19 / 96
壊れゆく花嫁
悲しい、辛い、苦しい、全部捨てちゃおう、忘れちゃおう
しおりを挟むヴァイスはルリの血を吸う。
ルリは抵抗もなにもしない、されるがままだ。
血をすっている彼にはルリが諦めたような、絶望したような表情をしているのが見えなかった。
吸血が終わると、ヴァイスは少々血を吸いすぎたかと思った。
ルリの肌が血色が悪くなっているのだ。
ただ、これも少し経てばよくなるのは分かっていた、ヴァイスはルリの血色がよくなるのを少し待った。
ベッドの上で顔を背け、ぐったりとしているルリの頬を見て、血色が元の良い色に戻るの確認したヴァイスはルリに手を伸ばす。
顔をこちらに向かせ、薄紅に戻った唇に口づけをする。
相変わらず反応が悪い、舌を絡ませてもされるがままだ。
自分がどれだけ教え込もうとそれを拒もうとする。
アルジェントはルリに厳しい態度を取るがそうすると、ルリは反応するという。
自分も少し厳しくするべきか、という考えが浮かんだが、それをすぐさま否定した。
抱くとき悦ばせようと必死になるだろう、だがそれは恐怖心からであって愛情からではない。
ヴァイスが欲しいのはこの愛しい妻の愛だ。
自分を愛してほしくてたまらないのだ。
けれども――
ルリはいまだ誰も愛してはいない
外に出してかつての悲劇が起きるのも恐ろしければ、他の誰かを愛してしまうのも恐ろしい。
神に呪われたこの身でも神に祈りたくなる、どうか彼女が愛してくれるのが自分だけであるようにと。
ルリは口を開放され、口の中に広がる自分の血の味を感じたままぼんやりと考えている。
何故私を抱こうとする者達は自分をそんなに欲しがるんだろう。
自分の価値は「不死人の女」ということだけ。
政府の役人とかの説明で、性別が分からない不死人――グリースの事だろう、それが一人、それ以外で見つかった不死人は皆男だったそうだ。
不死人の男達は皆政府の監視下にある、不死人の男と人間の女が交わってできた子どもは皆普通の人間だったそうだ。
政府の役人が何か言っていたのを思い出す「不死人の男と女の子どもはどうなる」という内容だ。
今思えば、人間政府からすると盟約を破ってその実験をしたい気持ちがあったんだろうと思った。
早く他に不死人の女性が出てこないかなぁと思った、そうしたら多分真祖の気持ちもそっちにいってくれるんじゃないかなと淡い期待を持つ。
でも、そうしたら解放された自分は人間政府の監視下に置かれて、実験体になるのかなぁと思った。
どっちにしろ悲惨だが、今みたいな心が過酷な責めとかはないだろうから今よりはマシかなぁと思う。
「……早く不死人の女の人で美人の人出てこないかなぁ……そうすれば私用無しなのに」
思ったことがぽろりと口から零れた。
失言だとも思っていない、ルリは心の底からそう思い、信じているのだ。
ルリの口から発せられた言葉にヴァイスは耳を疑った。
ルリの発言はヴァイスにとって爆弾発言だった。
――次の不死人の女が出てきたら用無し?――
――ふざけるな!!――
――次の不死人の女などいらぬ、人間側の研究材料にでもなってればよい、私が欲しいのはお前だけ、お前だけだというのに!!――
ヴァイスはルリの体を覆っている薄い布を力任せに破いた。
「?!」
今までと違うヴァイスの行動に先ほどまでロクに反応しなかったルリが漸く反応した。
困惑と恐怖の反応だったが、怒りで頭が煮えたぎったヴァイスはそれを配慮することはなかった。
下着も裂き、ルリの受け入れる準備も何もできていない、そこに雄を無理やり挿入した。
「あぐぅううう!!」
ルリの口から苦鳴が上がる。
異物を拒否する締め付けをする膣内に無理やり押し込んでいく、下りてきていない子宮口に接触するが、ルリの口からは苦鳴しかあがらない。
柔肌に噛みつき、あちこちき噛んだ痕跡をつける。
「っ……!!」
痛みにルリは顔をゆがめている。
死ぬほどの衝撃などでは痛みはないらしいが、死なない程度の傷では痛みを感じるのが不死人の特性だ、噛まれる度に痛みが走っているのか声を上げる。
「や゛だ、ぬ、い、て、い、た、い!!」
異物が膣内を犯す感覚に耐えられないのかルリは拒絶の声を上げる。
ヴァイスは答えず、再びルリの喉に牙を立てた。
「い゛……!!」
快楽を与える吸血ではない、苦痛を与える吸血だ。
捕食する吸血だ。
吸血を終える、腹立たしいことに、不死人ではどれだけ痕をつけようと消えてしまう。
この吸血痕も、じき消えるだろう。
