85 / 120
第五章:結ばれた縁と謎
自分が分からないけども~従者の爆弾発言~
しおりを挟むフィレンツォの言葉に、私は自問自答する。
――そうなのかなぁ?――
『そうだぞ、お前は自分の中で答えが一つ固まっているなら迷うことなく答えられる。だが、逆に言えば相手が求める答えがどれなのか分からないと答えや説明が上手くできなくなる』
神様の言葉。
少し美鶴だったころの人生と、今の人生を振り返ってみて納得する。
確かに、その通りだ。
答えが複数あったり相手の求めるものが分からないと途端に説明ができなくなる。
けれども、書きだして整理することで答えを出す、説明をすることはできた。
『まぁ、勉学面での説明に悩むなら、一旦書きだして整理をしてから説明するなりすればいい。ただ』
――ただ?――
『フラグ――基恋愛的な事柄に関してはお前のへたれっぷりを理解しているからそれ相応の答えを出してやる、出せなかった場合』
――何か……すみません……――
神様の言葉に私は一気に自分のアレな所を自覚する。
『まぁ、それも考慮してお前を導くから安心しろ。お前に所謂スパダリなど求めん』
――求められても困ります――
自分に全くない要素を求められたら私は困る。
――スパダリ要素なんぞ、私にはカケラもないわ!!――
才色兼備、非の打ち所がない、完璧、なんて存在ではないのだ私は。
人と話すのは苦手だし、性格も根は陰キャ、此処で頭とかがいいのは神様の加護的なもの。
『おい、そこは自分の努力も否定するな。努力は報われるとは限らないが、努力はお前を裏切ることはなかった、だから此処迄来たのだ、そこは誇れ。自分を褒めよ』
神様にそうは言われても、何故か私はまだ自分を褒められない。
どうしてかと聞かれたら、まだ自分が皆を幸せにする事ができるって言える地点に立ってないからだと思う。
エドガルドの方は何とかなっているけども――
エリアや、クレメンテ、アルバートに、カルミネ。
この学院で出会う四人に関しては、そうではないのだ。
まだ、それぞれが抱える問題が解決していない。
解決して、皆を幸せにできるところまで持っていって、漸く私は自分を褒める事が出来るのだろう。
『やれやれ、難儀な性格だ』
――自覚してます――
『だが、その方が良いだろう。調子にのって失敗するよりはな』
――ですよね……――
調子に乗ると大体人は痛い目を見るのだ。
肝に銘じておかなければと自分に言い聞かせる。
『まぁ、問題の解決関係に関しては向こうからの反応待ちだ、あまり無理をするな』
――さよですか……――
向こうから待つしかないというのは、もどかしい。
『そんな事言って今からお前が積極的に向こうにアプローチしすぎると、後々地獄を見かねんぞ?』
――分かりました、私は大人しく気になる時こそりとフィレンツォに聞く程度にします――
神様の言葉に手のひらを返してしまう。
――いや返すだろう?!――
――地獄ってなんですか、マジ怖い!!――
『まぁ、後々分かる』
神様の「今は聞くな」宣言を、私は受け入れるしかない。
この神様、私の性格とか把握した上で、助言しているからだ。
だから、下手に助言をすることで、私が逆にヘマをする可能性が高いと助言とかしてくれない。
なので、深く問うことはしないことにした。
『――此処でうだうだしてても仕方あるまい、さっさと「戻れ」』
――え、ちょっとー?!?!――
神様に強制的に戻された。
――向こうから呼んでおいて酷い!!――
そう思っても、どうしようもない。
「ははは……そうかは、分からないですが」
私はフィレンツォの先ほどの言葉を濁すように答える。
「何をおっしゃいますか、守るべき方であれば全身全霊を込めて守ろうとし、敵であると見定めたなら迷うことなく打ちのめすのですから」
「……打ちのめすのは否定しませんが、全身全霊かけて守れているかと聞かれたら肯定する自信が私にはありません」
確かに、打ちのめした事はあるが、守れているかと聞かれたら私は「勿論だ」と胸を張って言う事ができない。
そんな私の耳にフィレンツォの呆れのため息が聞こえた。
「何寝言をおっしゃられているのですか? エドガルド殿下の件を解決に至らせたのはダンテ殿下、貴方様ではないですか」
フィレンツォははっきりと言った。
「クレメンテ殿下が暗殺の対象にされた件、エリア様への虐待、アナベル家とシネン家の問題、それらを見つけ、解決の糸口をつかんだのはほかならぬ貴方様ではないですか」
「待ってください、フィレンツォ。まだどれも解決しきっていません。アナベル家とシネン家の問題だって発覚したばかりではないですか」
「ですが、貴方様が動いたからこそ、どの問題も白日の下にさらされたのです。どうか、胸を張ってください、ダンテ殿下。貴方は守るべき相手を見つけては必ず守ろうとしています」
「……」
返す言葉が思いつかず、私は口を閉ざしてしまった。
――そうなのだろうか?――
――私は、今も、私がどんな存在か、分からない所が多すぎる――
そう思ってしまう。
「――ダンテ殿下、貴方様は素晴らしい御方なのはご理解いただきたい。私は貴方様がどれほど『面倒くさがり』で『対人交流が嫌い』で『臆病』なのを理解した上で、先ほどの発言をさせていただきました」
「んな?!」
フィレンツォの続きの言葉に、私は思わず声を上げてしまった。
――この野郎!!――
――よりにもよって二人がいる場所で言うか普通!!――
幻滅される恐怖を抱えながら二人をちらりと見る。
エリアは困った顔をし、おろおろしている。
クレメンテはふぅと息を吐いて「そんな事知っています」と言わんばかりの顔をしている。
「無礼と承知で、クレメンテ殿下とエリア様にはダンテ殿下の根本にある性格などをお伝えしております」
「はぁ?!」
寝耳に水とはこの事だ。
――何考えてやがるこの馬鹿!!――
――普通主人の仮面の下というか本性は隠しておくべきもんだろう?!――
――知ってて二人に伝えるとか何してくれてんだお前は!!――
正直頭が痛いどころではない。
私の駄目駄目な所を知られたくない相手に知られたのだ。
――大切な相手には知られたくない!――
「フィレンツォ!! お前言って良いことと悪いことが――!!」
思わず、フィレンツォを怒鳴りつける。
口調も、対外的なものを気にせずフィレンツォと二人きりの時のものになる。
「貴方様は大切な人に程、自分の弱い部分や悪いと駄目だと思っている箇所を隠したがります。ですが、はっきりと言わせていただきます。ダンテ様」
「何だ?!」
フィレンツォははっきり言った。
「クレメンテ殿下とエリア様を幸せにしたい程大切ならば、自分の駄目な所をひっくるめて自分の事を好いてもらうのが一番です」
「はぁ?!」
思わずすっとんきょうな声がでる。
いや、確かに、私の目標というか神様の設定した地点は五人と幸せになる……基ハーレムを築くことだが、私はこれは誰にも言ってないし、そんな素振りした覚えもない。
一体何がどうして、フィレンツォはこんなことを言い出したというか理解してるんだ?!
ぐるぐると困惑している私に、フィレンツォは止めを刺すように言った。
「――エドガルド殿下の時のように」
と。
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる