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戦友の告白と、胸に芽生えた想い
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今は十一月初旬。
初冬とはいえ、人の気配のない食堂は少し肌寒い。
『ゴォ~……』
静けさの中、エアコンの低い音が響いている。
杉野チーフが飲む缶コーヒーの香りがふわりと漂い、
私は受け取った缶コーヒーを両手で包み込んだ。
缶の温もりが、冷えた胸の奥までゆっくり染み込んでいく。
そんな時──
「私と森野くんはね、いわゆる“戦友”なのよ」
缶コーヒーを見つめていた私に、
杉野チーフがぽつりと呟いた。
驚いて顔を上げると、
チーフは柔らかい笑顔で続けた。
「だからね。
私としては、可愛い可愛い柊さんに誤解されて嫌われたくないのよ」
急に明るく言われて、私は思わず目を丸くする。
「あ、あの……嫌ってなんて、いないですよ!」
慌てて言うと、チーフはくすっと笑った。
「好きな人ができるとさ。
その人と親しくしてる女性、全員“敵”に見えちゃうもんね」
「……え?」
思わずまばたきする私に、
「大丈夫。気持ち、分かるから」
と優しく続ける。
「私もね……ずっと好きな人がいるの」
少し照れくさそうに缶の縁を指でなぞりながら話し始めた。
「大学の時の先輩なの。
部活で知り合って、その人の優しいところに惹かれちゃってね。
でも……大学二年の時、私が大事にしていた後輩に、
その気持ちを知られて横取りされちゃった」
そこでふっと息をつく。
「諦めたつもりだったんだけど……最近、その後輩と別れたって噂で聞いてね。
今度こそ誰にも取られたくないって思っちゃった。
だって――会いたいと思うのも、そばにいたいと思うのも……
先輩だけなんだもん」
そして、少し頬を赤くしながら照れ笑いした。
「……ふふ、諦め悪いよね、私」
その笑顔は、可愛くて、少し切なくて、
そして──どこか強かった。
初冬とはいえ、人の気配のない食堂は少し肌寒い。
『ゴォ~……』
静けさの中、エアコンの低い音が響いている。
杉野チーフが飲む缶コーヒーの香りがふわりと漂い、
私は受け取った缶コーヒーを両手で包み込んだ。
缶の温もりが、冷えた胸の奥までゆっくり染み込んでいく。
そんな時──
「私と森野くんはね、いわゆる“戦友”なのよ」
缶コーヒーを見つめていた私に、
杉野チーフがぽつりと呟いた。
驚いて顔を上げると、
チーフは柔らかい笑顔で続けた。
「だからね。
私としては、可愛い可愛い柊さんに誤解されて嫌われたくないのよ」
急に明るく言われて、私は思わず目を丸くする。
「あ、あの……嫌ってなんて、いないですよ!」
慌てて言うと、チーフはくすっと笑った。
「好きな人ができるとさ。
その人と親しくしてる女性、全員“敵”に見えちゃうもんね」
「……え?」
思わずまばたきする私に、
「大丈夫。気持ち、分かるから」
と優しく続ける。
「私もね……ずっと好きな人がいるの」
少し照れくさそうに缶の縁を指でなぞりながら話し始めた。
「大学の時の先輩なの。
部活で知り合って、その人の優しいところに惹かれちゃってね。
でも……大学二年の時、私が大事にしていた後輩に、
その気持ちを知られて横取りされちゃった」
そこでふっと息をつく。
「諦めたつもりだったんだけど……最近、その後輩と別れたって噂で聞いてね。
今度こそ誰にも取られたくないって思っちゃった。
だって――会いたいと思うのも、そばにいたいと思うのも……
先輩だけなんだもん」
そして、少し頬を赤くしながら照れ笑いした。
「……ふふ、諦め悪いよね、私」
その笑顔は、可愛くて、少し切なくて、
そして──どこか強かった。
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