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第一Q 隻腕の単細胞
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次の日から、雪之丞の猛練習が始まった。
課題はたくさんあるが、一刻も早く人並みにできるようにならないと話にならない技術は、大雑把に纏めると二つある。
まず一つ目はパスだ。左手のない雪之丞にとって、パスは出すことよりも受けることの方が困難だった。至近距離からの渡されるようなパスならともかく、スピードに乗った強いパスは弾いてしまうことが多かった。
さらに、試合ではゴールに向かって走りながらボールの受け渡しをしなければならない。右手しか使えない雪之丞は、右からくるパスを取るのがどうしても苦手だった。
二つ目はボールの保持だ。勿論、雪之丞にドリブルの技術が足りていないことも大きな原因に挙げられるのだが、ボールを持って一度立ち止まってしまった場合、普通ならば両手と体で敵からボールを遠ざけるようにブロックしつつ、パスやシュートをするタイミングを待つ。しかし雪之丞はそのブロックができないため、敵に囲まれると成す術がなくなってしまうのだ。
パスが上手く取れず、ボールを持ってもすぐに取られてしまう雪之丞に、わざわざパスを出そうとする味方はいない。敵もそれをわかっているから雪之丞へのマークを甘くし、他のメンバーへのカバーに集中できる。
結果、三対三などのチームを組んで行う練習で雪之丞は足を引っ張ることが多くなっていた。それは負けず嫌いな雪之丞にとって非常に悔しく、屈辱的なことであった。
ただ、幸いにもバスケ部には主将の多田をはじめ優しい人間が多く、雪之丞にあからさまな暴言や嫌味を口にする者はいなかった。
――ただ一人を除いては。
「シュート以前の問題じゃねーか。もう辞めちまえば?」
「あーもう! うっさいっすよ廉先輩!」
廉だけは相変わらず執拗に雪之丞を責め立て、追い出そうとするのだった。
◇
全体練習後に一人、コーンを並べてドリブルの個人練習に励んでいた雪之丞は頭を抱えていた。
ドリブルをする際、コートからの跳ね返りを考えてしっかりとボールを叩きつけているつもりなのに、ちっともしっくり来ないのだ。皆はもっと上手くやっている気がする。何かがおかしいのだろうか? わからないままについたドリブルは失敗し、ボールはコーンにぶつかって明後日の方向へ転がっていった。
朝から晩まで練習に明け暮れているのに、成果はなかなか目に見える形で現れない。焦る気持ちと上手くできない苛立ちで、日に日にストレスを溜め込んでいた雪之丞の怒りがついに爆発した。
「だー! くそっ! なんで上手くいかねえんだ!」
誰もいない体育館の中で叫び、頭を掻きむしりながら転がっていったボールを追いかけていくと、ボールは誰かの足にぶつかって止まった。
雪之丞が顔を上げると、紗綾が立っていた。
課題はたくさんあるが、一刻も早く人並みにできるようにならないと話にならない技術は、大雑把に纏めると二つある。
まず一つ目はパスだ。左手のない雪之丞にとって、パスは出すことよりも受けることの方が困難だった。至近距離からの渡されるようなパスならともかく、スピードに乗った強いパスは弾いてしまうことが多かった。
さらに、試合ではゴールに向かって走りながらボールの受け渡しをしなければならない。右手しか使えない雪之丞は、右からくるパスを取るのがどうしても苦手だった。
二つ目はボールの保持だ。勿論、雪之丞にドリブルの技術が足りていないことも大きな原因に挙げられるのだが、ボールを持って一度立ち止まってしまった場合、普通ならば両手と体で敵からボールを遠ざけるようにブロックしつつ、パスやシュートをするタイミングを待つ。しかし雪之丞はそのブロックができないため、敵に囲まれると成す術がなくなってしまうのだ。
パスが上手く取れず、ボールを持ってもすぐに取られてしまう雪之丞に、わざわざパスを出そうとする味方はいない。敵もそれをわかっているから雪之丞へのマークを甘くし、他のメンバーへのカバーに集中できる。
結果、三対三などのチームを組んで行う練習で雪之丞は足を引っ張ることが多くなっていた。それは負けず嫌いな雪之丞にとって非常に悔しく、屈辱的なことであった。
ただ、幸いにもバスケ部には主将の多田をはじめ優しい人間が多く、雪之丞にあからさまな暴言や嫌味を口にする者はいなかった。
――ただ一人を除いては。
「シュート以前の問題じゃねーか。もう辞めちまえば?」
「あーもう! うっさいっすよ廉先輩!」
廉だけは相変わらず執拗に雪之丞を責め立て、追い出そうとするのだった。
◇
全体練習後に一人、コーンを並べてドリブルの個人練習に励んでいた雪之丞は頭を抱えていた。
ドリブルをする際、コートからの跳ね返りを考えてしっかりとボールを叩きつけているつもりなのに、ちっともしっくり来ないのだ。皆はもっと上手くやっている気がする。何かがおかしいのだろうか? わからないままについたドリブルは失敗し、ボールはコーンにぶつかって明後日の方向へ転がっていった。
朝から晩まで練習に明け暮れているのに、成果はなかなか目に見える形で現れない。焦る気持ちと上手くできない苛立ちで、日に日にストレスを溜め込んでいた雪之丞の怒りがついに爆発した。
「だー! くそっ! なんで上手くいかねえんだ!」
誰もいない体育館の中で叫び、頭を掻きむしりながら転がっていったボールを追いかけていくと、ボールは誰かの足にぶつかって止まった。
雪之丞が顔を上げると、紗綾が立っていた。
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