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第四章:ちょっと波乱すぎない?!

初講義~予想外の事態?!~

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「……」
 講義部屋に、明らかに一年ではない人達がいる。
 というか視線を感じる。
 ただ姿には記憶があった。

 馬鹿男ベネデットをぶちのめした時に、私に研究室に来ないかと言っていた人達の姿だ。

 全員いる訳でもないので気にする必要もないかと思った。
 でも気になったのが、何か妙に講義部屋がみっしり……いやなんか何時の間にか受講者数が増えている、机はほぼ満席。

――なるほど、興味本位か――

 他の分野でもどういった能力があるか知りたいのだろうという連中もいれば、ベネデットのようにこの分野なら勝てると思っている者もいるのだろう。
 勝てるというより、優れていたなら王室直属の道が開けるかもしれないと思っている。

――安直な――

 ため息をつきつつ、周囲を再度見渡す。
「……」

 居た。

――あの「二人」がいる――

 まだ接触をできていない二人が、後ろにいるのを確認すると、何でもない様に講義が始まるのを待つ。
 二人は私が自分達に気づいたという事に「気づいて」いない。
 まだ、私が二人を自分に興味がある烏合の衆の一部としか認識していないことを理解している。
 だから「気にしない」ことにする。

――今優先すべきは――

 相変わらず、対抗心をバリバリこちらに向けている馬鹿男ベネデット
 前世の記憶だと此処迄邪魔者というかうざかった覚えはないのに、なんで今はこうなのだとイラつくので、鼻っ柱へし折る。

 鐘の音が響き、白い服を着た緑色の髪に、眼鏡をかけた男性が入ってきた。
 助手らしき人達が何かを運んできて、教壇の前のテーブルに並べていく。

「……」

 男性の姿は、前世で記憶にある。

――ということは、彼が教授か――

 勝手に納得しつつ、いつもの癖でどういう人物か「鑑識」してしまう。

――魔力がかなり高いな、という事は見た目は30代くらいだけど実年齢はもっと上かな?――

 男性がこちらをみてにこりと笑った。

――やべ、気づかれた?――
『それはない、ただ振り向いて目が合っただけだ』
――そ、それなら良かった――

 私は男性に対して微笑み、頭を下げる。
「――初めまして、私がルチェ・ソラーレ学院で貴方達に調合錬金学を教えるアルマーニ・セデュムと申します。こう見えても私は70過ぎのおじいさんだからね、お兄さんじゃないよ! 私はおじいさん!!」




――……やはりこの世界の外見年齢と実年齢の不一致感がやべぇ――
『今更だろう』
――しかも人によって差があるからマジ慣れぬ――
『諦めろ』
――デスヨネ――




 そんな会話を神様としてから「戻り」と教授――セデュム教授の話に耳を傾ける。
「さっそくだけど、貴方達ができることを見せてもらいたいと思います」
 なんだろう、できることとは。
 セデュム教授は笑顔のまま言う。
「此処にある素材を使用して薬、道具何でも良いので作ってみてください!!」

――割と面倒だなぁ――

「但し、調合術もしくは錬金術は使用して下さい!! では始めてください!!」
 セデュム教授はそう言って両手を合わせてパンと音を鳴らした。

――なるほど、調合か錬金どっちかは使用すりゃ、何してもいいのね――

 私はそう解釈して、駆け出して、素材を持っていく生徒たちの残りの中から目的のものを手に取っていく。
 クレメンテとエリアに関しては、大丈夫そうだ。
 あの馬鹿男はかなり稀少な素材を見つけており、満足げに、自信たっぷりの表情で作業を始めている。

――さぁて、では始めましょうか――

 その気になればだれでも取りに行けるような素材を手に取り、私は深呼吸をする。


【魔術元素抽出】
 必要な構成物質を取り出す。

【魔術元素変換】
 構成物質を変換する。

【魔術元素組み換え】
 構成物質を求めるものに組み換え、組み合わせる。

【魔術元素注入】
 足りない分は自分の魔力から補う。

【再構成】
 そして「素材」を構成しなおす。


「――連勤アルケミア
 私の手元が光、そして消えると、透明な小瓶に、青く輝く液体が入っていた。
「こんなものでしょうか?」
 私はそう言って小瓶を眺める。
 フィレンツォが引きつった表情をしていたがこの際スルーしておく。

――流石フィレンツォ、気づくの早いなぁ――

 とは思いはするが。




 セデュム教授は一人一人の作ったものを見て「すごいねぇ」という言葉を基本繰り返している。
 偶に「駄目だよ、初回だからって手をぬいたら」と諭すような事を言うので、きっちり見ているのが分かる。
 どうやら、ちゃんと真剣につくったか、そうでないかでこの教授は判断するようだ。
「わあスゴイ!! かなり品質の良いグリエ・リキナじゃないか!!」
 ベネデットが作ったのはいわゆるヒールポーションつまり回復薬だ。
 確かに品質は良い。
「凄いなぁ!!」
「当然です、私はジラソーレ伯爵家の後継ぎですから!!」

 後で調べたが、伯爵家といっても色々ある通り、ジラソーレ家は伯爵家でもかなり有能とされ、エステータ王国の国王であるカリーナ陛下からの信頼もそれなりにあるのだが……肝心の嫡男であるベネデットが、自尊心が高すぎるという欠点がある。
 せっかくの才能が性格で台無しというオチが今ついているので、婚約者がそれを治する為に、あえて離れて視野を広げるようにと別々の学院になったのだ。

――婚約者さん、申し訳ない、私はこやつの鼻っ柱へし折りまくるつもりです――

 漸く私の所に、教授が来た。
「ダンテ殿下はどのようなものを? 作ったのですかな?」
「こちらです」
 私が作った物を見せると、教授が硬直した。

 エリアとクレメンテ、ブリジッタさんは何を錬金したのか理解できていない。
 フィレンツォは苦い表情を浮かべて、こめかみを抑えている。
 ベネデットは、教授が何故硬直しているのか分からず、こちらを凝視している。

「え、エリクサー……!! ど、どうやってあの素材でこれを?!?!」
 硬直していた教授が、声を絞り出すと一気に講義室がざわめきだした。

 エリクサー、RPGで有名なあのエリクサーだ。
 つまり、めちゃ稀少。
 作るのも大変なのだ。

「はい、錬金か調合のどちらかを使用すれば他は何をしてもいいと私は思いましたので、魔術元素を抽出して、変換し、組み換え、不足分は私の魔力で補い、再構築してから錬金を行いました」
 私は自分がやったことを淡々と説明する。
 対した事をやっているつもりはない。

 私に対抗心を向ける馬鹿の鼻っ柱を追ってやりたかっただけ。
 なのだが――

 教授はその場に崩れ、床に手をついた。
「セ、セデュム教授?!」
「も、もう、私が君に教えられそうなことは、ない」

――はあああああああああ?!?!――

 教授の言葉に私は心の中で絶叫した。





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