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見られたくないこと~漸く語ること~
しおりを挟む康陽は会議室で書類を見ていた。
「う!」
「こーよーおにいちゃん」
「こうようおにいちゃん」
マヨイとエルとりらがやって来た。
「どうしてここにいるの? 蓮おねえちゃんとけんか?」
「いや、脱皮が連続で来たらしくてな、見られたくないというからここにいる訳だ」
「あーわかるの、だっぴはみられたくないの」
マヨイが納得したように言う。
「隼斗にもか」
「うん」
「他の二人は見られたくないところとかある?」
「おなかがすいてこっそりおにくたべちゃうのはみられたくないの」
「それは盗み食いしてるからだな、もうちょっと肉の量を増やせないかジンにそれとなく言っておいてやる」
「こーよーおにいちゃんありがとう!」
エルは嬉しそうに無邪気に笑う。
「りらはないのか」
「うーん、ひととかをバラバラにしてるところはみられたくないなぁ」
「わたしも、わたしも」
りらの発言にマヨイも同意する。
殺人現場や、異形殺しの現場を番いには見せたくないのだろう。
──自分の異形性のある種の「醜さ」を見せたくないのだろう──
康陽はそうなっとくする。
「何の話してるのー?」
天井からフエがぶらんと下りてきて、そして着地した。
「見られたくないところを聞いているんだ」
「そりゃあ零さんとシテるところと、殺人現場と異形殺しの現場かな」
「あ、れいさんのはわたしも」
「わたしもわたしも」
「わたしも」
「あー……」
そりゃそうだろうなと康陽も納得した。
そして自分もできればみたくないと、思った。
嫉妬心から。
「柊さんに見られてみろ、何が起きるか分からんぞ?」
「そうだな、あの柊だ、発狂どころじゃないな」
「異形性から零さんとしなくちゃ分からないのは漸く分かってくれたけど、それでもやっぱり嫌だと駄々こねてるからね未だに」
「隼斗さんもー」
「おにいちゃんも」
「銀おにいちゃんはしずかだよ?」
「……それは彼は静かだろう」
銀という青年が精神が壊れている事を康陽は知っている。
人形遊びをする意外はほとんどりらに世話をされている状況の彼がそんな判断できる訳がない。
「こう考えてみると意外に大切な人に対してみせたくないことが多いな」
「そうだねー、番いだから見せたくないってのもあるからねー」
「康陽さん、やっと終わったよ、今回はへばりついて大変だった……」
「蓮お疲れ様」
蓮が会議室にやってきた。
今回の脱皮は相当手こずったのか疲れたような顔をしていた。
「ついでに異形状態の脱皮もしなきゃならなかったから大変だった」
「蜘蛛は脱皮するもんねーおつおつ」
蓮の言葉にフエが笑いながら声をかける。
「へーそんな話してたんだ」
「少し気になってな」
「そんなのあるのかお前等、俺はねーぞ!」
いつの間にかやって来たロナクが偉そうに言うとフエがぼそりと。
「アンタは何かやらかしてロナに泣かれるのが困ることじゃん」
「ちょ、それ言うな!」
「この間もロナを泣かせたじゃん、零さんに迷惑かけたからって」
「んだよー零にたかってた売人連中を異形化させただけだって言うのに……」
「だからロナ泣いたじゃん! 追っ払うとかもう少しこうできなかったの⁈」
蓮がロナクを怒鳴りつける。
「ちょ、ちょっと康陽さんよぉ」
「悪いがそれに関しては蓮達が全面的に正しいと思う」
「異形化させたら『花嫁』求めるからね、零さん銃ぶっぱするしか無かったって疲れたようにいってたよ」
「う゛」
「分かったらもう少し考えて行動してちょうだいな」
「……わかったよぉ」
ロナクはしぶしぶ肯定の言葉を出した。
「ジン、いるか?」
ジンの調理室を康陽は訪れた。
「何の用ですか、康陽さん」
「エルが肉が足りないそうだ、一食分が、それで盗み食いをしている」
「! ど、道理で肉の減りが早いと……」
「盗み食いの事は内緒な、肉の量、もう少し増やしてやれ」
「分かりました……となると、ロナクとフエ様に頼んで肉の調達回数を増やして貰わねば……」
「それはお前に任せる、じゃあな」
「お伝えいただき有り難うございます」
ジンが頭を下げると、康陽は部屋を出て行った。
「あーあ、私の異形性ももう少しマシなのだったらなぁ」
部屋に戻ると、蓮がそう呟いていた。
「異形性か、苦労するな」
「康陽さん……」
蓮は康陽に頭を撫でられ、少し安心したように笑う。
「昔も今も、自分の異形性は大嫌い」
「そうか」
「その性でお母さんは不老不死に近い存在になって精神を病んでしまった」
「……」
「そしてそれを責め続けている、こんな体になったのは私の所為だ、赤ちゃんが死んだのも私の所為だと」
蓮の言葉を康陽は黙って聞いていた。
「そんな事無い、悪いのは全部私、でもお母さんは私を娘と認識できない、娘が大きくなったらこんな子だろう、その程度」
「……」
「今でも思うよ、私が──いや、あの男とあの異形が居なかったら母さんは普通の人生を歩んで、ご両親に見守られながら幸せになれたかもしれないって。でも、そうじゃなかったからこうなった。だから私はあの男達と異形を喰うしかなかった」
「食い殺す事で、恨みを晴らすしかなかった」
蓮の言葉を最期まで聞いて、康陽は蓮を抱きしめた。
「康陽さん?」
「お前が自罰的なのはそういう課程があったからなんだな」
「……うん」
「だったら、お前は自分をもう責めるな。お前は十分自分を責めた、そして成すべき事を成したんだ」
「康陽さん……」
「母親の件は仕方ない、だからできるだけ会いに行ってやれ、そうすれば幸せだろう」
「うん、うん……!」
康陽の言葉に蓮はぼろぼろと涙を流した。
それを見て康陽は思った。
蓮のような異形の子もいる。
異形の子と、人間どちらがより化け物なのだろう。
と──
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