177 / 220
「花嫁」の休眠期
しおりを挟む「眠い……」
零は目覚めるなりそう言って再び眠ってしまった。
「ドリームランドに連れて行かれた訳じゃないよな?」
慎次が不安そうに言うと、フエが現れ首を振る。
「うん、疲労蓄積で眠くなったみたい、それと希にある花嫁の休眠期」
「死なないかそれ?」
また不安そうな顔をして、慎次は問いかける。
「時々起こして完全栄養食化したマヨイのジュース飲ませてあげて」
「了解した」
「零、いったん起きてこれのめ」
「うんん……」
慎次は零がちゃんと目覚めるまでの一週間、キチンと世話をした。
そして一週間後──
「ようやく、眠気が覚めた……」
「ようやくか」
ベッドから起きた零に慎次が呆れたように言った。
「お前は一週間ずっと寝てたんだよ」
「本当か?」
「本当だ」
「……すまないことをした、そうだ仕事は!」
「こちらでちゃんと回した、お前が倒れても回るようにフエがマニュアルを作っておいたらしい」
「フエがか……?」
「そうだ『「花嫁さん」が仕事に打ち込めるよう』だそうだ」
「フエには礼を言わねばならないな」
「そんなこと気にしなくていいのにー!」
満面の笑みを浮かべたフエが姿を現した。
それを慎次は嫌そうに見る。
「フエか、すまなかったな」
「いんやー零さんの代わりに仕事してただけだから」
「それはすまない」
「それよか慎次をねぎらってよ。慎次の奴、零さんが死なないように、完全栄養食のマヨイ印のジュース飲ませてたんだよ」
「それはすまない」
「あと寝ぼけてトイレいくのも誘導してたし」
「完全に介護だな」
「本当だ」
零は深いため息をつき、慎次とフエは肩をすくめた。
「じゃあ、朝食にするぞ」
「マヨイの完全栄養食のジュースは?」
「あれは緊急用だ馬鹿」
「そうよ、緊急用よ」
「ちゃんと飯食って体作って仕事しろ」
「ちぇ」
「ちぇ、じゃない」
「ちぇっとか零さん可愛い!」
「そういう問題じゃないだろう、ほれ食え!」
慎次はフエと零を怒鳴りつけ、朝食を並べる。
焼き鮭、味噌汁、漬物、ご飯、卵焼きを並べた。
「さぁ、食え」
「いただきます」
零はちゃんと挨拶をして食べ始めた。
三十分かけて食事をすると、顔を洗って、歯を磨いて、着替えて支度をする。
「さぁ、慎次行くぞ。所でレオンとニルスは」
「あの二人はもう出てるよ」
「そうか、じゃあ行こう」
「今日は私もついて行くー!」
フエは嬉々として零達についていった。
帰宅後、浮気者と罵られることになることをこの時のフエは知らない──
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる