私の幸せな軟禁生活~夫が過保護すぎるのですが~

琴葉悠

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明かされた事実、悪いのは貴方じゃない!

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「……ディランさん、大事な話をする人が来るって言ったけど……」
 私はお茶の準備をしながら呟きます。
「誰なんだろう?」
 そういうと、チャイムの音が聞こえ人が入ってきました。
 女の人です、綺麗な赤い髪に青い目の女性。
「あの……」
「君がディランの妻か。初めまして私はWDCAでドクターと呼ばれている、マリーナ・アイローナだ」
「は、はじめまして、優月、と申します」
 偉い人なのだろうと思って硬直する。
「ドクター、では話の方を……」
「――分かっている」
 ドクター基マリーナさんは椅子に座ります。
 私も椅子に座り、ディランさんはお茶を二人分入れると何処かに言ってしまいました。
「あの……」
「――もったいぶらずに言おう、私はディランとテルセロの母親だ」

……

「はぁ?!?!」
 思わずすっとんきょうな声が出ます。
「え、つまり、どういう……⁇」
「事情をこれから話す。これは――」

「悪魔が生まれた理由の話だ」


 悪魔が生まれる前。
 マリーナさんは普通の小さな村で産まれました。
 あまり好まれない赤毛の娘。
 金髪の妹といつも比較されてきました。
 マリーナさんはそれでもめげず村の外へと出て、研究者として大成しました。
 そこでミゲル・アンヘルと言う男性と出会い、恋に落ちます。

 彼と町で幸せに暮らしていた所に妹がやってきて、彼を自分によこせと言ってきました。

 マリーナさんとミゲルさんはそれを突っぱね、引っ越しそして静かに暮らしていました。

 やがて、マリーナさんは身ごもり、お腹が大きくなるころ、妹が訪れた。
 お腹をさすりながらこういった。
「お姉ちゃんの旦那さんとの子よ」
 ミゲルさんは否定します、私がそういう行為をしたのはマリーナだけで、愛しているのも彼女だけだと。

 妹はこういいました。
 姉居場所を見つけ、ゴミ袋の中にあるコンドームの精液を研究機関に持っていって人工授精したんだと。

 マリーナさんは呆れてものがいえませんでしたが、ミゲルさんは頭を抱えました。
「何てことをしてくれた!! これでは地上に悪魔がでてくるではないか!!」
 ミゲルさんの言っていることが理解できませんでした。
「マリーナ愛している、君に過酷な運命を歩ませる私を許さないでほしい」
 そう言って碧い結晶を渡しました。
「それと君の卵子があれば悪魔に太刀打ちできる子どもができる、またそれからでる液体を投与し、適合した人間も悪魔と戦える」
 ミゲルさんはそう言ってマリーナさんの妹を見ました。
「不義と欲望の塊め、お前が産むのは悪魔だ、その日を待つがいい」
 ミゲルさんがそういうと彼の背中から白い羽が生えました。
「愛している、マリーナ、許してくれ、いや許さないでくれ」
 ミゲルさんは消えてしまいました。

 そして間もなく、ディランさんが生まれ、マリーナさんはミゲルさんによく似たディランさんにはディラン・アンヘルと名乗らせることにしました。
 そしてその後です――

 妹の腹を食い破って悪魔が出てきたのは――

 今も妹さんの腹を起点に悪魔は世界各国に出現するようになりました。
 妹さんは今もなお悪魔に腹を食い破られ続け、死ねないままだそうです。




「……私の所為だ、あんな妹をのさばらせておいた、もっと周囲に気を使わなかった私の……」
「何を言うんですか?! マリーナさん全然悪くないじゃないですか!! 最初に説明しなかったミゲルさんはちょっとどうかと思いますけど……完全に悪いのはマリーナさんの妹だけです!! あと手を貸した連中!! ふざけんな!!」
「……私を恨まないのか? 我が子に……後始末をさせている私を……」
「テルセロ君の件はちょっとお話したい案件ですが、他は特にありません。ディランさんは恨んでいないですし!! 恨んでたらディランさん容赦ないの知ってますから!!」
「……優しいな君は」
「いえ、ところでテルセロ君は何故?」
 マリーナさんは躊躇いがちに口を開きました。
「……ああ、私はディラン以外に子どもは持ちたくなかった、ミゲルとの間の子をそんな風にしたくなかった……だが、状況は切迫し私は人工授精を行ったが……私自身産む勇気も母親になる勇気も無くてな、だからあの子は試験管で育てられ、他者によってハンターになるべく育てられた……それも私の責任だ」
「だー!! さっきから自分の責任責任って!! マリーナさんの責任――ってあれ、ディランさんのお母さんってことは……」
「ああ、私はディランを産んでから年を取らなくなった……きっと罰だろう」
「だから、そうじゃないですって!!」
 自罰的すぎるマリーナさんに色々言いたい事があるけれども上手くまとまらない。
「ちゃんと、悪いのはマリーナさんじゃないです!! 妹さんが君が悪い程の執着心でミゲルさんとの子どもつくったのが事の発端じゃないですか!! ミゲルさんとマリーナさんとの行為で使ったコンドーム使ってとか気色悪いにもほどがあります!!」
「……その気色悪い妹が私の妹なんだが……」
「マリーナさん、妹がお好きですか?」
 そうたずねるとマリーナさんははっきりと言った。

