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エピローグ
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洛央高校との試合を終えた沢高男子バスケ部は、これから始まる女子バスケ部の応援のために観客席のホーム側を陣取っていた。
「女子には俺たちの分までインハイ行って欲しいから、気持ちを切り替えてしっかり応援しよう」
多田の声がけに、部員たちは「ウス!」と運動部らしい短く大きな返事をした。
七十三対七十四。洛央との大接戦は、惜しくも一点差で敗れた。
ラストプレー、雪之丞が渾身の力を込めて叩きつけたダンクは、タイムオーバーだと判断されノーカウントとされたのだった。
試合終了直後は涙を流す者や無言で体を震わす者、各人各様に悲しんでいたものの、今は結果を受け止めて気持ちを整えながら、概ねいつも通りの沢高バスケ部に戻りつつある。
――と、思いきや。
「あーあ! 最後、誰かさんが決めていればなー!」
「もー勘弁してくださいよー! しょーがないっしょ!?」
これで何度目になるだろうか。からかうような岡村の言葉に雪之丞は声を荒らげ、部員たちはまた声を出して笑った。
雪之丞の反応が敗戦後の暗くなりがちな空気を和ませることもあって、主にスタメンを中心に雪之丞を弄りまくっているのだった。
「冗談だって。でもこれからはもっと練習して、次は勝とうぜ」
目を真っ赤にした多田に肩を叩かれた雪之丞は、身の引き締まる思いで背筋を伸ばした。
多田をはじめ、三年生はこの試合で引退となる。先輩たちが達成できなかったインターハイ出場という悲願を来年こそ果たすために、これからはより厳しい練習をしていかなければならない。
「ウス! 先輩たちの仇は取るっす! 任せてください!」
そう言って雪之丞が胸を叩くと、多田は不思議そうな顔をした。
「何言ってんだ? 三年生は全員、ウインターカップまで残るぞ?」
「……はあ!? マジっすか!?」
青天の霹靂である。放心して口を開けっ放しの雪之丞を見て、戸部が頬を掻きながら笑った。
「インハイで引退って言っておいた方が一試合一試合に集中して取り組めると思ってたんだけど、正確に言えば俺たちはずっとインハイ予選で引退するか、ウインターカップまで残るか悩んでたんだよね。……でも、今日の試合が終わったときにこのままじゃ終われないって、三年全員意見が一致したんだよ」
「……いやいやいや、先輩たち! 受験とか就活とかいいんすか!? 特に岡村先輩!」
「おめえに心配されたくねえなあ! まだまだしごくつもりだから覚悟しろよ鳴海ぃ!」
岡村は捻挫しているのにもかかわらず、雪之丞にパワフルなヘッドロックをかけた。
「汗くさっ! 離してくださいよ!」
「堪えてなさそうなのがムカつくぜ! ……ちっ、来客だ。後で覚えてろよ」
急に解放され不思議に思った雪之丞が顔を上げると、そこには穏やかな笑みを浮かべた大吾が立っていた。
「女子には俺たちの分までインハイ行って欲しいから、気持ちを切り替えてしっかり応援しよう」
多田の声がけに、部員たちは「ウス!」と運動部らしい短く大きな返事をした。
七十三対七十四。洛央との大接戦は、惜しくも一点差で敗れた。
ラストプレー、雪之丞が渾身の力を込めて叩きつけたダンクは、タイムオーバーだと判断されノーカウントとされたのだった。
試合終了直後は涙を流す者や無言で体を震わす者、各人各様に悲しんでいたものの、今は結果を受け止めて気持ちを整えながら、概ねいつも通りの沢高バスケ部に戻りつつある。
――と、思いきや。
「あーあ! 最後、誰かさんが決めていればなー!」
「もー勘弁してくださいよー! しょーがないっしょ!?」
これで何度目になるだろうか。からかうような岡村の言葉に雪之丞は声を荒らげ、部員たちはまた声を出して笑った。
雪之丞の反応が敗戦後の暗くなりがちな空気を和ませることもあって、主にスタメンを中心に雪之丞を弄りまくっているのだった。
「冗談だって。でもこれからはもっと練習して、次は勝とうぜ」
目を真っ赤にした多田に肩を叩かれた雪之丞は、身の引き締まる思いで背筋を伸ばした。
多田をはじめ、三年生はこの試合で引退となる。先輩たちが達成できなかったインターハイ出場という悲願を来年こそ果たすために、これからはより厳しい練習をしていかなければならない。
「ウス! 先輩たちの仇は取るっす! 任せてください!」
そう言って雪之丞が胸を叩くと、多田は不思議そうな顔をした。
「何言ってんだ? 三年生は全員、ウインターカップまで残るぞ?」
「……はあ!? マジっすか!?」
青天の霹靂である。放心して口を開けっ放しの雪之丞を見て、戸部が頬を掻きながら笑った。
「インハイで引退って言っておいた方が一試合一試合に集中して取り組めると思ってたんだけど、正確に言えば俺たちはずっとインハイ予選で引退するか、ウインターカップまで残るか悩んでたんだよね。……でも、今日の試合が終わったときにこのままじゃ終われないって、三年全員意見が一致したんだよ」
「……いやいやいや、先輩たち! 受験とか就活とかいいんすか!? 特に岡村先輩!」
「おめえに心配されたくねえなあ! まだまだしごくつもりだから覚悟しろよ鳴海ぃ!」
岡村は捻挫しているのにもかかわらず、雪之丞にパワフルなヘッドロックをかけた。
「汗くさっ! 離してくださいよ!」
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