私の幸せな軟禁生活~夫が過保護すぎるのですが~

琴葉悠

文字の大きさ
8 / 11

しおりを挟む



「何か予想外な事態になったな本当」
「全くだ」
 一ヶ月の外出禁止処分から解禁されるなり、テルセロは優月との面会を求めた。
 ディランは正直嫌だったが、断ればまた同じことが起きかねないと諦めて正式に我が家アークへの立ち入り許可証を端末に入れてやった。

 テルセロは上機嫌で、ちゃんと我慢できたことを褒めてというと優月は褒めてから、仲間を怪我させて、端末を奪ってくるようなことは二度としてはいけないとちゃんと叱っていた。

「そういえばディラン」
「何だ?」
「そろそろ優月ちゃんを外に出したらどうだ? 本人も出たがっているがお前が嫌がるからと我慢しているの見てるの辛いし……」
「何?」
 アシェルの言葉にディランはしばし考え込む。

 確かにそれらしき行動は見られていた。
 何か言おうとして、やめる、わすれてしまったとごまかす等、多くなってきた。

「……これだけ護衛がいればいいだろう」
「母さんとデートできるのか?!」
「デートするのは俺と優月だ、お前達は付き添い――護衛だ」
「ちぇ」

 不満そうなテルセロを誰も宥めない。




「優月、外に出かけるか」
「え?! い、いいんですか?!?!」
「新しい服だって買いたいだろう、行こう」
「は、はい!!」
 ディランさんにここに連れてこられてから初めての外出です。
 部屋に戻ってどんな服を着ようかなと、うきうきしてしまいます。
「お化粧も最低限してと……こんな感じかな」
 所謂フェミニンとガーリィの間の恰好をして私は鏡の前に立ちます。
 でも、自分ではどうも似合っているか分かりませんでした。
「ディランさん、あの、似合ってるか見てくれますか?」
「――」
 ディランさんは私の恰好を見て言葉を失っていました。

――似合ってないのかなー―

「綺麗すぎる、駄目だ、外出は中止――」
「本末転倒だろうが!!」
 錯乱したみたく私を抱きかかえて見せないようにするディランさんの頭をアシェルさんがはたきました。

 どこでハリセン用意したんだろう?

 と、手に持っているハリセンを見て思いました。


 久しぶりの外の世界は新鮮でした。
 楽しくて楽しくて。

 アークが例え安全な場所で合っても、私は日の当たる場所が好きなのだと思いました。

 その日から、ディランさん達が居る時のみ外出ができるようになりました。


 二ヶ月たった頃――

「優月、次はどこに行きたい?」
「穴が開いてしまったので新しい靴下――」

「優月!!」

 どくんと、心臓が跳ねました。
 二度と聞きたくない声が私の耳に届いたのです。
 ディランさん達は私を隠すように、ソレの前に立ちます。

 血が繋がっただけの男の前に。

「優月!! 頼む!! 私が悪かった!! 助けてくれ!!」
「……」

 助けてくれなんて、頭が花畑にもほどがある。
  私の事を散々ないがしろにしておいたくせに。

「なぁ、お前はアークに住んでいるんだろう? 私達家族じゃない――」
「家族なんかじゃない!!」
 私は声を張り上げ、ディランさん達の前に出た。
「私の家族は!! 死んだお母さんと、ディランさん!! それとテルセロ君や、アシェルさん達!! お前何か家族じゃない!! 大体何よ!! 後妻やその子どもと一緒になって私に暴力をふるった癖に!!」
 殴りつけたいが、ぐっと堪える。
 同類には堕ちたくない。
「優月、アシェル達と先に帰っててくれ」
「……はい」
 ディランさんが後はどうにかしてくれるんだろうかと、思いながら私はアシェルさん達をアークへ帰っていった。




「最近、あの地区で爆破事件があったと聞いたが、その時出てきたか」
 ディランは冷たい目で男を見る。
「ひっ……」
「優月の前に二度と姿を出すなと契約したのに、破ったのだ――」
 ディランは手をぼきぼきと鳴らす。
「どうなってもしらんぞ?」
「ひぃいいいいい!!」
 逃げていった男をじっと見据えた。
「ああ、アレはじきに『悪魔に食われる』な」
 そう呟いて去っていった。




「あんな屑男が母さんの父さんだなんて俺絶対みとめない」
「大丈夫よ、テルセロ君。私もアイツの事を父親だなんて認めてないから」
「よかった」
「それはいいけど、テルセロ。お前優月ちゃんにそれすんのやめたら?」
 テルセロ君は、ソファーに座っている私の腰に抱き着きながらお腹の音を聞くかのような体勢をしている。
 いやらしい触り方だったら、私も拒否するのだが、そういうのがないし、テルセロ君はある種の胎内回帰願望の気があるからか、お腹の音を聞きたがる。

 試験管の中で育ち、親を知らないで育ったからテルセロ君は「母親から生まれたい、育てられたい」という願望を強く持っているのが分かった。

「次生まれるなら、母さんから生まれたいなぁ」
「こいつ話聞いてねぇ」
 アシェルさんは呆れたように肩を落としました。

「テルセロ、お前それは止めろといっているだろう」

 スパンと叩く音と同時に、テルセロ君が私から引き離されました。
「う~~!! いいじゃんか!!」
「よくない。年齢的にもアウトだ」
 帰ってきたディランさんはそう言ってテルセロ君を別のソファーの上に座らせます。
「ディランさん、お帰りなさい」
「ただいま、優月」
 そう言って、私に袋を渡しました。
「あのこれは……?」
「お前が良く見ていたブランドが出してる靴下だ、普段はいてるのと同じようなのを選んできた、もし嫌だったらはかなくても――」
「いいえ、ありがとうディランさん」
 私が笑うとディランさんは微笑んでくれました。




「ドクター」
「――なんだ、ディランか」
 WDCAの研究所の一室を住処としている女性を、ディランはたずねた。
「――いえ、母さん」
 ディランは呼びなおした。
 ディランと異なり、赤毛に、青い目の女性を「母さん」と。
「……私はその名で呼ばれる資格はない」
 女性は振り向きもせずにそう言った。
「お願いがあります、貴方に優月に真実を語って欲しい」
「正気か?!」
 女性は振り向き声を張り上げます。
「お前が拒絶される事になったらどうする!!」
「それはないと確信したからこそ、私は貴方に話して欲しいのです」

「悪魔が生まれた理由を」

「私が悪魔を殺せる理由を――」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中

白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。 思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。 愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ 向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。 アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。 そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___ 異世界恋愛 《完結しました》

処理中です...