深海を泳ぐ金魚

國灯闇一

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手探りの出会い

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 再婚の見通しが立つのは意外にも早かった。おそらく、俺が聞かされた時にはすでに再婚の手筈は整っていたのだろう。そして――顔合わせの日がやってきた。

 こじゃれた喫茶店の席についていた俺は、先送りにしていた考えを巡らせながら、義母と義妹を待っていた。
 これから一緒に暮らすことになる赤の他人とどう接していけばいいのか。
 会って間もない人を母さんと呼んだ方がいいのか、他の家庭と変わらない息子を演じた方がいいのかとか、精神症状を治療している妹にどう気遣えばよいのかとか、様々な不安が浮かんでは沈んでいくことを繰り返し、いやに喉が渇いてレモンティーをがぶがぶ飲んでいた。
 不安が解消されることはなく、初対面の時が訪れた。

 物腰の柔らかな奥ゆかしい小柄な女性だった。横に流したブラウンの髪、グレーの長袖ニットと青のロングスカートの女性は、
 「初めまして。百合静ゆりしずかです。お父さんにはいつもよくしてもらって……」と華やぐ笑顔を向けてきたので、俺はドキリとしてしまった。
 俺は「小橋伸悟こはししんごです」と、自己紹介するのがせいいっぱいだった。
 綺麗なお姉さんという雰囲気で、この人が俺のお母さんになるとは思えないくらい若かった。
 緊張と困惑に揺らぐ俺をよそに、紹介は静さんの娘に移った。マフラーの上から出た色白の顔がクシャリと笑う。

「初めまして。百合泉希ゆりみずきです。よろしくお願いします」

 興味深々な瞳は確実に俺を射抜いぬいていた。小さな声で「よろしくお願いします」とオウム返しをした。
 意外だった。てっきり、おどおどした子だと思っていたのに、わりと明るかった。静さんと話す時も友達みたいな仲の良さが印象的で、とても精神的に苦しんでいる子には見えなかった。
 それで俺の肩の荷はほんの少し下りた気がする。
 俺達は2時間ほど話しこみ、今後の予定を確認し合って別れたのだった。
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