月歌~あなたの歌声は、月光のように温かい~

古紫汐桜

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名前が示す真実

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 「でもな。どんなに表面取り繕うても、目だけは嘘つかれへんのやで」

 店長が意味深な言葉を残し、ふっと私へ視線を戻した。

「ごめんな~、柊ちゃん。本当は俺が送ったりたかったんやけど……
 森野君で勘弁してな~」

 からかうように笑って、店長は部屋を出ていった。

 その瞬間──私はガバッとベッドから起き上がろうとして、そのまま目眩に襲われ、倒れ込んだ。

「お前……熱があるのに、何をしてるわけ?」

 呆れた声が頭の上から降ってくる。

「え!? だって、送るって……?」

 動揺で言葉が噛み合わない私に、森野さんが短く答えた。

「安心しろ。園田さんも一緒だ」

 そう言ったところに、ちょうど看護師さんが点滴を外しに来てしまった。

 会計はすでに店長の奥様が済ませてくれていて、私はそのまま車椅子で病院のエントランスへ運ばれていく。

「あ、あの……私、一人で帰れますから!」

 必死に抵抗しても──

「往生際が悪いな! ほら、とっとと乗れ!」

 森野さんが半ば強引に、私を後部座席へ押し込んだ。

 運転席には森野さん。
 そして助手席には、当たり前のように店長の奥様。

 ……その配置に、胸の中がちくりとする。

(なんで……? 相手は店長の奥さんなのに……)

 そんな自分の感情に、また驚く。

 お店から車で10分ほどの場所に、私のアパートがある。
 森野さんは杉野チーフから預かった私物を、アパートに着くと差し出した。

「ありがとうございました」

 慌ててお礼を言って部屋に戻ろうとすると──
 何故か二人とも靴を脱いで上がり込んできた。

「え!? あの……部屋散らかってるので!!」

 オロオロする私を無視して、森野さんが突然、私の身体を抱え上げた。

「そんなフラフラな状態で、一人で何ができるんだよ!」

「ひ、ひゃぁっ──!? や、やめ……!」

「うるせぇ。諦めろ!」

 パシッとお尻を軽く叩かれ、そのまま寝室のベッドへ下ろされる。

 私の部屋は、玄関から続くキッチンを抜けると和室が二間並んでいて、その一室が寝室だ。

「恥ずかしいから、早く向こうの部屋へ行ってください!」

 必死で森野さんを寝室から押し出そうと、背中をグイグイ押す。

「分かったよ、うるせぇな!」

 ようやく立ち上がったその瞬間──

 森野さんの手が、何かに触れた。

 ガシャーンッ!

 乾いた音を立てて、床に何かが転がった。

「……っ!」

 落ちた物に気付いて拾おうとした瞬間、森野さんが私より一瞬早く掴み上げた。

「……これ」

 驚愕を含んだ声。

 その手の中にあるのは――
 私の “命より大切な物”。

「返してください。それ……私の命より大事なんです」

 ゆっくり立ち上がって言うと、森野さんはそのCDをまじまじと見つめた。

「お前……何でこれを?
 これ……『ふじま あすみ』って書いてあるぞ」

 茫然と尋ねられ、私は静かに答えた。

「……私、両親が離婚して、名字が変わったんです」

 そう言って、森野さんの手からCDを取り返した。
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