の魔具を付けられ、激痛と日照りに苦しみ続け、魔力が尽きたら、戻るまで休ませられるが、戻ればまた苦行が始まる。

 甘やかされた娘達と媚を売っていた者達は次々と発狂し、そして狂い死んだ。
 娘たちが狂い死ぬのを見て、伴侶は狂って自害した。
 元王は――

『私は間違ってなどいない!! なのに女神エステータも主神アンノも何故救ってくださらぬのだ!!』

 と叫んだ。
 幾度も幾度。
 荒れ果てた国土が癒された頃、苦行が終わる最後の日に、天からの「落雷」で元王は塵も残さず焼かれたと言う。

 その事から、国王たちは話合い、王家は子を養子には出さず、また性別で他者を差別することはやってはならないことにする、と決まったそうだ。




 胎児の性別の件と言い、養子と性別による差別等、前世では全くしらなかったが、今はこの世界で生きて、王族として教育されているのでばっちり知っている。
 胎児の件はこの際まず、置いておこう。

――性別による差別してんじゃねぇかよおい!!――

 本当これである。
 何で昔やったらだめって言ってることやるのかなぁ?
 国王様がよぉ?

 多分アウトゥンノ王国は色々と大変な事になってそうだと予想した。

――まぁ、その場合おそらく国の立て直しはクレメンテのお兄さんであるエルヴィーノ殿下がやってくれるだろう、現国王と、その周辺のイエスマン連中追放して――
『……』
――あの、神様?――

 神様のため息が聞こえた。

――何ですか、その無言とため息は⁇――
『ああ、まぁそうだな、今は、気にするな』
――ああ、いつものですか、了解です――

 いつもの奴らしいので、気にしないことにした。




 そしていつもの如く「戻って」未だ気持ちを消化できないクレメンテを見る。
「クレメンテ殿下、貴方の苦しみがどれほどのものなのか私は理解することができません」
「……」
「だからこそ、貴方のお気持ちを知りたいのです。貴方の苦しみを少しでも理解したいのです」
「え……」
 私の言葉に暗い表情でうつむいていた彼は顔を上げた。
「クレメンテ殿下、貴方とこうして同じ学院、学年で、こうして巡り合ったなら、私はこの出会いを大切にしたい」
 一期一会という便利な四字熟語を使いたいがあいにくそれっぽい言葉はこの世界にはない。
 なので直接的に言う。
「私は『客人』として迎えた彼とは偶然巡り合い、助け、そして彼の事を聞いて『客人』として迎えました、彼を守るにはそれが最善だと思い。それと同じように、顔を合わせ、話をしたクレメンテ殿下を、貴方を守りたいと私は思ったのです」
「……」
「貴方の兄弟であるエルヴィーノ殿下達も、貴方を守りたいからこそ、何かしているはずです」
「でも……私は、父上と、母上に……」
 分かっている、早々簡単に割り切れる程のものではないことぐらい。
「クレメンテ殿下、愛されたいあなたの気持ちはとても純粋で私には真似はできません、ですが――」

「貴方は、貴方を心配し、愛してくれている方々の『愛』を無視するおつもりですか?」

「!!」
 クレメンテは泣きそうな顔を浮かべた。
 吐き出す、前兆だ。

「――兄様や姉様は私と違って母様と父様に愛されている!! 私はどんなに頑張っても認めてもれない、どんなことをしても振り向いてもらえないのに!! 私だって愛されたかった!! 兄様達のように、父様と母様に――」

「愛されたい!!」




 自分だけ認められないことがどれほど辛い事か、私は感完全に理解できるわけじゃない。
 自分だけ認められないという経験はしたが、私と彼の経験は全く異なる物。
 私は「ああ、この人はそういう人」かと見切りをつけれる程度の関係だった。
 けれども、彼は違う、自分の両親だ。
 望む者をもらっている側の人間からの愛など優越感から来る哀れみにしか彼には捕えられないのだろう。

 けれども――


 貴方を愛し、慈しみ、命に代えても守ろうとしている方が傍にいるでしょう?


 気づかないのかい、クレメンテ。





しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

処理中です...