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第三章:学園生活開始!
現状把握と過去の事例~自分も愛されたいという叫び~
しおりを挟む話に若干置いてけぼり状態で、困惑しているクレメンテに私は声をかける。
「――クレメンテ殿下」
「は、はい。な、何でしょうか……?」
「宜しければ、学院内で私と共に行動をしていただけないでしょうか? そちらの方がより、クレメンテ殿下をお守りしやすいのです」
「で、でも……ダンテ殿下は『客人』の件もありますし……それにご迷惑になって……」
「クレメンテ殿下、私がいつ、貴方に『迷惑だ』等と言いましたか? 言っておりませんとも。それにもし迷惑ならば私は言いますし、私が思ってるならフィレンツォが私より先に言っています」
私はきっぱりと答えた。
「その通りです、ダンテ殿下は嫌な事は聞かなかったことにするか、無視します。しつこいようなら断ります、ですがダンテ殿下はそう言っておられません、自ら決めたのですそれを『行う』と。ですからクレメンテ殿下、貴方様がそれでダンテ殿下に負担をかけているなど思う必要はございません」
「フィレンツォ、さりげなく私の事下げてないですか?」
「いいえ、とんでもない」
この野郎、さりげなく「スルーしないで即座に断れ」って言ってやがるな?
ええい、そうなるまで少し位待てよ!!
――こっちも頑張ってるの!!――
と、心の中で文句を言いながらも、それを表面に出すことはしない。
「でも、私は……」
クレメンテの表情は酷く陰鬱になっている。
それはそうだ、彼は「親から愛されたい」という願いを持っている。
だが、その想いを踏みにじられる事をずっと続けられ、そして今では身勝手な逆恨みの対象にされてしまっている。
そして命まで狙われているのだ。
親に愛されなかった彼は「どうして?」と「私は生まれるべきではなかった?」そう言った感情がぐるぐると渦巻いているのだろう。
そう言ったものは、簡単に割り切れるものじゃない。
例え、兄や姉に守られようとも、それはどうにもできないものだ。
それと――王族の子が養子に出される事はほぼ無い。
養子と言う物はあるが、この世界では国王は己の子を養子に出したりすることはできないのだ。
婿に、嫁に出すことは可能だが、幼子を養子として出すことはできない。
これも、とある前科がある。
王家がやらかした。
やらかしたのはエステータ王家。
当時の国王は、とある事情から男を毛嫌いする王だった。
王は生まれた子が男だと、即座に養子、もしくは孤児院に押し付けた。
そして娘のみを甘やかし育てたが――一向に女神エステータの祝福をされた娘は生まれなかった。
漸く証を持って生まれた子は男の子だった。
国王はその子も毛嫌いし、とある貴族の養子に出してしまった。
そして14年後、前世でいう革命が起きた。
起こしたのは、その養子に出された子だった。
民は皆その子に従い、貴族たちも従った。
そして城へとたどり着き、彼は国王にこう言った。
『お前は性別だけで他の者達を判断した、みよお前の娘たちのしでかしたことを。国は荒れ、女というだけで能力がないのに権力を貪る輩がはびこっている!! お前が男を嫌う理由も「女を下に見てる愚か者」だというが、お前達とて同じではないか!!』
『お前の証はただ、色が残るのみ。印は既に消え失せ、王たる資格は無い。故に玉座から退くがよい!! 私が今より国王だ、お前に男だからという理由で排斥され、お前に異論を唱えて排斥された者達で国を立て直す!!』
その子の言う通り、王にあるはずの女神の祝福の印の痕は、消えていた。
子の言う通り、王は王である権利を失ったのだ。
そして元国王の伴侶と、娘たちに言った。
『よくも、緑豊かだったこの国を此処迄荒廃させてくれたな。お前達の罪はお前達の命で償うがいい!! 私はこのような事を二度と起こさぬように、誓おう、女神エステータの名に、主神アンノに誓おう!!』
王は退位させられたただけでなく、伴侶と娘達、己に媚を売っていた者達と共に、荒れ地をその命が尽きるまで、癒す為の苦行を罰を与えられたという。
自身の魔力が尽きるまで、血を流すことによって、大地を癒す罰の魔具を付けられ、激痛と日照りに苦しみ続け、魔力が尽きたら、戻るまで休ませられるが、戻ればまた苦行が始まる。
甘やかされた娘達と媚を売っていた者達は次々と発狂し、そして狂い死んだ。
娘たちが狂い死ぬのを見て、伴侶は狂って自害した。
元王は――
『私は間違ってなどいない!! なのに女神エステータも主神アンノも何故救ってくださらぬのだ!!』
と叫んだ。
幾度も幾度。
荒れ果てた国土が癒された頃、苦行が終わる最後の日に、天からの「落雷」で元王は塵も残さず焼かれたと言う。
その事から、国王たちは話合い、王家は子を養子には出さず、また性別で他者を差別することはやってはならないことにする、と決まったそうだ。
胎児の性別の件と言い、養子と性別による差別等、前世では全くしらなかったが、今はこの世界で生きて、王族として教育されているのでばっちり知っている。
胎児の件はこの際まず、置いておこう。
――性別による差別してんじゃねぇかよおい!!――
本当これである。
何で昔やったらだめって言ってることやるのかなぁ?
