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親
しおりを挟む「何か予想外な事態になったな本当」
「全くだ」
一ヶ月の外出禁止処分から解禁されるなり、テルセロは優月との面会を求めた。
ディランは正直嫌だったが、断ればまた同じことが起きかねないと諦めて正式に我が家への立ち入り許可証を端末に入れてやった。
テルセロは上機嫌で、ちゃんと我慢できたことを褒めてというと優月は褒めてから、仲間を怪我させて、端末を奪ってくるようなことは二度としてはいけないとちゃんと叱っていた。
「そういえばディラン」
「何だ?」
「そろそろ優月ちゃんを外に出したらどうだ? 本人も出たがっているがお前が嫌がるからと我慢しているの見てるの辛いし……」
「何?」
アシェルの言葉にディランはしばし考え込む。
確かにそれらしき行動は見られていた。
何か言おうとして、やめる、わすれてしまったとごまかす等、多くなってきた。
「……これだけ護衛がいればいいだろう」
「母さんとデートできるのか?!」
「デートするのは俺と優月だ、お前達は付き添い――護衛だ」
「ちぇ」
不満そうなテルセロを誰も宥めない。
「優月、外に出かけるか」
「え?! い、いいんですか?!?!」
「新しい服だって買いたいだろう、行こう」
「は、はい!!」
ディランさんにここに連れてこられてから初めての外出です。
部屋に戻ってどんな服を着ようかなと、うきうきしてしまいます。
「お化粧も最低限してと……こんな感じかな」
所謂フェミニンとガーリィの間の恰好をして私は鏡の前に立ちます。
でも、自分ではどうも似合っているか分かりませんでした。
「ディランさん、あの、似合ってるか見てくれますか?」
「――」
ディランさんは私の恰好を見て言葉を失っていました。
――似合ってないのかなー―
「綺麗すぎる、駄目だ、外出は中止――」
「本末転倒だろうが!!」
錯乱したみたく私を抱きかかえて見せないようにするディランさんの頭をアシェルさんがはたきました。
どこでハリセン用意したんだろう?
と、手に持っているハリセンを見て思いました。
久しぶりの外の世界は新鮮でした。
楽しくて楽しくて。
アークが例え安全な場所で合っても、私は日の当たる場所が好きなのだと思いました。
その日から、ディランさん達が居る時のみ外出ができるようになりました。
二ヶ月たった頃――
「優月、次はどこに行きたい?」
「穴が開いてしまったので新しい靴下――」
「優月!!」
どくんと、心臓が跳ねました。
二度と聞きたくない声が私の耳に届いたのです。
ディランさん達は私を隠すように、ソレの前に立ちます。
血が繋がっただけの男の前に。
「優月!! 頼む!! 私が悪かった!! 助けてくれ!!」
「……」
助けてくれなんて、頭が花畑にもほどがある。
私の事を散々ないがしろにしておいたくせに。
「なぁ、お前はアークに住んでいるんだろう? 私達家族じゃない――」
「家族なんかじゃない!!」
私は声を張り上げ、ディランさん達の前に出た。
「私の家族は!! 死んだお母さんと、ディランさん!! それとテルセロ君や、アシェルさん達!! お前何か家族じゃない!! 大体何よ!! 後妻やその子どもと一緒になって私に暴力をふるった癖に!!」
殴りつけたいが、ぐっと堪える。
同類には堕ちたくない。
「優月、アシェル達と先に帰っててくれ」
「……はい」
ディランさんが後はどうにかしてくれるんだろうかと、思いながら私はアシェルさん達をアークへ帰っていった。
「最近、あの地区で爆破事件があったと聞いたが、その時出てきたか」
ディランは冷たい目で男を見る。
「ひっ……」
「優月の前に二度と姿を出すなと契約したのに、破ったのだ――」
ディランは手をぼきぼきと鳴らす。
「どうなってもしらんぞ?」
「ひぃいいいいい!!」
逃げていった男をじっと見据えた。
「ああ、アレはじきに『悪魔に食われる』な」
そう呟いて去っていった。
「あんな屑男が母さんの父さんだなんて俺絶対みとめない」
「大丈夫よ、テルセロ君。私もアイツの事を父親だなんて認めてないから」
「よかった」
「それはいいけど、テルセロ。お前優月ちゃんにそれすんのやめたら?」
テルセロ君は、ソファーに座っている私の腰に抱き着きながらお腹の音を聞くかのような体勢をしている。
いやらしい触り方だったら、私も拒否するのだが、そういうのがないし、テルセロ君はある種の胎内回帰願望の気があるからか、お腹の音を聞きたがる。
試験管の中で育ち、親を知らないで育ったからテルセロ君は「母親から生まれたい、育てられたい」という願望を強く持っているのが分かった。
「次生まれるなら、母さんから生まれたいなぁ」
「こいつ話聞いてねぇ」
アシェルさんは呆れたように肩を落としました。
「テルセロ、お前それは止めろといっているだろう」
スパンと叩く音と同時に、テルセロ君が私から引き離されました。
「う~~!! いいじゃんか!!」
「よくない。年齢的にもアウトだ」
帰ってきたディランさんはそう言ってテルセロ君を別のソファーの上に座らせます。
「ディランさん、お帰りなさい」
「ただいま、優月」
そう言って、私に袋を渡しました。
「あのこれは……?」
「お前が良く見ていたブランドが出してる靴下だ、普段はいてるのと同じようなのを選んできた、もし嫌だったらはかなくても――」
「いいえ、ありがとうディランさん」
私が笑うとディランさんは微笑んでくれました。
「ドクター」
「――なんだ、ディランか」
WDCAの研究所の一室を住処としている女性を、ディランはたずねた。
「――いえ、母さん」
ディランは呼びなおした。
ディランと異なり、赤毛に、青い目の女性を「母さん」と。
「……私はその名で呼ばれる資格はない」
女性は振り向きもせずにそう言った。
「お願いがあります、貴方に優月に真実を語って欲しい」
「正気か?!」
女性は振り向き声を張り上げます。
「お前が拒絶される事になったらどうする!!」
「それはないと確信したからこそ、私は貴方に話して欲しいのです」
「悪魔が生まれた理由を」
「私が悪魔を殺せる理由を――」
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