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もう一人の「フエ」の世界~こちらでもトラブル頻発中~
しおりを挟む世界の果てにフエは居た。
壁で隔たれた向こう側にも「フエ」がいた。
「ねぇ『私』最近何かあった?」
「んー『花嫁』さんが結構負荷がかかってきたからクランとランを招集した」
「え、そっちも⁈」
フエの言葉に向こう側の「フエ」は驚いていた。
「そっちもってことは、そっちも?」
「うん!」
「やっぱり考えが似てるね」
「うん!」
フエの言葉に、向こうの「フエ」が嬉しそうに頷く。
「なんか嬉しいじゃん」
「それは同意」
フエもにこりと笑った。
「じゃあ、貴方の話を聞かせて」
「うん、いいよ」
そうして「フエ」は語り始めた──
「──と言うことで、零さんが危機的状況です」
「異形がわんさか増えたのにはお前に責任があるがな」
「それは言わないお約束!」
フエの言葉に慎次が言うと、フエは苦々しい表情を浮かべた。
「仕方ないだろう、父親から継いだ異形性だ削除することはできない」
「休眠期間に異形が増えるとかどんな罰ゲームよ全く、私が異形性選べるならこんな異形性引き継いでないわ」
紅がフエをフォローし、フエ自身もむくれた顔で言った。
「そうだったな、悪かった」
慎次が肩をすくめる。
「ところで慎次を零さんの所においてるって聞いたけど大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫」
ランの言葉に、フエは手をひらひらさせて答える。
「『花嫁』が側にいると安定すんのよ──」
『緊急事態発生、宇宙空間にて「花嫁」が異形に追われています』
無機質な声が響く。
「ちょっと、レオン⁈」
『ニルスがやらかしたんだ! 私でも止められなかった‼』
回線を開いてレオンと会話すると、フエは地団駄を踏んだ。
「ニルス締める、みんな行くよ。慎次は零さんのコックピットに転移して」
「分かった」
「クラン、ラン、出番よ」
「はいな!」
『うん、分かった』
その場から異形の子達が居なくなる。
「くそ、ニルスがやらかすのは予想外だった」
「大丈夫か?」
コックピット内に荒井が姿を現す。
すると、操縦を即座に交換した。
「暗闇なら俺の独壇場だ、飛ばずぞ」
「頼む」
ギリギリまで追いつかれていたアームドは一気に加速し、異形を引き離していった。
異形の通るであろう道に、ランが浮いていた。
「種も仕掛けもないよぉ‼」
そう言ってぐるんと一回転すると、巨大な肉壁が現れ、異形達が追突する。
追突した異形は肉壁に喰われて消滅した。
肉壁から逃れようとした異形はどこからか来る黒い触手に貫かれて消滅した。
「レオン、異形は」
『センサーには反応なし』
「私のセンサーにも反応無し、居なくなったわね」
『零さんが無事で良かった』
「ニルスは?」
『向こうのコロニーに』
「OK把握」
フエはそう言って姿を消した。
「ぺっ、ここまでズタズタに殺しても生き返るんだもん、厄介なことこの上ない」
肉片だらけになったニルスの死体を見て、呆れるように言う。
「ここにも異形はいない。帰ろう」
フエはそう言って姿を消した。
「フエ……」
「柊さん、いやしてー」
「うん、うん」
自室に戻ったフエを柊が抱きしめ癒やしていた。
「ニルスはどうした」
部屋にやって来た紅が問う。
「殺したけど復活すると思う」
「やれやれ……」
「本当だよ」
フエはすーはーすーはーと柊の香りを嗅いだ。
「あー癒やされるー」
「……」
なんとも言えない表情で紅は部屋を出て行った──
「なんか残念なもの見る目で見られたんだけど納得いかねー」
「わかる、わかるよ、その気持ち……」
「さすが『私』……!」
会話は終わり、フエは壁から少し離れた。
「またお話しましょうね『私』」
「うん、しようね『私』」
そう言って二人のフエは世界の果てから離れていった──
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