「大嫌いだ!!」

「ですよね!! 私もそんな妹は大嫌いです!! ついでにそいつ贔屓してる連中も大嫌いになります!!」
 私は一呼吸置いた。
「私は後妻の子ども達や後妻、あと実の父親に虐げられてきました、だから連中が大嫌いです!! 助けてくれと言われたって助けません!!」
 マリーナさんは驚いた表情をした。
「マリーナさん、マリーナさんがまず向き合わないといけないのはテルセロ君です。あの子は母親の愛を求めて私を母と呼ぶようになってます、まずは其処の所だけ謝ってください!」
「だが……」
「だがもへちまもないんですよ!! 何かあったらディランさんにフォロー入れてくれと頼みますので言ってください!!」
「……分かった君がそこまで言うなら……」
 私は心の中でガッツポーズをしました。


「遺伝子上の母さんはドクターだけど、ドクターはお母さんじゃなくて、でもお母さんで……ディランは遺伝子的には兄だけど兄じゃなくて……」
「どうしてこうなった」
 思わずつぶやきました。
「優月ちゃんの敗因、ディランにフォローをお願いした事とドクターの口下手を理解してなかった事」
「くそぅ……!!」
 アシェルさんに指摘されて頭を抱える。
 ディランさんは申し訳なさそうな顔をしている。

――ならば、私がフォローを……――

 と、思った矢先にアシェルさんテルセロ君に近づいた。
「おい、テルセロ。ドクターは間違いなくお前の遺伝子上の母親だ。だが、彼女は母親であることをしなかった、何故か分かるか?」
「わ、わかんないよ、そんなの……」
「『我が子』に闘いを強いている自分が母親など名乗ることも母親であることも許さなかったんだ。だから母親と名乗る事も何もしなかった、お前が怪我した時かなり焦ってただろう?」
「うん……」
「腹を痛めてなくても、産んでなくても、お前が『自分の息子』だから死んでほしくなかったからだ、他の連中と違い」
 アシェルさんの言葉にテルセロ君の表情が揺らぐ。
「テルセロ君、だからこそ、マリーナさんは貴方の母親を名乗れなかった。ディランさんの事でも、母親である事を名乗るのを辞めたの。自分にそんな資格はないと。我が子に辛い闘いを強いている、他から忌み嫌われているそんな環境に置かざる得ない自分を彼女は許せなかった。だからこそ、精一杯貴方達の闘いのサポートをし続けているの」
 私はテルセロ君の手をしっかりと握り、そう言う。
「許してあげてとか、認めてあげてとかは言わない。ただ、それだけは分かって。マリーナさんがお母さんを名乗れなかったのは全部、その悪い女の所為だから」
「……うん、わかった、母さんが言うなら」
 私は少し安堵するが、気を抜かない。
「ドクター」
「何だテルセロ」
「……名前をつけてくれてありがとう、育てたというのとはちょっと違うけど、怪我をした時、いつも必死に治療をしてくれてありがとう、でもお母さんとはまだ思えない、ごめんよ」
「いや、いいんだ。私が悪いのだから」
「だから悪いのはマリーナさんの妹でしょう? 妹言うのも嫌になってきたな、名前は?」
「……ニナ、だ」
「そのニナって女が悪いんです!! 諸悪の根源!! 後、何も言わなかったミゲルさんもちょっと責任がある!! いや、かなり!!」
「優月……ミゲルの悪口は止めてくれ……事情的に彼は喋れなかったのだろう……」
「うー……」
 喋れないのは仕方ないかもしれないが、その結果がこれだから私は文句の一つでも言いたくなる。
「ところでこれは何処まで知ってるんですか?」
「上層部の連中は知っている、だがニナの所は悪魔が多すぎてディランやテルセロ達を向かわせた場合そちらに時間をとられて他が留守になる」
「マジかー……」
「それに、ニナを殺した所でどうにもできないのが分かっている」
「え?」
 予想を裏切る言葉に、私は耳を疑った。





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