両性具有な祝福者と魔王の息子~壊れた二人~

琴葉悠

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悲しいおとぎ話のように

傷つけたくないのに

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 ニュクスと一日だけ離され、戻ってきたニュクスは私から離れようとしなかった。
 何かに怯える様に抱き着き、謝罪の言葉を口にし続ける。

 良かれと、思ってやったことでニュクスを傷つけた自分が憎かった。

 私はニュクスに声をかけ、抱きしめる位しかできない。


 一週間程だろうか、少し落ち着いてきたと思った矢先に、それは来た。
 ニュクスが女性の性も持つ故に来る「月の血」が。

 マイラなどが触ろうとすると、拒否反応が酷かった。
 私が下着をそれ用のに履かせて、そしてベッドの上で抱きしめ腹に手を当てる。
 今のニュクスは薬を飲むことができない。
 毒と思ってしまい吐き出してしまう、体調を崩してしまう。
 だから沈痛効果のある術と、温める効果のある術両方を何とか使用しながら、抱きしめてニュクスの傍にいるしかできない。

 術を使っても辛いのかニュクスの顔色はあまり良くないし、「いたい」と苦しそうに言う。
 愛しているニュクスの痛みを代わってやることもできない。
 怯えて抱き着く君の髪を撫でる位しかできない、抱きしめるしかできない。

「……ニュクスまだ、辛いかい?」
「……うん」

 二人だけの空間、二人だけの世界。
 此処から私も、ニュクスも出ることはできない。

 牢獄か、幽閉塔か、それとも楽園か。
 どれでもあり、どれでもない。

 生きるためには、ここに居るしかない。

 二人で逃げ出して、生きることができるなら、私はニュクスを連れ出してこの場所から逃げているだろう。
 けれども、それはできない。
 仮に生きる事ができても私はニュクスを悪意などから守れない、ニュクスを守る程の力が今は無い。
 もしそれをできた場合――

 ニュクスは私に恐怖を抱くかもしれない。

 そうなったら、私達はもうどうしようもできない程壊れてしまう。
 だから、ここに居るしかないのだ。

「……りあん……」
「どうしたんだい、ニュクス?」
「……めいわくかけて、ごめんなさい」

 ニュクスの言葉に、私は首を振る。
「迷惑などではないよ……」
「……」
 ぎゅうとしがみついてくる、不安なのだろう。
 私は、傍にいる事しかできない、君を抱きしめることしかできない。

 壊れた君の心を治す術など、私は持っていないのだから。

 時計の音と、呼吸音が耳に届く、服が擦れ合うわずかな音が耳に入る。
 二人きりの世界、二人きりの部屋。

 少しだけ、楽になる時間。

 今は食事の時間も、おそらくマイラがノックして扉の前に食事を置いて姿を消している。
 私とニュクスは診察の時以外、誰とも会わずに済む。

 ノックの音に、怯えている。
 慣れて欲しいと思うが、身勝手だから決してそれを口にしない。

 壊れてしまった君に無理強いをする権利もない。
 そして、私はそんなことはできない。


 女が流す血の香りに、性的な欲求が沸き上がる。
 我慢していればいい、今のニュクスは酷く不安定だ、そして体調も良くない。
 そんな君に行為をするべきではないし、そんな状態の女の箇所に挿れるのは私はできない、妊娠しづらい時期とはいえ、万が一もある。
 後孔を使うなど、今のニュクスにはやったことはない、私がやろうとすればできなくはないだろう、ニュクスは私から拒否されるのを怖がっている。
 だから、私はやらない。

 君の弱みに付け込む行為を私はしたくない。
 君を散々傷つけたのだ、私はこれ以上君に負担を強いる行為をしたくない。

 ニュクスの「月の血」が終わるのはいつなのだろうかと、ふと思う。
 個人差があり、また個人でも安定しないというのはありうる。
 少しだけ、君のそれが早く終わって欲しいと願ってしまった。


 ニュクスの「月の血」がはじまって四日が経過した。
 まだ、少しずつ血の量が減っているから、もう直終わる、とは分かっている。
 だが、私の方が限界に近かった。

 このような香りに反応するように変えられた体、上手く治療ができなかった箇所。
 けれども、ニュクスを私は突き放す行為も、離れる行為もできない。
 それは、君を傷つける行為だと分かっているから。
 だから、我慢するしかない、私は君を傷つけたくない。


 ニュクスに顔を見られないように、抱きしめる。
 髪を撫で、平静を装う。

「……りあん」

 ニュクスが、私の胸元に顔をうずめたまま言葉を発した。
「……ニュクス、どうしたんだい? まだお腹がいたいのかい?」
 問いかけると、頭を振る。
「……がまん、してる?」
 ニュクスの言葉に、言葉を一瞬失った。
「――いいや、我慢など、していないよ」
 何とか平静を取り繕って嘘をつく。
「……だって……」
「?!」
 股間の部分を触られる。

――ああ、しまった、意識しないようとしていた結果がこれか――

 私の雄は昂っていた。
 誤魔化しも、言い訳もできない程に。

「……ちょっと、離れてくれ、処理、してくるから……」

 ニュクスにそう言うと、君は再び頭を振る。
「……だって、おれじゃなきゃ、だめ、なんだよな?」
「……」
 そう、これをニュクスは知っている。
 だから、私を離そうとしない。
「でも、今の君にはできない。私はできない。それに今の君の女性の箇所はそう言う風に使ったら傷ができる、だからできない」
「……できるよ」
「?」
 ニュクスの言葉の意味を私は理解できなかった。

 ニュクスは体を起こして動かして――私のズボンへと手をかけた。
「?!」
 それで理解した、慌ててそれを阻止しようとした。
「ニュクス、いい、いいんだ。やらなくていい、お願いだから――」

「君がしたくないと思う行為をしないでくれ」

 そう言うと、手が止まる。
 思いとどまってくれたかと、安堵する。
「……私は君を傷つける行為はしたくないんだ、抱くのだって、君を傷つける行為なんじゃないかと思って怖くてたまらない、だから、お願いだから自分から傷つくような行為をしないでくれ」

 君が苦しむくらいなら、君が嫌な思いをするなら、私は我慢する。
 君を傷つけた罰を、私は何度だって受けよう。

「……おれは、りあんだから、どうにかしたいだけ……ほかのひとには……できない」

 小さな声で、ニュクスはそう言った。
「……ニュクス……」
「……りあんがおれがするの、きもちわるいとかおもうなら……しない……」
 ニュクスの消え入りそうな声。
 私が拒否することができない、言葉。

――君は、残酷だ――

 私はそう言われたら拒否はできない、その行為で君が傷ついたり、苦しむとしても。
「……りあんは、おれのこと、きもちわるい……?」
「――そんなことはない……違う、違うんだ、そうすることでしかどうにもできないのに、君が辛い思いをするんじゃないかと怖くてたまらないんだ」

『今更、何を言ってるんだよ』

 久しぶりに聞こえた、咎める声に。
 私はただ、項垂れるしかなかった。






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