クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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謹慎開放のはずが……~また謹慎~

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「ひゃっほー‼ 漸く謹慎とけたー‼ ヒャッハー‼」

 ロナの影から出て来たロナクが踊るように飛び上がりながら、歓喜を露わにしていた。

「言っとくけど、似た事やらかしたら即謹慎だからね」
「げ、フエ」

 フエが呆れたように言うと、ロナクは顔を引きつらせた。
『ロナク、フエ姉さんが言うように、貴方がまたやらかしたら私は即座に貴方を封印します』
「ねえちゃんまで⁈」
「当然でしょう? 分かったら大人しくしてなさい」
「ぐむむむ……」

 ロナクは不服そうな顔をした。

「言っとくけど今は仕事ないわよ、大人しくしておきなさい」
「げぇ」
「事実なんだもの、じゃあ私は零さんの見廻りの付き添いいってくるから」
「お、俺も!」
「アンタは来るな、余計な事をするのが目に見えている」
「畜生」
「留守番よろしくね~~」

 フエはそう言って姿を消した。

「よし俺も」

 ロナクが一歩踏み出そうとした直後ロナがロナクの影を踏んだ。
 するとロナクは倒れ込み、床に顔面ダイブした。

「って~~⁈」
『ロナク、行くのはやめなさい』
「姉ちゃんまでどうして⁈」

 ロナクがロナに近づくと、ロナは呆れたような雰囲気を纏った。

『ロナク、貴方は悪意があるとそれをいじらずには入れない子だわ』
「……」
『もし異形案件だった場合、悪意を増大させると零さん達に負担になる、そうじゃない場合でも零さん達に負担になる』
「別にいいだろう? エルの肉になるような奴らだぜ?」
『それを町中でやってごらんなさい、あっという間に異形と悪人であふれかえるわ、それほど人間は悪意を少なからず持っているのよ』
「でもさぁ」

 ロナからため息が聞こえた、その直後ロナはロナクを殴った。

「いっでぇ‼」
『貴方何度言ったら理解するの⁈』

「ロナおねーちゃんどうしたの?」
「ロナおにーちゃんがわがままいってるの?」
「わがまま、だめ」

 ロナク達の声を聞きつけ会議室にエル、りら、マヨイがやって来た。
 そしてロナクに「わがまま、めー」と言い続けた。

「何でこんなちびっ子共にまで怒られなきゃなんないの俺⁈」
『それは貴方がそれだけのことをしてきたからよ』
「そんなぁ」
『そうよ』
「ロナクおにーちゃん、おにくとるときたまにいぎょうにしちゃうからエルのためのおにくすくなくなるってジンおにーちゃんひとりでぐちってた」
「りらのおにいちゃんのせいしんにちょっかいだそうとしてた」
『あら、それは聞いて無いわよ』
「隼斗さんにもちょっかいかけてた」
『……フエ姉さん!』
「ちょ、ま、あれはそうとう前の事で……」

 ロナクはしどりもどろになる。

「何が、相当前の事、だって?」

「うへぇ……」

 ロナクは青筋をこめかみに浮かばせているフエを見て悟った。
 逃げられない、と。




「で、ロナクはどうなったんだ」
「そこ」
『うわーん! 反省したから許してー! よりにもよってニルスの影とか嫌だー!』
「私が嫌です」
「まぁ頑張れ」

 慎次はそうに言いながらお茶を入れる。

「後、アンタの声は普通の人には聞こえないようになってるから覚えときなさい」
『ねーちゃんの時とおなじじゃん』
「さらに、アンタがなんかしようとすると、ニルスの影から直接仕置きが来る!」
『ギャー! ねーちゃん助けてー!』
「姉離れできてねぇ奴だな、お前」
『うるせぇ! お前もニルスの影に封印されて見やがれ!』
「断る、俺が封印されたら誰が零の面倒を見る」
「私は其処まで子どもか?」
「心配だからいってるんだろう」

 慎次が呆れたように言うと、零は不服そうに紅茶を口にする。

「さて、じゃあ仕事に行くとするか」

 紅茶を飲み終えた零はカップを置いて言う。
 慎次は急いでカップを洗い拭いてしまう。

「慎次の動作はやーい」
「慣れだ」
「じゃあ行きましょうか」
『うわー! ニルスの足下なんかやだー! 色んな意味で臭いそう!』

 ロナクがそうわめくと、フエ達は少し吹き出した。

「失礼ですよ」

 ニルスが珍しく嫌そうに言った。
「いや、事実じゃん、ろくでもない事考えてるんだから」
「……」
「っごほん、じゃあ行くぞ、ニルスはレオンと合流して見廻りを、私達は別所を」
「……畏まりました」

 珍しく面白くなさそうな顔をしてニルスは出て行った。
 そしてニルスとは逆方向へと零達は脚を運ぶ。

「とりあえず海辺によるぞ」
「港付近ー? 水の異形?」
「いや、魚のような異形らしい」
「なるほど、じゃあ退治しにいこう!」

 フエがスキップしだすと、慎次と零は肩をすくめ、フエの後を追うように歩き出した──




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