84 / 120
第五章:結ばれた縁と謎
甘え下手で説明下手
しおりを挟む『もうそろそろ時間だ』
「――あ、そうなんですか……」
神様の言葉に、私のこの時間が終わる事を理解する。
空間は入ってきた時の扉以外は全て真っ白な空間に戻る。
「また、来れますかね?」
『可能だ。それにこの施設でお前が何をしたかは決して記録に残らないから安心しろ』
神様のその言葉に安心する。
『だが、この施設に甘えすぎるな。同じ施設がお前の国にも存在するが――それを使いすぎるということは、お前の歩む道に置いては良くないことだ』
「……そうですね」
それ位私にもわかる。
今の私は、誰ともまだ明確に付き合っていないし婚約もしていないからいい。
でも、婚約後――この施設に依存しているのであれば、それは彼らにとってそれはあまりよくない事だ。
それは「自分達では役不足」とか「自分達では共に歩むに足りない」と思わせてしまうから。
――今だけ、そう今だけ――
――皆と歩んでいくのが私の願い、一緒に幸せになりたいのだから――
『それを忘れずにいるなら良い』
神様はそう言って姿を消した。
一人ぽつんと取り残される。
鐘の音が響いた。
美しく澄んだ鐘の音が。
「?」
その直後扉が開いた。
「ダンテ様、お迎えに参りました」
フィレンツォが中に入ってきて頭を下げてから私の顔を見る。
「ありがとう、フィレンツォ」
私はそう答えた。
多分すっきりとした表情で言っただろう。
私のその顔を見たフィレンツォはほんの少しだけ、笑った。
「ゆっくりと休むことはできましたか?」
「ああ、出来たよ。有難う、フィレンツォ」
「ダンテ様が、休めれた事だけで私は嬉しいのです」
――どんだけ私が休むの下手だと思ってるんだよ!!――
『仕方ないだろうが、事実なんだからな』
――ぐむむー!!――
神様の言葉通りでもあるので、反論はできない。
「じゃあ、屋敷に戻ろうか」
「はい」
私はフィレンツォと共に、施設を後にした。
屋敷に戻ると、居間のテーブルの上でクレメンテとエリアを見ながら頭を抱えていた。
ブリジッタさんは、二人に気分転換を促すようにお茶を二人に出していた。
「何をしているのですか?」
私が声をかけると、二人が同時に顔を上げた。
「ダンテ殿下……その御休憩の方はもう宜しいのですか?」
「ええ、ゆっくり休みましたから。それよりもお二人は?」
私が問いかけると、クレメンテは酷く自分がふがいないような、そんな感じの表情を浮かべた。
「……お恥ずかしいことなのですが、今のままでは私もエリアも学院の講義についていけない気がして……その」
酷く気まずそうにいうクレメンテの言葉の意味を理解して私は額に思わず手を当ててしまった。
クレメンテもエリアも、今までの環境は良いものとは言い難い。
つまり勉強面でも他の同年代の子らと比べて、あまり質が良いものを受けられなかったことがわかる。
幾ら伯爵家の出であるブリジッタさんとは言え、王族の子が本来受けるような勉強を教えるのは無理がある。
エリアに至っては表立ってそんなことができるような環境じゃないのは分かる。
「……」
私が教えるのも構わないが、多分これはやらないほうがいい予感がする。
「フィレンツォ、お二人の勉強を見てあげてくれませんか?」
私がそう頼むと、フィレンツォはにこりと微笑んだ。
「かしこまりました。クレメンテ殿下、エリア様、宜しいでしょうか?」
「え……その、宜しいのですか?」
「僕、なんかに、その……」
戸惑う二人に私は微笑む。
「良いのですよ。それと、私はその教えるのが下手なので私の教師をやっていたフィレンツォが適任と思いましてね」
――人に教えるの、できない訳ではないが苦手なのでそういうのは正直、やりたくない――
――もともと、教えるのが苦手だから、それで精神的にきつくなるのは今は止めておこう――
『それでいい』
神様の声が聞こえた。
なら、きっとこれが正しいのだろう。
「そうですね、ダンテ殿下は覚える事と新しい事を考え作る、応用する事などは得意ですが、人に説明するとなると、文章にしないといけない程口頭での説明が下手すぎますからね」
「フィレンツォ、わざわざ私の事褒めた上で落とさないでくれませんか?」
フィレンツォの言葉に若干棘を感じる。
それも仕方ない、無自覚とはいえ無理して周囲に頼らず、抱え込んできた私が漸く頼ったのだ、嬉しい以上に「漸く頼りやがりましたかこの頑固主人は」的なのがあるのだろう。
頑固というか、頼るの下手なだけなの分かってるんだけど、私の性格上自分から頼まないと後々拗れることが起きやすいからこそ、フィレンツォは私が頼る事を求めるのは分かる。
――もっと他人に甘えることができたらなぁ――
とは思いはするものの、現在私が甘えられる、頼れるのはエドガルドに母、それとフィレンツォだ。
父はちょっとその色々あって甘えるとか頼るのは何かしたくない。
――悪い人じゃないんだけど、たまにやらかすからなぁ――
エドガルドと母は現在、共同都市メーゼには、此処にはいない。
居るのはフィレンツォだけ。
ブリジッタさんはそう言った事柄を頼れるような間柄でもないし、エリアにクレメンテも頼り合う程の関係にはなってない。
ようやく繋がりができたアルバートとカルミネも同様だ。
教授に頼るのはできない、こう言った事柄で私が頼るのは不自然だからだ。
「私が教えることができるのは基礎、と思ってください。専門的な事は教授達にお聞きするのが良いでしょう。学院ではそういう指導も行ってますので」
私が思っていた事をフィレンツォが先に言った。
「――そうですね、それがいいですね」
私は頷く。
ただ、これでは少しだけ突き放してしまっている気がする。
これは当たってるだろうかと悩んだ。
『そうだな、とりあえず自分にたずねてもいいが、説明ど下手くそになることを念を押していうように』
神様からのちょっとイラっとくる助言を頂いた。
けれどもそれは決して見せない。
「あの……ダンテ、殿下にお聞きするのは、その……」
私がどう言い出すかと考えていると、エリアが良い感じに言い出してくれた。
「ええ、私で宜しければ」
私がそう答えるとエリアは少しだけ口元を柔らかく緩めた。
「ただ、フィレンツォが言っているように、私はそう言った説明をするのが得意ではないのです、お恥ずかしいのですが。ですから私の説明で分からない箇所があったら遠慮なく言ってくださると助かります」
「は、はい……」
何とか神様に言われたことを実行できて内心安堵する。
「ダンテ殿下、どうして説明が苦手なのですか?」
安堵している矢先にクレメンテにたずねられ、私は言葉はどう説明したものかと悩んだ。
「その、私のこの反応で分かってくだされば……幸いです」
そんなあまりにも説明になってない答えを返すことしかできなかった。
「これでお分かりいただけたと思いますが、ダンテ殿下は本当に説明が下手なのです。丁寧に説明をする場合は紙に一度書いてからの方が精度が上がるのです」
「ははは……フィレンツォの言う通りです」
「ただ、自分の中で既に揺るがず、もしくはぶれない状態にある事柄に関しては説明は迷うことなくできます」
フィレンツォ言った言葉に、私は少しだけ耳を疑った。
――本当に、そうなの?――
自分では知らない事。
これは、事実なのだろうか?
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる