クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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異形化~救い~

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 世界の果てで二人の「フエ」は顔を合わせる。

「ハーイ『私』調子はどう?」
「ハーイ『私』ぼちぼちってところよー」

 もう一人の、向こう側の「フエ」は少し疲れたように言った。

「どうしたの『私』ちょっと疲れてるみたいだけど」
「それがねぇ」

 向こう側の「フエ」が話始めた。

「異形化事件?」
「ああ、そうだ。異形と思って特殊部隊で殲滅したら人だった痕跡が出てきたらしい」
「……つまり異形にしている異形を叩けと」
「そういうことだ」

 零からの説明を受けて、フエは少し考えて頷く。

「うん、マヨイ連れて行った方がいい案件だわこれ!」
「だろうな、なんなら私もついて行くぞ。特大の餌だからな」
「こーら『花嫁』であることを餌扱いヨクナイ」
「事実だ」

 零からの言葉に、フエはなんとも言えない表情を浮かべた。




「で、此処か?」

 零達は廃棄されたコロニーにやって来た。

「うん、ここを訪れた人が行方不明になって、異形化した人間の遺伝子情報と居なくなった人がだいたい一致してるって」
「何で訪れてるのでしょう?」
「わかんね」
「う」 
「調べた所、ここには何か得体の知れない存在──異形が居て、それを兵器転用しようと考えている連中の出した偽情報と報酬に踊らされてきてるみたいですねぇ」

 ニルスが端末を見ながらにやけ面でしゃべる。

「OK把握」

 奥へ進んでいくと人の死体やら、何か不気味な触手のようなものが張り付いていた。
 そして、そのフロアの中央に人と異形が居た。

「それから離れて!」
「待って、兄さんを殺さないで‼」

 少女らしい面影がまだのこる女性が、異形をだきしめて必死な表情で言う。

「い、り、す」
「イリスさんっていうの、貴方。でコッチが化け物にされたけどまだ自我あるっぽいお兄さん?」

 その言葉に女性──イリスは頷いた。

「──駄目だな、異形倒しても戻らん。マヨイ」
「う!」
「はい、離れて」

 イリスを無理矢理、異形化した彼女の兄からフエが引き離す。
 触手が彼女の兄を包んだ。

「兄さん⁈」
「大丈夫大丈夫、心配しないで」

 もごもごと蠢く触手。
 ぺっと何かを吐き出した。
 黒い結晶だった。
 またもごもごと蠢き、そしてずるりと、包んでいたものを開放する。

「ぷはっ……! わ、私は……」
「兄さん!」

 イリスは人の姿に戻った半裸の兄に抱きついた。
「ニルス、この二人を宇宙艇へ、そんで周囲に結界貼って待機」
「畏まりました」

 フエの指示に従い、ニルスは二人を抱えてその場を後にした。

「来たよ!」
 触手を伸ばしながら、人型に近い異形がこちらへ寄ってきた。

 フエは零に結界を張り、異形に突っ込む。

「……弱点はそこか!」

 額の黒い宝石をかかと落としで粉々にした。

 耳障りな悲鳴を上げて、異形はミイラになった。

「さて、処分」

 フエがガチと、歯を鳴らすと、異形の死体は消えていた。

「うん、純度100%の異形だわ、本体こいつで間違いない」
「……だがまだいるぞ」
「使い魔か、主人がいなくなってもいるとかやってらんねー」

 フエは嫌そうな顔をしてから口を開いた。

「よし、このコロニー木っ端みじんにするわ、先に脱出してて」
「分かった」
「う!」
「気をつけろよ」
「気をつけてください」

 零達が足早にその場を立ち去ると、異形達を一匹ずつ弾けさせて殺して行く。

「宇宙空間じゃロクに生きられない異形みたいね、安心して、ここを木っ端微塵にしてあんたらの命終わらせてあげるから」

 フエはそう言って、宇宙艇がコロニーから遠く離れたのを見て姿を消した。

 コロニーは爆発し、そして不可思議なことに破片ひとつ残さず消えた。




「あの異形を捕獲できたなら、兵器活用できたのに!」
「へぇ、異形を兵器とか頭悪いんじゃない?」

 身なりのいい男の前にフエは姿を現した。

「じゃあ、アンタが異形になりなさいよ」
「なに、ぎゃああああああアアアア……‼‼」

 男の体は変形し、異形になった、そしてそれを放置してフエは姿を消した。




「兵器開発企業○×で謎の殺傷事件発生……フエ」

 零は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「だって、あのおっさん、異形を兵器にするとか考えたんだもん」
「もう少しやりようはあっただろう?」
「ない、そうそう、ご褒美頂戴、一杯働いたんだし」
「またか」

 フエは零をずるずるとベッドに引っ張り、押し倒した。

「『花嫁』さんを、零さんを抱くと異形的に落ち着くからねー」
「ああ、そうか、好きにしろ」

 やけっぱちでいう零に、フエはにんまりと笑った。
 しばらくして、部屋に情交の音と濁った零のあえぎ声が響いた。




 そして後日──
「浮気者」
「ちがうってばー」
「浮気者」
「もー!」

 浮気者と言われて頭にきたフエが、番いである柊を押し倒し、性行為を行った。
 行為の最中、柊はうっとりとした表情で喘いでいた。




「──という感じかなぁ?」
「いやぁ、大変だったねぇ」
「でしょでしょ」
「柊さんは浮気者扱いしてくるのが困り者よねー、そこが可愛いんだけど」
「だよねー!」

 ケラケラと笑い会いながら話をする。

「あ、そろそろ帰らなきゃ」
「私も、じゃあね『私』」
「またね『私』」

 二人はそう言い合って、世界の果てから姿を消し、自分達の住処へ戻っていった──





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