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ファイタードラゴン、エリマキでした

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目の前にあるのは硬すぎる壁、周りは悲鳴と逃げ惑う人々の声で誰がどうなっているのかわからない・・・
逃げ惑う人々の中、1人だけ動かない青年がいた、青年は皆が逃げる中一人佇み余裕の笑を浮かべる
「なにこれ」
青年は酷く落ち着き払った表情でそう言ったのだ













コウが合流して部隊が揃ったようで、馬車を取り囲みながらもうかなりの距離を移動した、コウは馬車の隣で馬を駆りながら真剣な表情をしている、休憩ポイントをすぎた頃から、コウの首の後ろがチリチリと痛んでいた
「(なんだろうこれ・・・初めての長旅で疲れでも出たのか?そんな事はないだろうな、多分これは・・・警告だ)」
この先に進むなという警告、そうでもしない限りきっとこの先にある危険から身を守れない・・・早く迂回して元来た道を戻れっいう警告だとコウは思っていた
だがここで止まる訳にもいかない、だから馬を握る手綱を強く握り直した
コウは療養場所がある所を知らないので、隣で馬車の手綱を握っている男に声をかけた
「療養場所って後どれ位で着きますか?」
「・・・もうすぐだ、アンタ本当に大丈夫なのかい?ファイタードラゴンはそんな安っぽい剣で倒せる相手じゃァない」
恐怖からなのだろうか、男の握るその手綱は小刻みに震えていた
コウは男に答えることはなく前を向く、元々男もこちらを見てはいなかったので期待など初めから無いのであろう、コウがファイタードラゴンを倒すという期待なんて・・・
「(もうすぐ・・・か)」
首の後ろのチリチリと痛むそれが、どんどんと強くなるのを感じた、痛みが今までより酷くなったとき、コウは馬を止め声を張り上げた
「避けろぉぉ!」
コウの声が聞こえた瞬間、辺りは砂埃で覆われてしまうが、コウは馬の上で立ち上がり砂埃から出てくるファイタードラゴンであろうそれに、腰から抜いた剣を向ける
コウは瞬間的に後ろだと思った、そのまま感まかせに、背後へと剣を跳ね上げた
「ぐぁぁあぉぉ!!」
姿は確認出来なかったが、なにか硬いものに当たった感触とモンスターの叫び声で自分の剣が当たったことを確認する
馬の上から飛び降りたコウは、馬車の前まで駆け出し砂埃を払うため魔法を使おうと口を開く
「ぐぁぁあ」
だが呪言霊の途中で横から飛び出してきたファイタードラゴンに魔法を邪魔されてしまう
「・・・ちっ」
思わず舌打ちしたコウはファイタードラゴンを切りつけようと剣を前に突き出し、それと同時に早口で呪言霊を唱える

「我が道を阻むそれを消しされ」

その呪言霊は霧や砂埃を払うのにはもってこいのものであった
一瞬にして晴れた高野に目を向けると、目の前にみっつの鋭い爪が見えた、コウは体を下に下げ、無理な体制でそれに剣を当てる
ファイタードラゴンであるそれは、一旦コウの前に距離を開けて立つ、それを見てコウは余裕の顔をその強ばった顔に貼り付けた
ファイタードラゴン、コウの予想では名前の通り立派な爪と牙を持った、巨大な龍の姿をしている筈だった、だが目の前に居るそれはイメージと全く違い、想像がつかないくらいにその姿はファイタードラゴンでなく、信じられないような姿をしていたのである
一言で表すのならエリマキトカゲが一番あうだろうか・・・愛嬌の裏にあるその顔は、とても好戦的であった
チラリと自らの後ろにある馬車を見る、鉄で出来たその馬車は、先程コウがファイタードラゴンからの攻撃を避けたさいにファイタードラゴンの攻撃を受けて、一部凹んでしまっている
「お嬢様を連れていってください、俺はあいつの相手をします」
固まってしまっている男にそう支持したコウは、仲間全体に打撃防御系の魔法を展開する
この魔法は自分が仲間だと思った人にのみかけられる魔法、ちなみに高位魔法である
「さぁ、お手並み拝見と行きますか・・・ファイタードラゴンじゃなくて俺のだけど」
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