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これぞ強制イベントフラグ

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城下町に戻ると、馬を預けれる宿に移りメディウムを休ませてからコウはベットの上で自分のチート能力の凄さを改めて確認していた
「まさかあそこまでとはなぁ・・・」
そこでハッと気づく、これはもしや俺自身が主人公なのでは!?と
コウはそういう事があることは知っていたし、漫画や小説もそういうものが多い
だがコウ自身の願いは主人公側の人達のサポートであって、決して自分が魔王を倒したいわけではない
だから、この状況はコウにとって最悪と言わざるおえない・・・
「いやいやいや、流石にそれは無い!きっと何処かに主人公側、つまり主役がいるはずだ!!」
絶対そうだ!というかいてほしい!そんなことを願いながら、コウは深い眠りに落ちていった



次の日コウはメディウムに乗り昨日行った朱璧門とは別の門に来ていた
「(今日はラフィリティはお休だ、翆璧門の方に行ってみよう)」
翆璧門は朱璧門と違い緑が多い場所だ、森が多く薬草などの入手にもってこいの場所である、コウは今日気分でここに来た
「魔法の使いすぎってことはないだろうけど、疲れたしね・・・息抜きは大切だよ、うん」
誰かを説得するような口調で一人森の中を進んで行った
ちなみに誰もコウの行動を咎める者は誰もいないので、説得する意味はない
「ブルルッ」
突如メディウムが止まり、コウは不思議に思って前を見るがそこには何もいなかった
「どうしたの?メディウム・・・何か、いる?」
ここは門の外、いつ何処でモンスターに会うか分からない、コウはメディウムを落ち着かせながら辺りを警戒していた
「(・・・・・四五人、いや・・・もっとか・・・?)」
気付けば辺りを囲まれていたらしい、姿が見えない当たりモンスターではなく人間だと言うことだけは分かる
「(ラフィリティでの仕事で怨みを買うような事があったか・・・)」
何でも屋という職業柄、怨みは買っても仕方ないと思っていたのだが、囲む人間に怨みという感情は見えなかったので、コウは警戒は解かないまま不思議に思っていた

「風よ飛べ、見えぬ刃となり、轟かせ」

とりあえず怪我をする程度ですむ様に魔力はまったくこめず、3つの呪言霊を紡いだ
その鎌鼬のようなものを受けた人間達はそれぞれ違う場所を抑えながら、コウの前に出てきた
「何の用でしょう?俺は貴方がたを知らないのですが・・・」
威圧的に見えないようにメディウムから降り(偉そうに見えて怒りに油を注ぐことはしたく無い)和やかにそう聞いた
「お前が王子を攫ったのか」
その集団の頭がコウの前に出てきてそう聞いた
その言葉にコウは内心首をかしげる・・・王子という言葉に聞き覚えが無いのである
そしてよくよく周りの人達を観察すると、何かと着ているものが豪華で、強い武器や守備力の高そうな服を来ている事に気づいた
「王宮の人達ですか・・・そして貴方がたは攫われた王子様を探している、と」
顎に手をやり頭・・・騎士団長か何かの役職にいるであろう男にそういった
男目を見開き、周りの人達も武器を構えるがコウは動じずにフワリと微笑むだけであった
「少し考えれば分かることでしょう?今貴方がたが俺に向かって情報提供をしたのですから」
コウの言葉に一番装備の硬そうな頭が笑いだした、その笑い声を聞いて周りの人達は武器を収めてしまう
「お前の言う通りだ、すまなかった王子が攫われて気がたっているのだ」
相手がにこやかに話しかけてくるのでコウも人の良い笑を浮かべながらその言葉に同意するように言葉をかける
「それはそうでしょう、誰しも仕えている相手が居なくなれば焦ります、忠誠を誓う相手なら尚更でしょう」
とにかく今は相手を怒らせないように、自分の逃げ道を探そうとコウは考えていた
ついでに仕事をする気は無かったが、この調子なら暫く遊んで暮らすお金が手に入りそうなので、ちょっと仕事をしようかなと思っているコウであった・・・やはりお金はいるのである
「そうなのだ、特にあいつはな・・・っと自己紹介が遅れてしまった、ワシはリョサイ護衛団の隊長だ」
相手もコウの事を警戒してはいるものの、友好的にしてこようとしているので好都合なのだ、コウも自己紹介をしようと口を動かした時、大声がコウの言葉を遮った
「そんな奴にホイホイ情報提供するな!!そいつが王子を攫った奴ならどうするつもりだ!」
まだ幼い声だった、その声の主を探すと目の前に少年が降りてきた
しかもコウに短剣を当てるつもりで・・・
「これガイ 止めないか、コヤツは怪しい奴ではない・・・まぁ少し警戒心が強いがな」
ニヤリと挑発するような笑にコウ自身苦笑いをした、やはりバレていたかと思いながら、ガイと呼ばれたその少年を見る
ガイはコウに向かってどこぞのモンスターのような威嚇を飛ばしてきていた・・・
面倒な事になってしまったなと内心ではそう思いながら、再度笑顔を見せてガイに向かってきちんと挨拶をする事にした
「初めまして、ガイ    俺はコウ・・・何でも屋、ラフィリティをやっている者だよ、気ままに旅をしながらね」
なるべく警戒心を持たれないようにとガイの身長に合わせて膝をおって自己紹介をしたコウに何故かリョサイが目を見開いていた
「ラフィリティ・・だと?」
「はい、そうですが何か・・・?」
リョサイが顔を上げたコウの肩に両手を置いた、そしてそのまま先程のように大声で笑い始めたのだコウが戸惑っているとガイがそんなリョサイに怒りを顕にした
「なんで笑ってんだテメェ!」
「ガイおめぇは知らないだろうがな、何でも屋ラフィリティってのは今凄い噂になってんだよ、受けた依頼は何でもこなす腕が利き信用の出来る何でも屋だってな!!」
「(そんなに噂になってるのか・・・ラフィリティ凄い)」
コウはそんな会話を聞きながら、まるで人事のように感じていた
実際その通りなので、何も言い返す事はしないだけなのだが
「おめぇなら信用出来る!依頼をしたいんだが頼まれてくれないか」
元よりそのつもりであったコウはこれ幸いと口角を上げ、リョサイに向かって頭を下げる
「何でも屋ラフィリティ、あなたの願い聴きましょう・・・何をお望みで?リョサイの旦那」
まるで紳士だ、とガイは思っていた
頭を下げるその動作、計算つくされた笑にガイは心を打たれてしまったのだ、自分の警戒心が薄れていることに気づき再度コウを睨みつける
「俺達と一緒に王子を探してほしい」
「な!?何言ってんだリョサイ!!」
「お主は黙っておれ!」
ガイはリョサイからの怒りに黙り込んで更にコウを睨みつける、居心地の悪い中リョサイは先ほどと変わらない声で言った
「俺達と一緒に王子を探してほしい」
「・・・・その依頼、承りました」
そこまだ来て、コウふと思った
「(あれ?なんか・・・面倒事にまきこまれた・・・?いやまぁ何でも屋で慣れてはいるが、これはちょっと・・・しかも無意識だったし・・・あ、イベントフラグ建設しちゃった感じ?)」
今までコウは意志を持って面倒事に関わってきた、しかし今回はどうだ
お金が欲しいとは思ったがほぼ流れで面倒事に巻き込まれてしまった・・・
「(強制イベントフラグ・・・恐ろしい)」
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