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役割交代~番いも大事~
しおりを挟む「フエの浮気者!」
「だから違うってばー!」
「最近『花嫁』ばかりかまいすぎだ!」
「色々あるの!」
フエと柊は言い争いをしていた。
周囲には異形の子等が遠目に見ていた。
「フエ」
「何よ、慎次」
「しばらくは紅と代われ、緊急事態の時はお前を呼ぶ」
「え⁈」
慎次の言葉に、フエは目を見開く。
「ちょっと紅姉さん、どういうこと⁈」
「お前が零に構い過ぎて柊が蔑ろにされてると感じている、だからそれを解消しろ」
「うへぇ⁈」
フエもまさか其処までの事態になっていたとは思って居なかったようだ。
「分かったら、しばらくの間は柊を慰めてろ」
「うー……分かった」
フエはぐすぐすと泣く柊の所へ行く。
「柊さん、お部屋に戻ろ?」
「う゛ん……!」
フエは柊の手を取り部屋へと戻っていった。
「しかし、大丈夫なのか紅、お前が代理で」
「フエほどじゃないが古参だし、どうにでもなる」
「そうか……」
慎次は紅を見てなんとなく納得したようだった。
「──なるほど、それなら仕方ない。番いは大事にしなければな」
「フエに聞かせてやりたいな」
「ああ」
事情を聞いた零はそう言い、紅と慎次は頷き合った。
「さて、朝食にしよう」
慎次はそういい、朝食を作り始めた。
同時に間食用のサンドイッチも。
朝食を取り終えた零は、慎次と紅と見廻りに向かった。
「こちらは何もないな」
「そうだな」
そんな事を話していると、スマートフォンが鳴った。
零は急いでスマートフォンを取る。
「はい、もしもし」
「所長ですか⁈ こちらに巨大種の異形が居ます、何名かが飲み込まれてしまっていて──」
「場所は⁈」
「工場跡地、北口のです‼」
「分かった行くぞ‼」
零の言葉に、慎次と紅は頷き、急行する。
「レオン、ニルス! マヨイ⁈」
「うー……」
「マヨイの膜で溶けないようですが、このままでは……」
「意識を取り戻した人間が発狂するねぇ」
レオンとニルスの言葉に、慎次はため息をつく。
「しゃあねえ、やるぞ」
慎次の影が広がり、巨大な赤い目玉が無数にあるカエルのような異形を影の中に沈めていく。
異形は長い舌を伸ばそうとしたが、紅がガチと歯をかみ合わせると舌がぶつっと切れてもだえだした。
そして異形は影の中に沈んでいき、影からポコポコと人が姿を出した。
「ちょうど六人、合ってます」
「後の事は警察に任せつつ対応するか」
「はい!」
「とりあえず異形案件はあれだけだったな」
「そうだな」
「紅もよくやってくれた」
「舌をかみ切るくらい朝飯前だ」
「零、風呂入れ」
そんな会話をしながら、慎次が零を風呂に入るのを促す。
「分かった」
零は風呂に入る。
しばらくすると上がり、タオルで体をかくして風呂場から出る。
「こっちこい」
慎次は零の髪を乾かし、溶かす。
そして化粧水などで顔をケアしてやる。
「この化粧水、いいな」
「マヨイ印だ」
「マヨイ有能だな」
「本当な」
そう言ったやりとりをしながら、零はベッドに入る。
「今日は疲れただろう、早く休め」
「ああ」
「お休み」
「お休み」
「お休み」
慎次と紅は零が眠りについたのを見計らって姿を消した。
穏やかな夜に静かに零の寝息が響いていた──
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