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届かない想いと、抱き寄せる腕
しおりを挟む「杉野チーフが……」
そう呟くと、杉野チーフは肩をすくめて苦笑した。
「私が何を言っても横溝さんは聞く耳持たないでしょ?
だからね……森野君なら効果てきめんかなって、ちょっと思ったのよ」
「杉野チーフ……ありがとうございます!」
思わず抱きつくと、
「こらこら、お礼は森野君に言って。私は呼んできただけなんだから」
そう言って軽く私の背中を押した。
視線を森野さんへ向けると──頭を抱えたまま座っていたその人と、ふいに目が合った。
胸がズキンと跳ねる。
沈黙のまま見つめ合っていると、
「あ! 私、店長に呼ばれてたんだった~!」
と、杉野チーフはわざとらしい声を残し、逃げるように階段を降りていった。
気づけば、ストック置き場には私と森野さん、二人きり。
何となく居心地が悪くて、とりあえず口を開く。
「あの……ありがとうございました」
そう告げた瞬間、森野さんの顔が怒りに歪んだ。
「違うだろ!
俺のせいでこんな目に遭ったのに……お前がお礼なんか言うなよ!」
その言葉にはっとする。
(もしかして……鈴原さんのこと、思い出した?)
胸がきゅっと痛む。
「……悪い。お前は被害者なのに」
怒鳴った自分を悔いたように、森野さんは深く頭を抱え込んだ。
その背中が、小さく震えている。
(あぁ……この人はずっと、こうやって自分を責め続けてきたんだ)
気づいた時には、私は無意識に森野さんを抱きしめていた。
腕の中の身体は、確かに震えていた。
怒りか、恐怖か、過去の記憶か──それは分からない。
ただひとつ、放っておいてはいけないと思った。
「大丈夫ですよ。
だって森野さん……ちゃんと私を守ってくれましたから」
私の言葉に、森野さんの手がそっと私の腕を掴み、ほどいていく。
そして、まっすぐに私を見つめて呟いた。
「……なんでお前は、そう……」
言いかけて、また深く息を吐く。
「ありがとう。あの時、お前が止めてくれなかったら……俺は横溝を、徹底的に傷つけていた」
かすれた声でそう告げると、森野さんは力なく笑った。
その笑顔が、胸をひどく締めつける。
苦しくて、切なくて、悲しくて──息が苦しくなる。
私は逃げるように言った。
「そろそろ……事務所に戻りますね」
そう言いかけた瞬間だった。
強い力で、腰を引き寄せられた。
椅子に座る森野さんの頭が、そっと私のお腹へ預けられる。
「悪い……嫌かもしれないけど……
あと少しだけ、このままでいさせてくれ」
低く震えた声。
その一言で、涙があふれそうになる。
私は……きっと“代わり”だ。
森野さんの心にいるのは、鈴原さんだけ。
わかっている。
それでも──この瞬間だけは、彼の苦しみを支えてあげたいと思った。
そっと、指先で森野さんの髪に触れる。
サラサラとした硬い髪。
軽く震える気配が伝わってくる。
(好き……大好き……でも、届かない)
私の想いは、彼にとっては迷惑になるだけ。
だから声に出さない。ただ祈るしかない。
──どうかこの瞬間だけは、森野さんの心が少しでも救われますように。
私は、ただその願いだけを胸に抱きしめてい
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