国王様がよぉ?
多分アウトゥンノ王国は色々と大変な事になってそうだと予想した。
――まぁ、その場合おそらく国の立て直しはクレメンテのお兄さんであるエルヴィーノ殿下がやってくれるだろう、現国王と、その周辺のイエスマン連中追放して――
『……』
――あの、神様?――
神様のため息が聞こえた。
――何ですか、その無言とため息は⁇――
『ああ、まぁそうだな、今は、気にするな』
――ああ、いつものですか、了解です――
いつもの奴らしいので、気にしないことにした。
そしていつもの如く「戻って」未だ気持ちを消化できないクレメンテを見る。
「クレメンテ殿下、貴方の苦しみがどれほどのものなのか私は理解することができません」
「……」
「だからこそ、貴方のお気持ちを知りたいのです。貴方の苦しみを少しでも理解したいのです」
「え……」
私の言葉に暗い表情でうつむいていた彼は顔を上げた。
「クレメンテ殿下、貴方とこうして同じ学院、学年で、こうして巡り合ったなら、私はこの出会いを大切にしたい」
一期一会という便利な四字熟語を使いたいがあいにくそれっぽい言葉はこの世界にはない。
なので直接的に言う。
「私は『客人』として迎えた彼とは偶然巡り合い、助け、そして彼の事を聞いて『客人』として迎えました、彼を守るにはそれが最善だと思い。それと同じように、顔を合わせ、話をしたクレメンテ殿下を、貴方を守りたいと私は思ったのです」
「……」
「貴方の兄弟であるエルヴィーノ殿下達も、貴方を守りたいからこそ、何かしているはずです」
「でも……私は、父上と、母上に……」
分かっている、早々簡単に割り切れる程のものではないことぐらい。
「クレメンテ殿下、愛されたいあなたの気持ちはとても純粋で私には真似はできません、ですが――」
「貴方は、貴方を心配し、愛してくれている方々の『愛』を無視するおつもりですか?」
「!!」
クレメンテは泣きそうな顔を浮かべた。
吐き出す、前兆だ。
「――兄様や姉様は私と違って母様と父様に愛されている!! 私はどんなに頑張っても認めてもれない、どんなことをしても振り向いてもらえないのに!! 私だって愛されたかった!! 兄様達のように、父様と母様に――」
「愛されたい!!」
自分だけ認められないことがどれほど辛い事か、私は感完全に理解できるわけじゃない。
自分だけ認められないという経験はしたが、私と彼の経験は全く異なる物。
私は「ああ、この人はそういう人」かと見切りをつけれる程度の関係だった。
けれども、彼は違う、自分の両親だ。
望む者をもらっている側の人間からの愛など優越感から来る哀れみにしか彼には捕えられないのだろう。
けれども――
貴方を愛し、慈しみ、命に代えても守ろうとしている方が傍にいるでしょう?
気づかないのかい、クレメンテ。
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