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第四章
罠②
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朝、目覚めると、頼政の布団が冷たいままだった。
晶は身支度を整え、まだ寝ている頼久をちょうど現れた三郎太に託した。
いつもなら、翡翠が先に現れるのに……何故?
嫌な予感が胸を襲う。
足早に頼政の部屋に向かい
「殿、晶です。入ってもよろしいでしょうか?」
そう声を掛けた刹那、襖が荒々しく開いた。
晶の目に飛び込んで来たのは、乱れた布団に茫然自失で横たわる翡翠の姿だった。
見上げた頼政は、満足そうに微笑み
「朝餉はいらぬ! 邪魔をするな!」
とだけ告げて、音を立てて襖を閉じた。
今……この先で何が起きている?
晶は頭が真っ白になった。
「いやぁぁぁ───っ!」
翡翠の悲鳴に、晶が襖を開けて助けようとしたその時、遠くで頼久の泣く声が響いた。
その声が、晶の足を縫いとめた。
一瞬、頼久に気持ちが行くが、翡翠を助けようと襖に手を掛けた手を、頼政の部下が晶の腕を掴んだ。
「もう、子を成せない奥方が邪魔なさるのは、いささか不謹慎かと」
小さく笑いながら言われ
「お前は、あの悲鳴を聞いてなんとも思わぬのか!」
と晶が諌めた。
するとその部下は喉で笑いながら
「女から母になった"お気に入り"を、女に戻した張本人が言いますか? 私はてっきり、子を成せないあなたが献上する為に、茶室に二人を逢い引きさせたのだと思っていましたが?」
と囁いた。
「お前……、何故それを?」
「忘れたのですか? あの方は、殿の"お気に入り"なのですよ。片時も、目を離す訳がない」
晶は自分の浅はかな行動が、翡翠をこの惨状に引き込んだ事を知った。
「殿も喜んでおられましたよ。
『思ったように動く駒で助かる』と……」
晶はこの時、友頼が怪我が治っても特別待遇だった意味を悟った。
「"お気に入り"様を女に戻すには、あの男が必要ですからね」
クスクスと笑う声が、絶望している晶の手を離した。
ガックリとうなだれ落ちる晶に
「でも、ご安心下さい。あなたを蔑ろにするつもりは、毛頭ございません。あなたは大切な、『頼久様の母上』ですからね」
と吐き捨てると
「ほら、早く戻らないと。頼久様が、ずっとあなたを恋しんで泣いてますよ」
晶は崩れそうな身体を必死に起こし、フラフラと頼久の元へと歩き出した。
「あぁ……それから、しばらく殿は一緒に寝られないそうです。次は、政治に使える姫君が生まれると良いですね?」
絶望で真っ暗な中を歩く晶の背中に、トドメの言葉が突き刺さる。
私が……翡翠を汚させた──
晶は自分が、真っ暗な暗闇へと歩み進んでいるような気持ちで頼久の待つ部屋へと向かった。
晶は身支度を整え、まだ寝ている頼久をちょうど現れた三郎太に託した。
いつもなら、翡翠が先に現れるのに……何故?
嫌な予感が胸を襲う。
足早に頼政の部屋に向かい
「殿、晶です。入ってもよろしいでしょうか?」
そう声を掛けた刹那、襖が荒々しく開いた。
晶の目に飛び込んで来たのは、乱れた布団に茫然自失で横たわる翡翠の姿だった。
見上げた頼政は、満足そうに微笑み
「朝餉はいらぬ! 邪魔をするな!」
とだけ告げて、音を立てて襖を閉じた。
今……この先で何が起きている?
晶は頭が真っ白になった。
「いやぁぁぁ───っ!」
翡翠の悲鳴に、晶が襖を開けて助けようとしたその時、遠くで頼久の泣く声が響いた。
その声が、晶の足を縫いとめた。
一瞬、頼久に気持ちが行くが、翡翠を助けようと襖に手を掛けた手を、頼政の部下が晶の腕を掴んだ。
「もう、子を成せない奥方が邪魔なさるのは、いささか不謹慎かと」
小さく笑いながら言われ
「お前は、あの悲鳴を聞いてなんとも思わぬのか!」
と晶が諌めた。
するとその部下は喉で笑いながら
「女から母になった"お気に入り"を、女に戻した張本人が言いますか? 私はてっきり、子を成せないあなたが献上する為に、茶室に二人を逢い引きさせたのだと思っていましたが?」
と囁いた。
「お前……、何故それを?」
「忘れたのですか? あの方は、殿の"お気に入り"なのですよ。片時も、目を離す訳がない」
晶は自分の浅はかな行動が、翡翠をこの惨状に引き込んだ事を知った。
「殿も喜んでおられましたよ。
『思ったように動く駒で助かる』と……」
晶はこの時、友頼が怪我が治っても特別待遇だった意味を悟った。
「"お気に入り"様を女に戻すには、あの男が必要ですからね」
クスクスと笑う声が、絶望している晶の手を離した。
ガックリとうなだれ落ちる晶に
「でも、ご安心下さい。あなたを蔑ろにするつもりは、毛頭ございません。あなたは大切な、『頼久様の母上』ですからね」
と吐き捨てると
「ほら、早く戻らないと。頼久様が、ずっとあなたを恋しんで泣いてますよ」
晶は崩れそうな身体を必死に起こし、フラフラと頼久の元へと歩き出した。
「あぁ……それから、しばらく殿は一緒に寝られないそうです。次は、政治に使える姫君が生まれると良いですね?」
絶望で真っ暗な中を歩く晶の背中に、トドメの言葉が突き刺さる。
私が……翡翠を汚させた──
晶は自分が、真っ暗な暗闇へと歩み進んでいるような気持ちで頼久の待つ部屋へと向かった。
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