10 / 11
諸悪の根源と最後の作戦
しおりを挟む「――一度ニナは殺されている」
「え?」
マリーナさんは静かに説明を始めた。
「突入部隊に胸から上を吹き飛ばされたが、即座に修復し、絶叫しながら悪魔をより産み始めた――とある。だからニナの所には近づけない」
「んぐー……」
「後、君がアークと呼ばれている場所に悪魔が近づけないのはミゲルから貰った結晶のデータをもとに作成した建物だからだ、アレは悪魔を寄せ付けない」
「……ん? つまりもしかして」
「ああ、悪魔も私には近づけない、近づけば向こうから逃げるか消滅する」
「……マリーナさん、ニナさんをどうしたいですか?」
「正直悪魔の件だけはどうにかしたい、他はもうどうでもいいから私に関わって欲しくないというか私はアレに二度と会いたくない」
「あ゛――」
マリーナさんの気持ちもわからなくはない。
私もそんな気色悪い行動をする妹なんかがいたら逃げ出して関わらないようにする。
「現状研究成果的にはどうなってるんですか?」
「そうだな、君はもし、服に大量の穴が開いたらどうする?」
「……流石に捨てますね」
「その状況だ」
「はい?」
「アークにだけ乗る事が許されている人材を乗せて、地球を捨てようという計画になっている。アークの中には悪魔は現れないからな」
「ちょ……!? それじゃあ地球の――」
「巨大なアークは完成しているが、性質上乗れない人材がいる、例えば罪人とかだな、仕方なくではなく、故意に行った連中は載ることができない。贖罪をした連中は乗れるが……」
「……だから……『箱舟』なんですねこの建物は……」
「ああ、そういう事だ。罪人が乗る事の許されない箱舟――」
マリーナさんの言葉に、私はなんとも言えない表情を浮かべる。
「優月、君の元家族はアークに乗ろうとしたが拒否された存在だ、現状地球に残るしかない」
「……」
私の事を虐げていたが、これに関しては気分は良くない。
悪魔に殺されろとかは思わない、せいぜい痛い目を見ろ程度だ。
「君は優しいから、そこまで思わないだろうが、連中は犯罪行為を繰り返しすでに刑務所行きだ、もうどうにもならん」
「あ゛──……」
堕ちるところまで堕ちた元家族達に、私は何も言うことができなかった。
「優月、会ってみるか?」
ディランさんの言葉に、私は頷いた。
改心する余地が本当にないのか調べるために。
「優月?! おお、お父さんだよ!! 頼むここから出してくれ!! お前が身元引受人になってくれたら出ることができるんだ!!」
前言撤回。
改心の余地ねーわ。
「謝罪も無しに、それですか。期待した私が馬鹿だったわ」
私はそう言ってディランさんを見る。
「もういいです」
「分かった、連れて行ってくれ」
ディランさんがそう言うと父だった男は連れて行かれた。
私を罵倒していた、謝罪は無かった。
他の連中も同様だった。
許す気も起きなくなる程の頭の花畑具合に私はげんなりして、アークへと戻った。
「優月、大丈夫か?」
「少々大丈夫じゃないです……なんでお母さんはあんな男と結婚したのか……」
ソファーにぐったりと横になる。
「……政略結婚という奴だ、向こうの祖父母がえらく君の母を気に入り君の父の会社の投資を条件にと」
「うわー……つまり、後妻は?」
「祖父母が結婚を認めなかったそうだ、家を傾けるからとな」
知りたくなかった大人の都合というものと、母に目をかけるとは父の祖父母の目は確かだが、そんな方法で母を結婚させてほしくなかった。
「母に恋人はいたんですか?」
「いや、いなかったそうだ」
「……それだけが救いですね」
「君は祖父母に会ったことがあるのか?」
ディランさんに聞かれて少し思い出す。
「ええ、一応。幼少時にあって、その後まもなく両方とも亡くなったので、そしてその後母が亡くなって、まぁあんな感じに」
「……すまない、本当にもっと早く助け出すべきだった」
ディランさんの謝罪に私は首を振る。
「いいんですよ、今こうしてディランさんが一緒にいてくれるから」
「優月……」
ディランさんが私の手を握ってくれた。
それに少しだけ救われた。
「ねぇ、母さん、僕は?」
ひょこっと顔を出してきたテルセロ君の頭を撫でて私は言う。
「テルセロ君も、ありがとう」
「えへへ……」
そんなやりとりをしていると、二人の通信機に通信が入った。
どんな内容かは分からないが、二人の表情が厳しい。
「優月、帰ってくるまで待っていてくれ」
「母さん、待っててね。帰ってくるからちゃんと」
