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私の名前はミリア・パリス。
社交界のニュースターと評される、とびきり美人で頭が良い15歳の伯爵令嬢ですわ。
今現在、私は両親と12歳年上のミカエルお兄様、そしてその妻であるヴェニシア義姉様と暮らしています。
何不自由ない生活を送っているけれど、まぁまぁ、どの家にも心配ごとはつきものでして。
今回は特別に、ちょっと恥ずかしいその話を読者の皆様に披露いたしますわ。
さて皆さん。貴族の家の最大の関心事であり重要課題といえば、何だかお分かりになりまして?
ふふ、簡単すぎたかもね。
そう、それは健康な跡継ぎを産み育てることです。
貴族の家に生れた者が持つ使命とは、高貴な血統をつないでいき、つつがなく家名を存続させることに他なりません。
しかし、我がパリス家の嫁は、結婚して一年経っても二年経っても一向に妊娠しなかったのです。
最初の2年はうちの両親だって、そうとやかく言わなかったんですのよ?
でも。3年が過ぎ、4年が過ぎ……子どものないまま5年目を迎えてからは、さすがに待ちかねてしまったみたい。
心配のあまり、毎日のようにその話題が家族の間で持ち上がるようになりましたの。
「一日も早く孫を抱かせてほしいものだ」と、お父様。
「子宝に恵まれるためにはそれなりの身体によいものを口にするべきよ。料理人にレシピを渡してあるから、毎日ちゃんと食べるのよ。これはパリス家の嫁の義務と心得ることね。飽きるとか苦いとかそんなワガママは許しません」と、こちらはお母様。
「ヴェニシア義姉さまは、ちゃんとしたお医者さまの診療が必要なのではなくて?」
おっと、最後は私の台詞でしたわね。
まあ、パリス家の跡取り問題については、実際のところ私も無関係ではいられないんだし。年下の私が口を出す権利は十分あると思いますわ。
そもそも正直なお話。伯爵家の長男であるミカエルお兄様と男爵家出身のヴェニシア義姉さまの結婚は、家格が釣り合っていません。
その点については、当初うちの両親もかなり難色を示したらしいのです。
けれど、周りに何と言われようともお兄様は自分の意志を曲げず。
「ヴェニシア嬢と結婚できないなら、この先も僕に妻はいらない!」
そう啖呵を切ったんですって。惚れて惚れぬいて、やっと結ばれた恋女房ってところですわね。
だから子どもはいなくても、夫婦仲はとても良かったの。夫婦というよりは、恋人同士のような新鮮味を残したまま、五年間を過ごしたわけなのです。
――――だからこそ。両親と私はヴェニシア義姉さまの不妊を疑っていたんですけどね。
跡継ぎを産めないとわかれば、当人たちの感情はどうあれ、御家のために離縁も視野に入れなければならなくなります。
残酷だとお思いになりますか?
長男の嫁というのは、それだけ重い責任があるんですよ。
とくに親の反対を押し切った手前、格下の子爵家出身のヴェニシア義姉さまの場合、我がパリス家にその責任を果たさないまま籍を置くことは、年々難しい状況になっていたのは、当然の流れでありました。
社交界のニュースターと評される、とびきり美人で頭が良い15歳の伯爵令嬢ですわ。
今現在、私は両親と12歳年上のミカエルお兄様、そしてその妻であるヴェニシア義姉様と暮らしています。
何不自由ない生活を送っているけれど、まぁまぁ、どの家にも心配ごとはつきものでして。
今回は特別に、ちょっと恥ずかしいその話を読者の皆様に披露いたしますわ。
さて皆さん。貴族の家の最大の関心事であり重要課題といえば、何だかお分かりになりまして?
ふふ、簡単すぎたかもね。
そう、それは健康な跡継ぎを産み育てることです。
貴族の家に生れた者が持つ使命とは、高貴な血統をつないでいき、つつがなく家名を存続させることに他なりません。
しかし、我がパリス家の嫁は、結婚して一年経っても二年経っても一向に妊娠しなかったのです。
最初の2年はうちの両親だって、そうとやかく言わなかったんですのよ?
でも。3年が過ぎ、4年が過ぎ……子どものないまま5年目を迎えてからは、さすがに待ちかねてしまったみたい。
心配のあまり、毎日のようにその話題が家族の間で持ち上がるようになりましたの。
「一日も早く孫を抱かせてほしいものだ」と、お父様。
「子宝に恵まれるためにはそれなりの身体によいものを口にするべきよ。料理人にレシピを渡してあるから、毎日ちゃんと食べるのよ。これはパリス家の嫁の義務と心得ることね。飽きるとか苦いとかそんなワガママは許しません」と、こちらはお母様。
「ヴェニシア義姉さまは、ちゃんとしたお医者さまの診療が必要なのではなくて?」
おっと、最後は私の台詞でしたわね。
まあ、パリス家の跡取り問題については、実際のところ私も無関係ではいられないんだし。年下の私が口を出す権利は十分あると思いますわ。
そもそも正直なお話。伯爵家の長男であるミカエルお兄様と男爵家出身のヴェニシア義姉さまの結婚は、家格が釣り合っていません。
その点については、当初うちの両親もかなり難色を示したらしいのです。
けれど、周りに何と言われようともお兄様は自分の意志を曲げず。
「ヴェニシア嬢と結婚できないなら、この先も僕に妻はいらない!」
そう啖呵を切ったんですって。惚れて惚れぬいて、やっと結ばれた恋女房ってところですわね。
だから子どもはいなくても、夫婦仲はとても良かったの。夫婦というよりは、恋人同士のような新鮮味を残したまま、五年間を過ごしたわけなのです。
――――だからこそ。両親と私はヴェニシア義姉さまの不妊を疑っていたんですけどね。
跡継ぎを産めないとわかれば、当人たちの感情はどうあれ、御家のために離縁も視野に入れなければならなくなります。
残酷だとお思いになりますか?
長男の嫁というのは、それだけ重い責任があるんですよ。
とくに親の反対を押し切った手前、格下の子爵家出身のヴェニシア義姉さまの場合、我がパリス家にその責任を果たさないまま籍を置くことは、年々難しい状況になっていたのは、当然の流れでありました。
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