ブラック企業を辞めたら悪の組織の癒やし係になりました~命の危機も感じるけど私は元気にやっています!!~

琴葉悠

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砂塵の災厄~鎮めの反動~

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「兄者から連絡が来た『災厄の一つがやって来た、「鎮めの乙女」の手を借りたい』とな」
 龍牙が癒し部屋にやって来ると美咲にそう言った。
「分かりました、やってみます」
「WGからは四天王が護衛につくが、黒炎お前も護衛につけ、夫だろう」
「分かっております」
「黒炎さん」
「勿論俺達も見張りに着く、くれぐれも無茶だけはするな」
「はい」
「その前にこれを着ていけ」
「はい?」
 防塵服とマスク、それにフードつきのコートを渡され美咲は首をかしげた。
 が、その理由をすぐ知ることとなる──




「何なんですかこの砂嵐──‼」
 黒炎に支えて貰わないと立ってられない程の暴風と、防護しているのに砂粒が体を打つのを感じる程だった。
「砂塵の災厄。その砂嵐で住居を破壊、人を負傷させる。その上砂にはガラスが混じってるから失明の恐れがある、生活区域にくるまでに片付けなければならんのじゃ」
「兄者よ、美咲は腰が引けてるが大丈夫なのか?」
「なぁに、彼女の事は四天王息子達から良く聞いておったわい」
「というと」
「自棄になって突っ込む」
「おい待て! それは危険だろう!」
「自棄になって突っ込むのを鵤達とお前さんとこの幹部が止めておるから安心しろ」
「何も安心できん‼」
 龍牙は王牙に食ってかかるが、王牙はニヤニヤと笑っているだけだった。




「むがー! 離せー! こんなはた迷惑な災厄引き起こしてる奴速攻で止めにいく‼」
「美咲落ち着け、姿が今見えるから、もう少し待て‼」
「美咲、落ち着け」
「ふーふー……はーふー……良し落ち着いた」
 黒炎に言われて落ち着いた美咲は目の前を見据える。
 よくよく見れば巨大な鳥のような生き物が居た。
「よし、行くぞ」
「はい!」
 黒炎の手を握り、美咲は砂塵の厄災へと近づいていく。
 厄災は声のようなものをあげていたが、美咲を目にすると、くちばしを閉じ、美咲を見据えた。
 砂嵐がその場所だけ止む。
「美咲、マスクを外し、コートを脱いでくれ、直に触った方がいいらしい」
「わ、わかりました!」
 美咲はマスクを外し、コートを脱いで黒炎に預けて、頭を下げてその場に座り込む災厄に頭をくっつけ、手でだくように触れる。




『何に怒っているの?』
『人の諍いに我らは怒っている』
『でも、人は手を取り合うこともできるわ、私が所属している組織と、友達が所属していた組織がそうであったように』
『争いあう組織だったのか?』
『うん、知ったときは驚いたけど』
『……良かろう、星の命を宥めた乙女、其方を信じよう』
『ありがとう』
『でも、くれぐれも注意せよ、其方は──』

『貴重なのだから』




 厄災は蜃気楼のように消えてしまった。
 砂嵐も全て止む。
 晴れ渡る青空を見て美咲は跳ねた。
「よっしゃー!」
「さすがだぜ美咲」
「さすがだね美咲」
「さすがじゃね、美咲」
「さすがじゃねーか、美咲」
 鵤達がわらわらと集まって、わしゃわしゃと美咲の頭を撫でる。
 黒炎が盛大に咳をして、四人をどけると、美咲の髪を梳き、美咲を抱きしめた。
「よくやってくれた美咲、そして無事で良かった」
「はい、黒炎さん、私やりました!」
 美咲は無邪気に笑って黒炎を抱きしめ返す。

「羨ましいよ……」
 毒刃が血涙を流して言うと、鵤と糸刃はそれに同意していた。
「けっ女々しいな」
「音刃おめぇなぁ!」
「牽制し合って、学校から出た後連絡もしなかった俺等が悪い、その間に誰かに取られても文句はいえねぇ。ただソイツに美咲が愛想尽かしたらかっさらえばいいだけだろう」
「残念音刃。私黒炎さんに愛想尽かすことはないから!」
「それならいいんだ」
「お前どっちなんだよ!」
「俺は美咲が幸せならそれでいいんだよ」
「音刃……お前以外と男前だな」
「ああ゛⁈ おい、鵤。どう言う意味だ‼」
「二人とも喧嘩しない‼」

「おーい‼」

「オヤジ‼」
「爺‼」
「会長‼」
「会長」
 WGのトップの王牙と龍牙がやって来た。
「会長さんに、龍牙様!」
「美咲ご苦労だった」
「美咲さん、ご苦労様」
 龍牙は淡い笑みを浮かべ、王牙はにかっと太陽のような笑みを浮かべた。
「今回もなんとかなりましたが……あの災厄って何体あるんでしょう?」
「六つじゃ。今回ので一つ消えたから後五つ」
「後五つもあるのか──」
 美咲は遠い目をした。
「昔は十二あったらしいが、それまでのリフレ──鎮めの巫女のおかげで六つまで減ったのじゃ」
「十二⁈」
 美咲は驚愕の声を上げる。
 そして少し考え、げんなりした表情を浮かべる。
「あのー……私達の敵さんが居なくなった六つの厄災を復活させている可能性は」
「あ──……無きにしもあらずじゃな」
「おい兄者」
「うへぇ、そうだったらどうしよう……」
「まぁ、連続できたのを十二鎮めた結果リフレイン様は衰弱し亡くなられたのだ、リフレイン様は、厄災の来る間隔を長くしたと仰っていた。大丈夫じゃろ!」
「兄者の大丈夫は信用ならん」
「同感だ、オヤジの言ってる事は信用ならねぇ」
「えー?」
 龍牙と鵤に責められ、王牙はがっくりと肩を落とす。
「それを考えると、しばらく癒やし係は休みにした方がいいな?」
「え⁈ 暴動起きません、それ⁈」
 龍牙の言葉に美咲は問いかける。
「起きそうだが、それを鎮めるのが俺達の役目だ」
「何かすみません……」
「龍牙様」
「何だルロー」
「その件なんですが、癒やし係当面休止と伝えたところ暴動というか抗議が起きまして、週一、か週二でいいからやって欲しいとの声が」
「全く馬鹿共が」
「あ、あの私それでいいですよ。勿論厄災に対応したら休ませて貰いますけど……と言うか今凄く疲れてて眠いん……」
 美咲は最後まで言うこと無く視界を暗転させた。




 倒れそうになった美咲を抱きとめ、黒炎は抱きかかえた。
「あの短時間でこの状態になるのです、それに『鎮めの乙女』も『落とし子』とは言え、美咲は私達よりも非力な存在」
「そうだな、今はとにかく休ませ滋養に良い物を食べさせるのが良いだろう」
「畏まりました」
 黒炎は自分の使役獣を呼び、それに乗ってその場を後にした。

 死んだように眠る美咲の頬を触る。
 少しばかり冷たく感じられたので、わずかに自分の体温を上げて美咲の首に触り温める。

 少しずつ美咲の体温は上がっていった。
 呼吸もはっきりとするようになり、黒炎は安堵する。

──このようなことが休みなく続いたのだから先代の鎮めの乙女は死んだのか──
──美咲は、決してそのようにさせてたまるものか──

 決意を抱き、黒炎はドラゴンファングの本拠地へと戻っていった──





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