上 下
2 / 16

世界の神様、そして輪廻転生

しおりを挟む
暗く、でも果てしなく広い場所で幸風は目が覚めた
ここは何処だろう?そう思った幸風はあたりを少し見渡す、幸風はその空間のような場所に浮いているのである
こんな場所、知らない・・・
混乱するのも理由わない、幸風自身は先程持病の病気が悪化して、あの世にいった筈なのだ
「(なのにどうして俺はここにいるんだろう)」
そんなことを思っていると幸風の体が垂直になるのを感じた、そのままユックリと地面に降り立つような感覚で足をしたに下ろす
すると思った通りに、地面とはまた別の感触が何も履いていない足を刺激する
「(不思議な場所だ・・・)」
このまま何処まで行けるのか試したい気持ちのまま幸風は歩き始める
何処までも暗いその空間は一向に明るくなる兆しはなく、ただ淡々と同じ景色が続いていた
だがそんな空間の中幸風はほんの少し興奮していた、こんなに長い時間を自分の足で歩いた事は無かったのだ
「(ここは病気に悩まされることがないのか、意外と嬉しいものだな、自分の足で歩けるって)」
幸風はまるで小さい子供のような気持ちでいた、走ったらどれ位のスピードが出るかな、ジャンプしたらどれだけ飛べるのだろう、とまさしく子供が考えそうな事を考えて、頬を赤く染めていた
もう既に、ここが何処なのだろうと関係無い、今は思う存分試したいことを試そう
幸風はそう考え、今自分が何故ここに居るのか考えることを止めた
《それは困るのぅ》
嬉々として試しに走ろうとしていた幸風の頭の中に、そんな言葉が流れ込んできた幸風が驚いてあたりを見渡そうとした瞬間、暗い空間が弾け飛ぶような衝撃を身体に受ける、思わず目を瞑り腕を顔の前に
一瞬の浮遊感が幸風を襲い、地面に足がついたと思うと、そこは前のような硬い感触では無かった、芝生の上に立っているような・・・そんな感触だったのだ、恐る恐る目を開けるとそこは先程とは全く違う、むしろ真逆の場所だった
明るく優しい光をたたえた白い空間・・・今まで暗いところに慣れていた目が眩しいと脳に信号を送ってくる、目を細めてその白い空間を眺めるとその中央に自分と同じように人がたっているのが見えた 
「(あの人はここの事を何か知っているかもしれない)」 
幸風の思考の奥深くで、あの人に聞けば全て解決すると、何かしらの勘がそう告げていたのだ
その人は後ろを向いていて、身体にローブを纏い・・・神妙な空気を漏らしている
小走りでその人に近付くと、幸風に気づいたのか、のんびりとした雰囲気でこちらを振り返る
《やっと来たか、待ちくたびれたわい》
その声は、意識が落ちる直前に聴いた声と酷く酷似していた
金色のまるで糸のように細い髪を横で纏め、こちらを見る視線には優しさと哀愁が漂っている、見た目オジサンのその人は幸風の事を見定めるようにじっと見ていた
「・・・貴方は誰ですか?」
《わしは世界の神、お主があまりにも可哀想じゃから、輪廻転生をさせる為にこうしてお主の前に姿を表した、イケメンな伯父様じゃよ》
幸風が知りたいと思っていた事を纏めて簡潔に説明してくれた世界の神様は、少々残念な性格をしているようだと幸風は考えていた
目の前にいる世界の神様はお世辞でもイケメンとは言いがたい姿をしていたからである
「(神様って、本当なのだろうか?こんな残念な性格してるのに・・・)本物の神様なんですか?」
幸風自身あまり神様というものを信じてはいなかったので、その疑問を自称イケメンな神様に聞いてみた
《当たり前であろう、転生させてやるお主の一番の希望場所を言ってみよ、わしはその願いを叶えよう》
神の言葉を聞いて、幸風は何も疑うことはしなかった、何故かこの人は本当の事を言っているんだと思ったからだ
ならば願う転生場所は一つだと、幸風は先程よりもキラキラとした目で神様を見る
「じゃぁ、ファンタジーの世界に転生したい!ついでに特典欲しいです!」
その言葉を聞いた神様は、度肝を抜かれたような顔をした後、盛大に笑い始めた
《カッカッカッ!面白い、面白いぞ人の子よ!いいであろう、どんな特典が良いのじゃ?イケメンな神様が叶えてやろう!》
爆笑している神様を目の前に、幸風はどうするべきか考えていた、勿論特典のことだが
取り敢えず幸風自身、主人公側と呼ばれる魔王を倒しに行く奴らとの関わりはあまり持ちたくはないらしい、だが主人公側の手伝いはしたいのだ、どうするべきか・・・迷うならば漫画好きなら叶えたいあの願いを言うべきではないだろうか
決意を固めた幸風はここに来て初めて大声をあげた
「チート能力が欲しい!」
《良いであろう、わしはお主を気に入った神様の気まぐれで死んでしまった可哀想な人の子よ、元気でファンタジーの世界を駆け回れ!お主の来世に幸あらんことを!!》
神様の大きい声は、幸風がいる白い世界に円をもたらした・・・輪廻の輪である
幸風はそれが輪廻の輪だということを知識として知っていたので、一度神様を見て頭を下げる
「ねぇ、神様の気まぐれで死んだってとういうことか、転生してる時に聞かせてよ」
その言葉にギクリと身体を揺らした自称イケメンの神様に小さく笑うと、幸風は輪廻の輪に飲み込まれていった











その数年後、花街の女から1人の男児が誕生する、花街の女がつけたその子供の名は・・・
コウ
幸せの風という意味の名であった
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

脇役のオッサンが異世界無双

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:20

蒼のタチカゼ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

俺は彼女に逆らえない

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

その辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:199

とんでもなく悪い奴

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:14

世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:12

扉の向こう

ミステリー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

アラカルト

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...