痛みを与え続けた結果か、ルリの目には生気がなくなっていた。
涙をこぼして、呆然としていた。
最奥で精液を放つ、アルジェントが事前に薬を飲ませている為、どれだけ精を吐き出そうがこの腹は精液で膨らむだけだ。
「……子を成せば、お前の考えも変わるか?」
腹を撫でながら呟く。
ルリには聞こえていないのか反応がない。
ずるりと雄を抜く。
精液がどろりとこぼれてシーツを汚す。
わずかに赤い液体も交じっていた。
無理やりの挿入で膣内を傷つけたのだろう、でもそれも明日には無くなっているだろう。
ルリの涙を舐める。
先ほどまで飲んでいた血の味の所為で味は分からなかった。
抱く気が完全に失せたヴァイスは、意識を完全に凍り付かせているルリを抱きかかえる闇に包まれ、闇が消えるとルリの部屋に移動していた。
アルジェントが立っている。
「後始末は任せた」
ルリをアルジェントに渡す、アルジェントはルリを抱きかかえた。
「畏まりました」
アルジェントはルリを抱いたまま頭を下げた。
ヴァイスはルリの部屋から姿を消した。
全身噛まれた痕だらけで、血を流しているルリをアルジェントは一度ベッドに寝かせた。
噛まれて血が出ている場所に舌を這わせる。
吸血鬼なら甘美な味がするのだろうが、人間のアルジェントにはただの血の味しかしなかった。
意識を閉ざしているのか、ルリは反応しない。
僅かに開いている薄紅の唇を見て生唾を飲み込む。
禁じられている行為だ、だめだと分かっていても我慢が効かなかった。
アルジェントはルリの唇に自分の唇を重ねた。
柔らかく、温かな感触がした。
――嗚呼、愛おしい――
アルジェントは多幸感を感じた。
貪りたい気持ちをぐっとこらえて、口づけを止め、ルリを抱き上げ、汚れたシーツを使い魔に交換するように指示を出し、浴室に向かう。
傷がついてるから今回は香りと洗浄効果のあるお湯だけで洗う。
主の吐き出した精液が残っている膣内も丁寧に洗う。
ルリは生気のない目をしたまま反応しない。
いつもと全く違うルリが非常に痛々しく見えた。
――お二人の間に何があった?――
アルジェントはそう思いながらも、いつも通りの対応しかとらなかった。
洗浄を終えると、傷を隠すため、下着をつけてから肌をいつもより隠すネグリジェを着せる。
そして部屋に戻り、真っ白なシーツのベッドの上に寝かせ毛布を掛ける。
生気のない目をしている、ルリの目を閉じさせる。
「お休みなさいませ、ルリ様。よい夢を」
アルジェントはそう囁くと部屋を後にした。
アルジェントが居なくなると部屋が真っ暗になった。
朝、ルリは起き上がる。
周囲を見て戸惑っているようだった、裸足のまま部屋から出ていく。
目の前に広がる城の作りに、まるで初めて見たものを見るかのような目で眺めてからペタペタと足音を立てながら城をさまよい始めた。
途中通路を塞ぐような壁に遭遇すると、とりあえず叩いた。
叩くと壁は無くなり、ルリは城の通路を歩く。
大きな扉が目の前に現れた。
ルリは力いっぱい押した。
扉はゆっくりと動き、光が差し込んでくる。
ルリは嬉しそうに笑う。
しかし、外の光景を見て呆然とする。
不安そうにきょろきょろと見渡す。
「おうち、どこ?」
幼子のような口調で言うと、ルリは城の外へと出ようとした。
「ルリ様、城の外に出て行ってはいけないとあれほど申したでしょう」
「?!」
知らない男の怒っているような声にルリは怯えて振り返る。
アルジェントは城の外に出たルリを見て近づき、彼女をとがめた。
ルリは怯えたような顔をして後ずさる、きっと昨日の行為が原因かと思った、だが――
「おにいちゃん、だれ?」
「?!」
ルリの言葉にアルジェントは耳を疑った。
「――ルリ様、悪ふざけは止めてください」
「やだ、こないで、おにいちゃんこわいやだ」
ルリは幼子のような口調で後ずさりをし、誰もいない町へと逃げようとした。
「ルリ様!!」
アルジェントは慌ててルリの腕をつかむ。
「やだ! はなして! おかあさんたすけて!! おかあさん!!」
アルジェントはルリを抱き寄せ、城の中へと引きずっていく。
術で強化してなければ逃してしまいかねない程の力でルリはアルジェントの腕の中でもがいている。
「ルリ様、どうなされたのです?!」
アルジェントは困惑を隠せないまま、ルリに問いかけるが、ルリは母親に助けを求める声を上げてなきじゃくるだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる