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初めてチート能力を戦闘に使った日

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何度も響く爆音に、防御魔法をかけているのに怪我をしていく人々
コウは一人、ファイタードラゴンと対峙していた
「(エリマキトカゲを二足歩行にしたらあんな感じなんだろうか・・・いや、ファイタードラゴンの方がデカイかな)」
というか、エリマキトカゲとファイタードラゴンを比較していた
硬い鱗を持ち、戦闘に特化したドラゴンの正体がエリマキトカゲでは納得行かないようだ
「来いよ、一発で倒してあげる」
コウがそう言って挑発すると、ファイタードラゴンは前足を構え、ゆっくりと左手を後ろに下げる
殴る前の動作のようだが、それにしてはかなり遅い、何をしているのか観察していると、ファイタードラゴンはそのままのスピードで左手を前に持ってきた、その瞬間コウ目掛けてファイタードラゴンの左手から繰り出された謎の竜巻が襲いかかる 
「コウさん!!」
後ろに下がらせていた依頼人のお嬢様がコウの名前を強く読んだ、だが竜巻がなくなった時、当の本人はポカンとした表情で竜巻から出てきた
「(え、どうしたのファイタードラゴン、君魔法使えないんだよね?何今の竜巻じゃん!自然の原理とか、竜巻発生の原理とか、関係無いんだ!?)」
コウは内心とても混乱・・・というか一方的にファイタードラゴンへツッコんでいた
そしてファイタードラゴンは威張るようにして胸を張っていた、そう・・・効果音で表すのなら〈エッヘン〉である、そんなファイタードラゴンにさらにツッコミながら
コウは今度こそ内心焦っていた
「(今のは序の口みたいな感じがする・・・もしかしてファイタードラゴン自体は魔法使えないけど今みたいな事は出来るのかな・・・そうだろうな~これは早く片付ける必要がありそうかな?)」
自問自答したコウは、さっさと片付ける為に高位魔法の準備を始めるコウ、念には念を入れて魔力は多めに(あくまで多めに)使うことにしたらしい、まだ一度も戦闘に攻撃魔法を使った事は無いのでどうなるのか分からないのだ
ファイタードラゴンは硬い鱗を持つので、魔法も効くか分からないが、コウは自分のチート能力ならなんとかなる気がしていた
「じゃぁ今度はこっちの番だな」 
コウがそう言って笑うと、ファイタードラゴンもコクリと頷き手首でちょいちょいとこちらを挑発してきた
その様子に少しだけ可愛いなと思いつつ自分の右手をファイタードラゴンに向かって突き出した

「銀色に輝く鋼の鉄」

鉄屑を創り出す魔法を唱え、自分の周りにキラキラと輝く大量の鉄屑を浮かせておく 

「集まり纏まり、多数に括れ」

物を纏める魔法でその鉄屑を多数の塊にに纏め、今度は自身の真上に留める

「形を変えよ、鋭く長くどんな鎧も貫く刃となれ」

次に纏めた物を、形を変える魔法で変えていく・・・針のように尖った長い物がコウの周りと、その周囲の空を埋め尽くした
その光景にファイタードラゴンは目を見開き、逃げようと後ろに駆け出す
「戦闘中に敵に背中を見せるなんて、無防備だな・・・・・これで終わりだよ」
ファイタードラゴンに向かって突き出していた掌をゆっくり握る、そして最後の呪言霊を口に出す

「何人たりとも逃がさぬように、追いかけろ」

掌を握りきった瞬間、コウの周りに浮いていた全ての鉄の塊がファイタードラゴンへと飛んでいく、逃げるファイタードラゴンを追いかけるように魔法をかけたので、逃がすことは無い
どごぉぉぉぉぉぉ!!!
予想外の音にコウはその笑顔が引きつった
コウ自身、そんなに魔力を(まぁ多少は込めたが)込めたつもりはなかったのだ 
「なにこれ」
コウの引きつった笑は周りからは余裕の笑に見えたという






「この度は、本当にありがとうござました、コウさんのお陰で安心してここに来れましたわ」
あの後お嬢様をしっかりと送り届けたコウは屋敷でもてなされていた
「いえいえ、それが依頼でしたから・・・君が無事で何よりです」
接待のつもりでお嬢様と接しているのでどことなく紳士な雰囲気が漂う中、コウはお礼と言われ至れり尽せりされていた
だがコウはここに何時までもとどまることはしなかった、依頼金を貰いお嬢様の計らいで1頭馬を貰ってしまったが、そうそうにその屋敷を後にした
「本当にいいんですか?こんなに立派な馬を貰ってしまって・・・」
「はい!その馬は余り人を載せたがらずに困っていたのですが、コウさんは平気みたいですから!連れて行ってあげてくださいませ」
という経緯だ、この世の中上手く回りすぎだろとコウは思っていたが、貰えるものは有難くという精神で馬を貰ってきたのだ
ちなみに流石金持ちの馬、きちんと名前で呼ばないと不機嫌になるらしかった
「行こうか」
コウがそう声をかけても動こうとしない馬にお嬢様が馬の名前を教えてくれた
「これからよろしくな、メディウム」
「ブルルッ」
やっと反応してくれたメディウムに苦笑いしながら、城下町まで戻った
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