「うん、分かった」
私はそう言って二人を見送る。
二人との今生の別れではないけれども、ある別れを意味するなど、私は知るよしも無かった。
「悪魔の数がもう対処しきれない限度に達した」
上層部はそう言った。
「ちょっと待ってください、じゃあ……」
「ああ、全てのアークを起動させる」
「地球を見捨てるのですか!?」
「人類がいる限り悪魔は地球に現れる、アークの中だけ現れないだから、悪魔へ対処できる数になるまで地球から離れるのだ」
「「……」」
「だが、その前にやることがある」
マリーナが口を開いた。
「悪魔を生み出す女の息の根を止める方法が見つかった」
「本当か?!」
「ああ、だが悪魔はそれでも現れ続ける」
「……分かった、その作戦を実行するのは」
「実行できるのはディランとテルセロの二名だけだ。他は対応できない」
「わかった、両名できるな?」
「ああ、やってみせよう」
「できるさ」
ディランとテルセロははっきりと言い切った。
「ただいま」
「母さんただいまー!」
ディランさんとテルセロ君が帰ってきて私に抱きついてきた。
「ちょ、どうしたの?」
「……俺達が近日行う任務を遂行した後、アークは全て地球を離れる」
「え?」
ディランさんの言葉に耳を疑う。
「すでに民間人も乗れる者は乗り込んでいる、だがその前にマリーナがやるべきことがあると言っていた」
「……もしかしてニナを?」
「そうだ、奴を殺す。そうすれば悪魔の数が徐々に減っていくだろうその間アークで地球を少し離れて、悪魔の出現の研究を進めればいい、という話になった」
「……ディランさん、テルセロ君」
「なんだ?」
「どうしたの母さん」
「必ず二人共戻ってくること、約束して」
「分かっている」
「分かってるよ母さん」
二人を信頼している。
けれども、少し思うのはこの二人がどうにか対応しても、悪魔の数が減るまでもうどうにもできないところに来てしまっているこの世界にも──
いや、私達にも原因があるんじゃないかと思ってしまった──
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
【完結】王城文官は恋に疎い
ふじの
恋愛
「かしこまりました。殿下の名誉を守ることも、文官の務めにございます!」
「「「……(違う。そうじゃない)」」」
日々流れ込む膨大な書類の間で、真面目すぎる文官・セリーヌ・アシュレイ。業務最優先の彼女の前に、学院時代の同級生である第三王子カインが恋を成就させるために頻繁に関わってくる。様々な誘いは、セリーヌにとっては当然業務上の要件。
カインの家族も黙っていない。王家一丸となり、カインとセリーヌをくっつけるための“大作戦”を展開。二人の距離はぐっと縮まり、カインの想いは、セリーヌに届いていく…のか?
【全20話+番外編4話】
※他サイト様でも掲載しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役令嬢に転生したみたいだけど、皇子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、皇帝が邪魔してくるんですけど……
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
お父様に助けられて公爵家の一員となって元気に暮らしていたユリアの元に、宗主国の皇帝から帝国の学園に留学するようにと使者がやってきた。お兄様はユリアを守ろうと四天王の一人の赤い悪魔に戦いを挑むが、負けてしまう。仕方なしに、ユリアは帝国に留学することに。一人で留学する事に不安を感じるユリアだが、兄姉達が一緒に留学してくれる事に!ハンブルク王国では無敵の5兄妹だが、宗主国の帝国ではどうなるのか? 銀色の髪のユリアの正体は如何に? 今全ての謎が解き明かされます。
『悪役令嬢に転生したみたいだけど、王子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、ヒロインが邪魔してくるんですけど……』の続編で帝国留学編です。
無敵の5兄妹の前に現れる最凶の帝国四天王と極悪非道な皇帝。
ユリアとお兄様達の運命や如何に?
今回の敵は最凶です。
ラストは果たしてハッピーエンドかそれとも涙無しには読めない展開になるのか?
最後までお付き合い頂ければ嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる