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悲しいおとぎ話のように
君を歪にしてしまう
しおりを挟む「ん゛う゛……」
温かい口内の感触が伝わる。
ニュクスは私の雄を咥えこんでいる。
心地よさと、快感、罪悪感、色んな感覚が感情が私の心を搔き乱す。
そんな私のことなど知らずに、ニュクスは奥まで咥えこんで拙い口淫を行う。
口淫は私が壊れていた時だけ、今の私の時はニュクスはやっていない。
それに、アレは私がニュクスの口を性玩具のようにしていたから口淫とは言い難いものだった。
ニュクスは舌を動かして、私の雄を舐めている。
こうすればいいと言う事も可能だ、そうすれば早く終わる。
だが、私は言えなかった。
言えば早く終わってニュクスの肉体への負担も減る。
だが、自分しかよりどころのない何も分からぬニュクスに、自分の「欲」を発散させる為だけの行為を教え込むのは、ニュクスを弄んで、汚しているような気がしてできなかった。
汚しているという罪悪感と、自分だけの色に染めたいという独占欲、矛盾しているそれらに苦しさを覚える。
愛しい君を大事にしたい、これ以上傷つけたくない。
それなのに、私はそれができない。
どうやったって傷つけてしまう、苦しい思いをさせてしまう。
君はそれでいいと言う。
私の耐えがたい「熱」を発散することはできることに、君は嬉しそうに笑うけど。
その笑みが泣いているようにも見えるから、辛くてたまらない。
「っ……」
「う゛……」
ニュクスの口の中で精を吐き出す。
ニュクスの表情はあまり良いようには見えなかった。
ずるりと熱の治まった雄を抜く。
「ニュクス……吐き出していい、飲み込む必要はないから……」
手近に置いておいた布をニュクスの口に近づける。
ニュクスは躊躇いながらも、布に白い液体を吐き出した。
唾液まじりの精液。
吐き出してくれたという安堵感と、受け入れてもらえなかったと言う落胆が心の中でぶつかり合う。
――受け入れてもらえなかった、など、私が思っていい権利などもう無いのに――
それを表情に出さないようにできたのは、良いことだったったと思いたい。
疲れ切ったニュクスの顔。
負担が大きすぎたのだ。
慣れない行為、そして精神的にも負担になっている。
それでもニュクスは「りあんならへいき」としか言わない。
私から、引き離される事に怖がっている。
今まで以上に。
自分の愚かさに、嫌気がさしてくる。
口を濯がせて、再びベッドに横になって、抱きしめて、髪を撫でる。
「……大丈夫かい?」
「うん……」
声に、気力というものが感じられない。
やはり、先ほどの行為で肉体的にも精神的にも負担になっていたのだ。
「すまない、ニュクス……君に無理ばかりさせて……」
「……りあんなら、いいよ……」
君はそう言う。
そう追いつめたのは、私だというのに私を君は責めない。
私に「嫌われる事」を「拒絶される事」を恐れている。
記憶の多くを失った君は、辛いことばかり思い出している。
多くの者達に、命を狙われ続けた事。
それ故、ずっと逃げ続けなければならなかった事。
誰かが――私が君にした事。
あの時、君を連れていけなかったから。
君と君の家族を連れてこの国に来ていたら、君の苦しみは和らいだかもしれない、こんな辛い状況にならずに済んだかもしれない。
でも――できなかった。
祝福の子である君を、愚者達からは「魔の子」と呼ばれる君をもし、保護したことを知られれば、他の国々は種族はまるで「正義は我らにあり」と言わんばかりにこの国を責めてくるだろう。
別に、それを防げない訳ではない。
だが、それに傷つかない君ではない。
それに、君の家族は私達の国に逃げ込むという事をしなかった。
簡単な話、君の家族にも私達は「敵」と思われていたのだ、信じてもらおうというのが難しいだろう。
何をすれば、正しかったのか、私には分からない。
二日後ニュクスの「月の血」の期間が終わった。
その二日間も、私はニュクスに「熱」の処理をしてもらわねばならなかった。
何でこんなに苦しいのか分からない。
口での処理、口淫。
終わると、口内の精液を吐き出して、ぐったりとした状態になる。
口を濯がせるなどの行為は私が手伝わないとできない程に。
ベッドから動けない程に疲弊する。
そんな行為を私はニュクスに強いているのだ。
医師たちの「治療」では治らなかった、私の歪になった箇所。
それの所為で、ニュクスを苦しめるのは辛い。
我慢ができれば、自分で処理できるなら、そうしている。
それができない。
ニュクスを自分の為に利用している気がして、反吐が出る。
君を汚している自分に、嫌気がさす。
「――では、何かございましたら、すぐ……」
ニュクスの「月の血」の期間終了後、私とニュクスの検診があった。
これで次の検診までは穏やかな時間を過ごせる。
二人っきりの空間になってしばらくすると、漸くニュクスは落ち着いたように私の胸元に顔をすり寄せてきた。
私はニュクスの髪を撫でて抱きしめる。
私以外の存在に恐怖を抱くニュクスには私以外いない。
その所為で苦しい思いをたくさんさせてしまっている。
私以外に、君を救うことができる者がいれば――と考える一方で、ずっと私の傍にいて欲しいと願う自分がいる。
そんなことを願う自分が嫌だが、その願いを捨てられないのも、私だ。
食事や、湯浴み等も終え、後は寝るだけの時間になった。
「……りあん」
「どうしたんだい、ニュクス」
いつもならベッドに横になっているニュクスはベッドの上に座ってした。
「……何か、あったのかい?」
ニュクスは首を振ってから私を見る。
「りあん、だいて……?」
ニュクスの言葉に、私は何を言えばいいのか分からなくなった。
まぐわいじみた行為なら、言う事はあったが、性行為を直接言うことは今のニュクスはしていなかった。
いや、前のニュクスだって、自分からそれを望む言葉を言う事はなかった。
殆ど、私が耐えられなくなって、それをニュクスに強いた。
「……おれの、からだ、いや?」
不安そうな声に、私は首を振る。
「嫌ではないよ、でも、私は君を――」
そこから先の言葉がうまく言えない。
拒否するならそれなりの理由が必要だった。
今のニュクスは、私からの拒否に怯えている。
だから、ちゃんとした理由を言わないといけない、でも言えなかった。
答えることができない私に、ニュクスが抱き着いてきた。
「……おねがいだから、おれのこと、だいて……」
「おかしなからだのおれでもいいっておもわせて……おれのことひつようとして……きょひしないで……」
私は、ニュクスがより歪になりつつあることを理解させられた。
それが私の所為だという事も、理解できた――
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