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転生先での母親が冷たい件について

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俺が生まれ落ちてから5年、当たり前だが俺は5歳になった
「母さん、朝御飯食べて行かないの?」
5歳の俺は普通の生活が出来ていなかった、転生前の母親である透子に大切に大切に甘やかされたコウは家事全般まったく素人なのだ、なのに今回・・・いや、今の母親というべき人は花街で人気のある人であった為、俺が家事全般をしなくてはいけない
ついでに、この母親はコウの事を邪魔な存在としか認識していないので、感謝などされない
「いらないわ、勝手にしてちょうだい・・・ハァ、ガキが居ると仕事もまともに出来ないわ、アンタ、アタシが帰ってくるまでにその辺に片付けといて・・・いいわね」
このように、今の母親はコウに対してとても冷たいのである、何故そんなコウに前回と同じ名前が付けられたのか、それは本人もよくわかっていなかった
「(この母親が俺に幸せの風なんて、子供思いな名前なんて付けるわけないしなぁ・・・)」
ここ5年生きてきた中で最大の謎である、そんなこんなでコウは着々と家事全般、壊れたものを直す修理の腕、愛想、社会の渡り方、偽の性格などなど・・・このスラムのような場所で生きていく術は全部学んでいた
「(ある程度大きくなって、1人で生きていけるようになったらここをでないと、なんでかこの何もなさそうな家には大量の本が地下室に隠してあったし、知識は充分ある筈だ)」
そう、コウが住んでいるスラムにあるような家には、隠し扉があってその先は地下室に繋がっている扉が・・・・扉を潜れば有り得ない量の本が置いてあるのだ、そこの本を人外の早さで読破したコウは、もう既に1人で生きていけるだけの知識がある
「・・・わかったよ、母さん・・・お仕事気をつけて、行ってらっしゃい・・・」
コウはこの世界に来て初めて、自分は芝居の才能があることに気付いた、この子供の振りもいい加減やめたい・・・体の年は5歳だが、精神的な年齢は軽く20歳を越えているのだ、恥ずかしくて毎度倒れそうな程恥ずかしいのであった
ちなみに、前回の話で出てきた神様のせいで死んでしまったという件は、転生するまでの時間ですべて話してもらっていた、コウの心がけは凄いと世界の神様(自称イケメン)は項垂れていたとのこと
「(まさか本当に気まぐれで死んでしまったと思うと、非常に残念な気持になる・・・とにかく、早く大きくなろう)」
大人になる日を待ちわびる中、コウはその面倒見の良さから花街で産まれた子供たちの中で一番の人気者になっているということと、イジメっ子達から、弱い子供を守ったりしているコウは、子供たちの中でボスと呼ばれている事など本人は知らない









ー13年後ー
ザワザワと煩い城下町で、深い青緑の髪をウルフカットにしている青年がニコリと、人を惹きつける笑をその口元に添え、ガーベラ色の瞳をユルリと細めた
煩い中、目の前にいる1人のお客様に向かって息を吸う
「いらっしゃいませ、何でも屋〔ラフィリティ〕へようこそ、貴方の願い・・・叶えます」
対して大きくないその声は不思議と沢山の人の視線を集めた
青年はお客様の相手を忘れずに、ここぞとばかりに、宣伝を開始する
「皆様も是非、ここラフィリティはお困りのある、皆様方の味方です・・・お困りならばどうぞ、移動しながらの何でも屋は長く滞在いたしませんよ、今の内に・・・・お悩み解決致しませんか?」
なんともうまい誘い文句をツラツラと吐いて、人々を魅了する・・・
18歳になったコウは、何処か不思議ですべてを解決する立派な何でも屋になっていた
「(あぁ・・・天職見つけたかも、何でも屋最高)」
転生してからの人生を、何でも屋として満喫しているコウ、ついでにいうと世界の神様に願ったチート能力は、誰にもばれないようにひっそりとその力を発揮していた
人を寄せ付ける魔法を使っている事など、そこに居る誰にもバレてはいなかった
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